目次
1.所有権登記名義人に氏名の錯誤と住所の移転が!
たとえば、所有権登記名義人の表示が
住所 沼津市若葉町○○
氏名 築地徹弥
となっていたとする。
ところが、住所については、
(1)三島市一番町○○に現在は移転しており【つまり変更】
氏名については、
(2)築池徹哉が本来の表記であった【つまり錯誤】
というケースを想定してみる。
なお、以下では「1つの不動産について」を前提とする。
2.一括申請の可否
(1)登記研究381号90頁、396号103頁参照
381・90は「氏名及び住所の錯誤」と「住所の変更」について言及。
396・103は「氏名の錯誤」と「住所の変更」について言及。
(2)登録免許税の計算について(昭和42年7月26日民三794号)
昭和42年7月26日民三794号のほうが、先例であるから、上記(1)に掲げた質疑応答よりも実務根拠となるか。
変更の登記と更正の登記は別個の区分に属するので、たとえば、「住所の移転及び氏名の錯誤による登記名義人の表示変更及び更正の登記を同一の申請書で申請する場合の登録免許税は、一不動産につき2,000円(1,000×2)となる。
昭和42年7月26日民三第794号依命通知「登録免許税法の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」より
ただし、住所の錯誤及び住所の移転による登記名義人の表示更正及び変更の登記を同一の申請書で申請する場合の登録免許税は、不動産一個につき1,000円(1,000×1)として取り扱ってさしつかえない。
なお、登録免許税については、住所の変更と氏名の更正は別区分として「×2」になる。
ただし、上書き(住所の更正⇒住所の変更)の場合には「×1」になる。
(3)条文上の位置づけは?
さきに先例から確認してしまったが、法令上もOKではないか?
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)
(一の申請情報によって申請することができる場合)
第三十五条
令第四条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
(・・・)
八 同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記であるとき。
(・・・)
この点については、おそろしい記述を見つけてしまった。。
以下の文献を参照。
【不動産登記実務研究会 (著), 藤谷 定勝 (監修), 小池 信行(監修)『Q&A 権利に関する登記の実務XⅢ』日本加除出版 (2014/11/1)P.41】
要するに、規則35条8号により、氏名住所の変更更正登記については「登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一」が要件とされていないように読めるが、登記実務上は平成16年の不動産登記法改正前の取扱いが踏襲されており、「登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一」である場合に限り一括申請が認められているとのこと。
とはいえ、これまで確認したように「住所変更」と「氏名錯誤」の登記の一括申請は認められている。
(4)2以上の不動産の場合には・・・
冒頭の1のケースにおいて、つぎのような場合にはどうか。
【A不動産について】
住所 沼津市若葉町○○ (←変更を要する)
氏名 築地徹弥
【B不動産について】
住所 三島市一番町○○
氏名 築池徹哉 (←更正を要する)
2以上の不動産について申請する場合については、登記研究262号75頁を参照。
規則の書きっぷりからはOKになりそうだが、そんなことはない。