附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の変更の登記

1.「主たる建物」と「附属建物」

(1)法令

あらためて確認してみると、「主たる建物」という言葉は、不動産登記法・不動産登記規則・不動産登記令には登場してこない!
(「主である建物」という表記であった。)

不動産登記法不動産登記規則不動産登記令
「主である建物」××
「附属建物」
参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(申請情報)
第三十四条 
登記の申請においては、次に掲げる事項を申請情報の内容とするものとする。
(・・・)
四 附属建物があるときは、主である建物及び附属建物の別並びに第百十二条第二項の符号
(・・・)

参照条文

不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

(定義)
第二条 
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(・・・)
二十三 附属建物 表題登記がある建物に附属する建物であって、当該表題登記がある建物と一体のものとして一個の建物として登記されるものをいう。
(・・・)

(2)整理

定義についても整理をしてみようと思ったが、非常に奥深く、能力不足で断念した。
かわりに山野目先生の教科書の定義を引用しておく。

山野目 章夫 (著)『不動産登記法〔第3版〕』商事法務; 第3版 (2024/2/2) P.199~

民法実体法上は複数の建物と見ることができるものについて、一個の登記記録において公示がなされ、登記手続上は、それらを併せて一個の建物として扱われる(・・・)。
ある建物に附属して一体の建物として公示される建物(・・・)を附属建物と、また、その附属する建物を主たる建物とよぶ。

すなわち、実際のところは別の建物と考えられるけれども、一定の考えのもと、「登記(公示)上は、1つの建物として取扱う」ということか。
この場合の「一定の考え」とは、つぎのとおり準則に示されている。

不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日民二第456号通達)

(建物の個数の基準)
第78条
効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は、所有者の意思に反しない限り、1個の建物として取り扱うものとする。
2 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には、その各部分は、各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする。ただし、所有者が同一であるときは、その所有者の意思に反しない限り、一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする。
3 数個の専有部分に通ずる廊下(例えば、アパートの各室に通ずる廊下)又は階段室、エレベーター室、屋上等建物の構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、各別に1個の建物として取り扱うことができない。

「効用上一体」については、山野目先生の教科書のP.206を参照。
要するに「主観的に判断される場合(ただし客観的な制限あり)」と「客観的に判断される場合」があるらしい。むむむ。

なお、そもそも「建物」とは何ぞという点についても、規則を引用するにとどめる。
これも山野目先生の教科書の記述(P.200)を読むと非常に面白いし、土地家屋調査士の先生方のお仕事の素晴らしさの一端を垣間見ることができる。

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(建物)
第百十一条 
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。

2.附属建物がある主たる建物の滅失

(1)附属建物は残った状態で「主たる建物」が滅失したとき

不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日民二第456号通達)

(附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の変更の登記の記録方法)
第102条
附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合には、表題部の主たる建物の表示欄の原因及びその日付欄に滅失の登記原因及びその日付を記録し、当該表示欄に主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録し、当該原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録するものとする。この場合には、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録して、当該附属建物についての従前の登記事項を抹消するものとする。

つぎのとおり記録をしていく。

  1. 表題部の主たる建物の表示欄の原因及びその日付欄に滅失の登記原因及びその日付を記録
  2. 主たる建物の表示欄に主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録。
  3. 当該原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録。
  4. 当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録。
  5. 当該附属建物についての従前の登記事項を抹消

「主たる建物」に関する変更を記録してから、「附属建物」に関する変更を記録し、「附属建物」に関する登記事項を抹消するという順番。

(2)登記記録

平成28年6月8日民二第386号民事局長通達

記録例112

【登記記録を再現しようと思ったが断念・・。今回は断念が多い。】

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