目次
1.数次相続が生じている場合における相続登記
(平成29年3月30日民二237通知)
(1)事案
- Aを所有権登記名義人とする甲不動産がある。
- Aが死亡し、その相続人は、B/C/Dの3名であった。
- B/C/Dは、遺産分割未了のまま死亡し、相続人はそれぞれ、E・J・K・L/M・N/O・P・Q・R・Sであった。
- さらにEについて相続が開始しており、その相続人はF・G・H・Iである。
今般、Eの相続人であるGから、Gが甲不動産を相続したことを内容とする遺産分割協議書を登記原因証明情報として「年月日B相続 年月日E相続 年月日相続」を登記原因とする所有権移転登記申請がなされた。
遺産分割協議書には「A名義の不動産をGが単独で相続した」との記載があるのみである。
(2)照会要旨
当該記載の趣旨は、第一次相続から第三次相続までの相続関係から合理的に推認すれば、つぎのとおりである。
- 順次相続について単独相続とする。
- かつ最終相続について登記申請人を取得者とする
また、上記各相続における相続人又は相続人の地位を承継した者である全員の署名捺印があり、第一次相続から第三次相続までの遺産分割協議をするためにそれぞれ必要な者によって遺産分割が行われたといえる。
したがい、昭和30年通達【次項にてご紹介】に従って、本件登記申請に係る登記をすることができるのではないか?
(3)回答
貴見のとおり!!
2.前提となる昭和30年12月16日民甲第2670号局長通達
(1)事案
- 甲死亡により、乙/丙が共同相続人となった。
- その登記前に、乙/丙が順次死亡した。
- それぞれの相続人は、丁/戊である。
(2)照会要旨
この場合、甲名義の不動産を、直接丁/戊名義にする相続登記は1個の申請ではできないとの認識で良いか?
(3)回答
貴見のとおり。
なお、単独相続(遺産分割、相続放棄を含む。)が中間において数次行われた場合に限り、明治33年3月7日民刑第260号民刑局長回答により、1個の申請で差支えない。
尚書きのほうが重要であることは、いうまでもない。
明治33年の先例は引用しないが、要するに「年月日丁相続 年月日相続」として、中間者を明記すれば良いよというもの。
中間相続が「単独相続」である場合に限り認められるものであるが、この「単独相続」には遺産分割協議等によるものも含まれる点が重要。
3.要するに
本件照会事案においては、第1次相続および第2次相続が単独相続であったかどうかについて遺産分割協議書の記載からは明らかでない。
このような遺産分割協議書が1件申請による数次相続登記の登記原因証明情報たりうるか。
- 申請情報中の登記原因の記載により、相続の経緯及び中間の相続が単独相続であったことがあきらか。
- この点は、添付情報である戸籍及び除籍の謄本等から判明する相続関係からも合理的に推認できる。
- また、各相続毎の遺産分割協議書の当事者となるべき者の署名捺印がある。
以上から、OK!
以前は、各相続人の資格を併記し、各相続資格をもって順次合意が成立していることを、遺産分割協議書上で明記する必要があるとの考え方もあった。
(例:「〇相続人◇相続人 兼 〇相続人△相続人 兼 相続人」みたいなもの)
もちろん、相続関係を正しく把握することは重要だけれど、3次・4次ともなると相続関係によっては、非常に大変なこともあったので、本件通達は非常にありがたいものと思われる。