土地改良区について(登記との関係)

2016年5月29日

1.そもそも土地改良区とは?

(1)条文から確認

土地改良法(昭和二十四年六月六日法律第百九十五号)に定義がある。

(以下、断りのない限り、参照するのは土地改良法の条文。)

そのまえに、土地改良法の目的を確認。

参照条文

(目的及び原則)
第一条
この法律は、農用地の改良、開発、保全及び集団化に関する事業を適正かつ円滑に実施するために必要な事項を定めて、農業生産の基盤の整備及び開発を図り、もつて農業の生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする。

目的を貫徹するため、土地改良区については、ある種の強制加入(およびそれにともなう加入者への種々の義務付け)など、非常に特徴的な規定が設けられているが、この点については省略。

農業の集団性をあらわしているのか。。

また改良事業に伴う登記については、不動産登記法上の特則が定められているが、この点についても検討外となっている。

土地改良区の定義づけについて確認。

参照条文

(設立準備)
第五条  
第三条に規定する資格を有する十五人以上の者は、その資格に係る土地を含む一定の地域を定め、その地域に係る土地改良事業(・・・)の施行を目的として、都道府県知事の認可を受け、その地域について土地改良区を設立することができる。(・・・)。

(土地改良事業に参加する資格)
第三条 
土地改良事業に参加する資格を有する者は、その事業の施行に係る地域内にある土地についての次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 農用地であつて所有権に基づき耕作又は養畜の業務の目的に供されるものについては、その所有者
二 農用地であつて所有権以外の権原に基づき耕作又は養畜の業務の目的に供されるものについては、政令で定めるところにより、農業委員会(・・・)に対しその所有者から当該土地改良事業に参加すべき旨の申出があり、かつ、その申出が相当であつて農業委員会がこれを承認した場合にあつては、その所有者、その他の場合にあつては、その農用地につき当該権原に基づき耕作又は養畜の業務を営む者
三 農用地以外の土地であつて所有権に基づき使用及び収益の目的に供されるものについては、その所有者
四 農用地以外の土地であつて所有権以外の権原に基づき使用及び収益の目的に供されるものについては、その権原に基づき使用及び収益をする者が、政令で定めるところにより、その所有者の同意を得て農業委員会に対し当該土地改良事業に参加すべき旨を申し出た場合にあつては、その者、その他の場合にあつては、その所有者
(・・・)

「土地改良事業に参加する資格」を有する15人以上の者が、都道府県知事の認可を受けることで、土地改良区を設立することができる。
土地改良事業に参加する資格を有する者は「組合員」となる。

参照条文

(土地改良区の成立)
第十条 
(・・・)
2 土地改良区は、前項の規定による認可【都道府県知事による設立の認可】により、第五条第一項の一定の地域を地区として成立する。
3 都道府県知事は、土地改良区が成立したときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
(・・・)

参照条文

(土地改良区の法人格)
第十三条 
土地改良区は、法人とする。

土地改良区は「法人」である。

(2)法人たる土地改良区

というわけで、土地改良区とは、区域のことではなくて、法人を指す。

法人たる土地改良区は、一定地域に係る土地改良事業の施行を目的とする。

では、法人である土地改良区は、どのようなルートで登記されるのかと思いきや、なんとこの土地改良区は登記されない!(地方公共団体のような取扱いになるということなのだろうか?)

静岡県内の土地改良区については、静岡県のHP上で確認することができた。

参考記事(外部リンク)
農地や農業用水利施設の整備土地改良区の支援

上記静岡県のHPの「土地改良財産の管理及び処分など」の段落に「土地改良区名簿」が掲載されている。

土地改良区が「法人」であるのならば、会社法人等番号、土地改良区が所有権の登記名義人となる場合の住所証明情報、逆に所有権移転登記の登記義務者となる場合の印鑑証明書はどうなるのか?
順番に確認してみた。

2.会社法人等番号

そもそも「会社法人等番号」の定義は次のとおり。

参照条文

商業登記法(昭和三十八年七月九日法律第百二十五号)

第七条  
登記簿には、法務省令で定めるところにより、会社法人等番号(特定の会社、外国会社その他の商人を識別するための番号をいう。第十九条の三において同じ。)を記録する。

したがって登記されない法人には付与されない。

なお、いわゆるマイナンバーの法人版たる法人番号については、国税庁長官への届出により法人番号の指定を受けることができるとされる
(国税庁HP参照https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/03houjinbangoukankei.htm

上記1(2)で紹介した名簿のトップに掲載されている「韮山土地改良区」についても法人番号の指定がなされている。

参考記事(外部リンク)
法人の基本3情報に加え、商号及び所在地等の変更履歴情報、登記記録の閉鎖等に関する情報を確認できます。外字を使用した商号及び所在地を含め、ページの印刷が可能です。

「韮山土地改良区」の法人番号

3.住所証明情報(検討不十分)

根拠規定を確認することはできなかったが、会社法人等番号も付されず、当然ながら登記事項証明書も存在しないから、代替書類として後記印鑑証明書が該当すると考えるか?

参考:平成19年3月29日民二第795号「二 添付情報」「(1)法人の代表者の資格を証する情報(資格証明情報)」

4.印鑑証明書

先例がある。昭和57年8月13日民三5145課長通知。

要旨としては「土地改良区のように登記を要しない法人については(・・・)土地改良区の代表者の印影と代表者の住所、氏名を記載し、これについて認可権者たる都道府県知事が証明したものを添付すれば足りる。」とされる。

上記通知には様式も記載されており、記載事項はつぎのとおり。

  • 土地改良区の事務所
  • 土地改良区の名称
  • 代表者の資格
  • 代表者の氏名
関連記事