共同根抵当権の追加設定と「取扱店」の相違

1.共同根抵当権の追加設定

(1)条文を確認

参照条文

民法(明治二十九年法律第八十九号)

(共同根抵当)
第三百九十八条の十六 
第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

(共同抵当における代価の配当)
第三百九十二条 
債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按あん分する。
2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

(共同抵当における代位の付記登記)
第三百九十三条 
前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

(2)共同根抵当権の追加設定にあたって

というわけで民法398条の16より、共同根抵当権の設定にあたっては、次の要件を満たす必要がある。

  1. 設定と同時に
  2. 同一の債権の担保として
  3. 数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記

共同根抵当権においては、登記に際して、登記の目的が「共同根抵当権設定」となる。
追加の時には「共同根抵当権設定(追加)」。

2.「同一の債権の担保として」の意義

(1)「同一の債権の担保として」とは

参照条文

(共同根抵当の変更等)
第三百九十八条の十七 
前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。
2 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。

(2)同一性の判定基準

398条の17から、「同一性」の判定にあたっては、次の要素が考慮されることがわかる。

  • 債権の範囲
  • 債務者
  • 極度額

追加設定にあたり、これらの要素に相違があれば、前提登記(変更登記)が必要となる。

3.取扱店の取扱い

(1)同一性の判定基準には含まれない

以上のことから「取扱店」に違いがあることは、同一性の判定においては考慮されないこととなる。
(参照:登記研究377号141頁、382号81頁)

(2)表示変更登記と登記原因証明情報

もし変更をしたい場合には、登記名義人の表示変更に準じて、根抵当権登記名義人から申請をして変更します。

変更登記の登記原因証明情報については、抵当権に関して登記研究692号207頁(カウンター相談)に解説が掲載されています。

なお、取扱店の表示変更登記においては登記原因及びその日付は記載されません(昭和36年11月30日民事甲第2983号通達)。