異順位相続人間での相続分の譲渡(平成30年3月16日付民二第136号民二課長回答)

2019年5月23日

1.異順位相続人間での相続分譲渡

(1)先例の事案

甲不動産の所有権登記名義人Aが死亡。

Aの相続人は、B/C/Dの3名。

遺産分割協議未了の状態でDが死亡し、その相続人はE・Fの2名。

この状況で、B及びCは、自己の相続分をそれぞれE及びFに対して譲渡した。

ここでE及びFは遺産分割協議を行い、Eが単独で甲不動産を取得することとなった。

Eは、以上の事実を証する相続分譲渡証明書及び遺産分割協議書を登記原因証明情報として、「年月日D相続 年月日相続」を登記原因とする所有権移転登記申請をした。

(2)照会内容

遺産の分割には遡及効があるから、結果として中間相続は単独相続となり、上記申請通りの内容で登記できますよね?

(3)回答

貴見のとおり!!

2.要するに

(1)相続分の譲渡について登記をしなくても良いの?

相続分の譲渡と登記に関しては2つの先例が存在していた。

  • 昭和59年10月15日民三第5196号回答
    同一順位の相続人間での相続分譲渡の結果に基づき、譲渡後の相続分に基づく登記を、ストレートに申請。
    ⇒可
  • 平成4年3月18日民三第1404号回答
    数次相続による相続人間での相続分譲渡の結果に基づき、譲渡後の相続分に基づく登記を、ストレートに申請。
    ⇒不可

いずれも遺産分割協議が未了の状態での登記の方法について。

一方、本件事案では遺産分割協議がなされており、かつ分割協議に基づきその効果は相続開始のときに遡って生じる。
遺産分割協議までの間に行われた相続分の譲渡を公示することは、実体上は存在しないはずの物権変動を公示することとなり、おかしいとの考え方。

(2)1次相続と2次相続を別個に登記しなくて良いの?

昭和30年12月16日民甲第2670号局長通達によりOK。

遺産分割の結果、中間相続は「単独相続」になっているため。

(3)CとEが取得者になるケースでは?

ここで相続分を譲渡が「B⇒E」のみであり、C/E/Fでの分割協議が行われ、C/Eが取得者になった場合を考える。

中間相続が「単独相続」にはならないので、「A⇒C・亡D」「亡D⇒E」とする申請が必要になると考える。
(相続分の譲渡については「実体上は存在しないはずの~」というのが、この場合にも妥当すると考えるが・・)

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