目次
1.医療法
(1)条文の確認
医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
第十八条
病院又は診療所にあつては、その開設者は、厚生労働省令で定める基準に従い都道府県(診療所にあつては、その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例の定めるところにより、専属の薬剤師を置かなければならない。ただし、病院又は診療所所在地の都道府県知事の許可を受けた場合は、この限りでない。
(2)趣旨
一定の「病院」又は「診療所」について、専属の薬剤師を設置する義務を課すもの。
設置義務を課す基準は、都道府県等の条例(ただし、その内容は厚生労働省令で定める基準に従う。)による。
どうして、直接「厚生労働省令で定める」としなかったのだろうか?
2.医療法施行規則
(1)条文の確認
医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)
第六条の六
法第十八条の厚生労働省令で定める基準は、病院又は医師が常時三人以上勤務する診療所に専属の薬剤師を置くこととする。
(2)内容の整理
設置義務を課す基準は、つぎのいずれかに該当する場合である。
- 病院
- 医師が常時3人以上勤務する診療所
一定量の調剤・医薬品の供給が行われる施設にあっては、その専門家たる薬剤師を置くべしということだと思われる。
診療所については、つぎの基準が設けられている。
- 医師
- 常時3人以上
(3)「病院」とは?「診療所」とは?
医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
第一条の五
この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
2 この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)
第一条の五
患者の診療を担当する医師又は歯科医師は、法第六条の四第一項の規定により、入院した日から起算して七日以内に同項に規定する書面(以下「入院診療計画書」という。)を作成し、当該患者又はその家族に対し当該書面を交付して適切な説明を行わなければならない。
すなわち、病院とは、つぎのような場所を指す。
- 医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所
- かつ、20人以上の患者を入院させるための施設を有するもの
診療所とは、つぎのような場所を指す。
- 医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所
- かつ、つぎのいずれか。
- 患者を入院させるための施設を有しないもの
- 19人以下の患者を入院させるための施設を有するもの
また、医療法においては、「医師又は歯科医師」と記載されており、「医師(歯科医師を含む)」とはされていないことに留意。
医療法施行規則においても同様(参照:上記で引用した第1条の5)。
3.条例を確認する
(1)静岡県の条例
静岡県例規集で、なんとか発見することができた!
静岡県例規集
病院等の人員及び施設の基準等に関する条例(平成25年3月28日 条例第40号)
(専属の薬剤師を置かなければならない開設者の基準)
第5条
法第18条の専属の薬剤師を置かなければならない開設者は、規則で定める。
病院等の人員及び施設の基準等に関する規則(平成25年3月28日 規則第26号)
(専属の薬剤師を置かなければならない開設者の基準)
第4条
条例第5条の開設者は、病院又は医師が常時3人以上勤務する診療所の開設者とする。
というわけで、上記医療法施行規則第6条の6と同じ。
(2)他の自治体の条例
参考までに、他の自治体の規定を確認してみる。
ちょっとずつ違うのが面白い。
平成31年3月13日栃木県条例第1号
病院及び診療所の人員及び施設に関する基準等を定める条例
(専属薬剤師の設置)
第4条
法第18条に規定する病院又は診療所における専属の薬剤師の設置の基準は、省令第6条の6に定めるところによる。
新宿区診療所における専属の薬剤師の配置の基準に関する条例
(平成24年6月19日 条例第53号)
(定義)
第2条
この条例で使用する用語の意義は、法で使用する用語の例による。
(診療所における専属の薬剤師の配置の基準)
第3条
法第18条本文の規定により専属の薬剤師を置かなければならない診療所は、医師が常時3人以上勤務する診療所とする。
4.まとめ
(1)歯科医師も該当?
診療所にあっては「歯科医師」が常時3人以上いたとしても、専属薬剤師の設置義務は課されないと考える。
上記で確認した医療法や医療法施行規則の文言をみれば「歯科医師」は対象外になっている。
また、条文の趣旨からも、歯科には妥当しないように思う。
そして下記の川崎市のHPのように「医師(歯科医師を除く。)が常時3人以上勤務する診療所」と明記する自治体もある。
(2)専属薬剤師の設置免除許可申請について
法18条但書では、病院又は診療所所在地の都道府県知事の許可を受けることで、設置義務の免除を受けることができるとされている。
医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)
第七条
病院又は診療所の開設者が、法第十八条ただし書の規定による許可を受けようとするときは、左に掲げる事項を記載した申請書を、病院又は診療所所在地の都道府県知事に提出しなければならない。
一 当該病院又は診療所の診療科名
二 病院であるときは、病床数
三 専属の薬剤師を置かない理由
許可申請における「専属の薬剤師を置かない理由」については、下記の横浜市のHPが参考となる。
たとえば、つぎのような理由が例示されている。
- 単科の診療所で調剤内容が単純な場合
- 調剤数が少ない(院外処方)場合
判断基準については、厚労省から通達がでている。
病院又は医師が常時3人以上勤務する診療所の専属の薬剤師の設置義務について
(平成25年9月25日)(医政総発0925第9号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局総務課長通知)
(3)静岡県「専属薬剤師設置免除許可申請」の様式
記載すべき内容のイメージとしては、愛知県の様式がわかりやすいように感じた。
「前年度の月別入院患者数、外来患者に係る取扱処方箋数及び調剤数」を具体的に記載させる。