株式会社解散において不動産を残余財産として分配

※以下、税務上の論点は、検討の対象外です。

1.残余財産の分配に関する規定

(1)条文

参照条文

(残余財産の分配に関する事項の決定)
第五百四条 
清算株式会社は、残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定(清算人会設置会社にあっては、清算人会の決議)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 残余財産の種類
二 株主に対する残余財産の割当てに関する事項
2 (・・・)
3 第一項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該清算株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて残余財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。

(2)整理

生産株式会社における残余財産の分配につき、清算人はその決定により、株主に対して割当てを行う財産の種類等を決定する。

その決定にあたっては、株主の有する株式数に応じて残余財産を割り当てる内容でなければならない。

【疑問1】1億円の不動産と1億円の現金があり、2名の株主(株式の種類・数ともに均等)がいたとして、1名については不動産、もう1名については現金という分配方法は可能なのだろうか?

【疑問2】現金100万円を3名の株主(株式の種類・数ともに均等)に分配する場合には、504条3項との関係を、どのように整理すれば良いのだろうか?

なお、つぎの書籍の記載を参考。

(参考:田中 亘 (著)『会社法 第4版』東京大学出版会 (2023/3/31)P.765)

2.金銭分配請求権

(1)条文

参照条文

(残余財産が金銭以外の財産である場合)
第五百五条 
株主は、残余財産が金銭以外の財産であるときは、金銭分配請求権(・・・)を有する。この場合において、清算株式会社は、清算人の決定(・・・)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 金銭分配請求権を行使することができる期間
二 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して残余財産の割当てをしないこととするときは、その旨及びその数
2 前項に規定する場合には、清算株式会社は、同項第一号の期間の末日の二十日前までに、株主に対し、同号に掲げる事項を通知しなければならない。
(・・・)

(2)整理

不動産など、金銭以外の財産を分配する際には、株主は「残余財産に代えて金銭を交付すること」を清算株式会社に対して請求することができる。

そのため、金銭以外の財産を分配するにあたり、清算人は「金銭分配請求権の行使期間」等を定めて、株主に通知しなければいけない。

3.残余財産の価額相当額

(1)条文

参照条文

(残余財産が金銭以外の財産である場合)
第五百五条 
(・・・)
3 清算株式会社は、金銭分配請求権を行使した株主に対し、当該株主が割当てを受けた残余財産に代えて、当該残余財産の価額に相当する金銭を支払わなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額をもって当該残余財産の価額とする。
一 当該残余財産が市場価格のある財産である場合 当該残余財産の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額
二 前号に掲げる場合以外の場合 清算株式会社の申立てにより裁判所が定める額

(2)整理

株主から、金銭分配請求権を行使する旨の通知を受けた場合には「当該残余財産の価額に相当する金銭」を支払わなければならない。

【疑問1】残余財産の価額相当額はどのように決定されるのか?

【疑問2】残余財産が、不動産のみしかなかった場合、どのように分配資金を調達するのか?

4.不動産登記申請との関係

(1)関係する質疑応答

  • 登記研究756号139頁質疑応答(剰余金の配当として不動産を分配)
  • 登記研究434号144頁質疑応答(農業協同組合の解散にあたり不動産を分配)

いずれも所有権移転登記申請に関するもの。

(2)登録免許税

1000分の20になるものと思われる。
(登録免許税法別表第1・1(二)ハ)

参照条文

登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)

別表第一 課税範囲、課税標準及び税率の表(第二条、第五条、第九条、第十条、第十三条、第十五条―第十七条、第十七条の三―第十九条、第二十三条、第二十四条、第三十四条―第三十四条の五関係)

登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定又は技能証明の事項課税標準税率
一 不動産の登記
(二) 所有権の移転の登記
ハ その他の原因による移転の登記
不動産の価額1000分の20
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