任期満了前に、なんらかの事情で役員が退任せざるを得ない場合に備えて、あらかじめ役員を予選するケースについて検討。
なお、任期満了前に退任した役員にかわって選任したケースではないので注意。
あくまで、万が一に備えて「あらかじめ」選任(予選)しておくケース。
1.条文
会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)第三百二十九条
(・・・)
3 第一項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(・・・)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
会社法施行規則(平成十八年二月七日法務省令第十二号)
第九十六条
法第三百二十九条第三項 の規定による補欠の会社役員(・・・)の選任については、この条の定めるところによる。
2 法第三百二十九条第三項 に規定する決議により補欠の会社役員を選任する場合には、次に掲げる事項も併せて決定しなければならない。
一 当該候補者が補欠の会社役員である旨
(・・・)
四 当該候補者を一人又は二人以上の特定の会社役員の補欠の会社役員として選任するときは、その旨及び当該特定の会社役員の氏名(会計参与である場合にあっては、氏名又は名称)
五 同一の会社役員(二以上の会社役員の補欠として選任した場合にあっては、当該二以上の会社役員)につき二人以上の補欠の会社役員を選任するときは、当該補欠の会社役員相互間の優先順位
六 補欠の会社役員について、就任前にその選任の取消しを行う場合があるときは、その旨及び取消しを行うための手続
3 補欠の会社役員の選任に係る決議が効力を有する期間は、定款に別段の定めがある場合を除き、当該決議後最初に開催する定時株主総会の開始の時までとする。ただし、株主総会(・・・)の決議によってその期間を短縮することを妨げない。
2.条文の整理
条文で細かく規定されているが、一応整理。
- 定款の定めは不要(よって添付書面にもならない)
- 任期計算の基準日は、予選された株主総会の選任決議の日
- 選時の総会議事録を就任承諾書として援用可能
- 予選の効力は、選任後最初に開催する定時株主総会の開始時まで。ただし、定款で別段の定めが可能。また短縮であれば決議によっても可能。
3.登記申請の場面を考えると・・
(1)選任書面
予選時の株主総会議事録が該当。なお議事録作成の際には、規則96条2項各号の要件を満たした決議であることが確認できるよう留意すること。
(2)員数を欠く場合であることを証する書面(?)
参照した書籍上では確認できませんでした。退任した登記と一緒になされはしますが、「欠ける状態」というのはわからないような。善解されるのかな。
(3)就任承諾書
予選時に就任承諾していれば、議事録の援用が可能。ただし、本人確認書面は必要となる点に留意(これもあらかじめ用意しておけばよいのだろうか?)。