独立行政法人と不動産登記について(簡単に)

2018年11月7日

参考として、
よく目にする「独立行政法人都市再生機構」(UR)と
ウィキペディアで見つけた「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」をみてみた。

1.そもそも独立行政法人とは

(1)独立行政法人の意義

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

第二条

この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるもの(以下この条において「公共上の事務等」という。)を効果的かつ効率的に行わせるため、中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。

第九条

独立行政法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

第十七条

独立行政法人は、設立の登記をすることによって成立する。

 「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業」であるが、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」のうち、
「民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されない」事業又は「一の主体に独占して行わせることが必要である」事業。

国がやれば良いのではないかと思ってしまうが「直接に実施する必要」がないこともあるのだろう。

新自由主義的な考え方なのだろうか。
理解していない分野なので、細かく言及するのは、やめておこう。

(2)独立行政法人と商業登記

参照条文

独立行政法人等登記令(昭和三十九年政令第二十八号)

第十八条

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第一条の三から第五条まで、第七条から第十五条まで、第十七条から第二十三条の二まで、第二十四条(第十四号から第十六号までを除く。)、第二十六条、第二十七条、第四十八条から第五十三条まで、第七十一条第一項及び第百三十二条から第百四十八条までの規定は、独立行政法人等の登記について準用する。この場合において、同法第四十八条第二項中「会社法第九百三十条第二項各号」とあるのは、「独立行政法人等登記令第九条第二項各号」と読み替えるものとする。

参照条文

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)

第二十条

登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。

第十二条

第二十条の規定により印鑑を登記所に提出した者(・・・)は、手数料を納付して、その印鑑の証明書の交付を請求することができる。

2.中期目標管理法人とは

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

第二条

2 この法律において「中期目標管理法人」とは、公共上の事務等のうち、その特性に照らし、一定の自主性及び自律性を発揮しつつ、中期的な視点に立って執行することが求められるもの(国立研究開発法人が行うものを除く。)を国が中期的な期間について定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進することを目的とする独立行政法人として、個別法で定めるものをいう。

3 この法律において「国立研究開発法人」とは、公共上の事務等のうち、その特性に照らし、一定の自主性及び自律性を発揮しつつ、中長期的な視点に立って執行することが求められる科学技術に関する試験、研究又は開発(以下「研究開発」という。)に係るものを主要な業務として国が中長期的な期間について定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とする独立行政法人として、個別法で定めるものをいう。

4 この法律において「行政執行法人」とは、公共上の事務等のうち、その特性に照らし、国の行政事務と密接に関連して行われる国の指示その他の国の相当な関与の下に確実に執行することが求められるものを国が事業年度ごとに定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、その公共上の事務等を正確かつ確実に執行することを目的とする独立行政法人として、個別法で定めるものをいう。

中期目標管理法人というのは、

  • 公共上の事務をおこなう。
  • その事務の特性に照らし、一定の自主性及び自律性を発揮する必要がある。
  • 中期的な視点に立って執行することが求められる。

そして国は「国が中期的な期間について定める業務運営に関する目標」を定める。

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

(中期目標)
第二十九条 
主務大臣は、三年以上五年以下の期間において中期目標管理法人が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定め、これを当該中期目標管理法人に指示するとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(・・・)

(中期計画)
第三十条 
中期目標管理法人は、前条第一項の指示を受けたときは、中期目標に基づき、主務省令で定めるところにより、当該中期目標を達成するための計画(以下この節において「中期計画」という。)を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(・・・)

3.最初に掲げた2つの法人について

(1)独立行政法人都市再生機構

参照条文

独立行政法人都市再生機構法(平成十五年法律第百号)

第三条の二

機構は、通則法第二条第二項に規定する中期目標管理法人とする。

都市再生機構の中期目標と中期計画は、つぎのとおり公開されている。

参考記事(外部リンク)
UR都市機構の企業情報です。

たとえば、次のような事項が中期目標になっている。

  • 都市開発の海外展開支援
  • 多様な世代が安心して住み続けられる環境整備
  • 東日本大震災からの復興に係る業務の実施

(2)独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構

参照条文

独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法(平成十六年法律第百号)

第四条の二
機構は、通則法第二条第二項に規定する中期目標管理法人とする。

第三十一条
機構は、別に法律で定めるところにより、平成七十七年九月三十日までに解散する。

日本高速道路保有・債務返済機構の中期目標は、下記にて公開されている。

参考記事(外部リンク)

たとえば、次のような事項が中期目標になっている。

  • 会社による管理の適正な水準の確保を通じた高速道路資産の適切な保有及び貸付け
    (※「会社」というのは中日本高速道路株式会社などの高速道路株式会社をさす。)
  • 会社に対するスマートICの整備及び首都高速道路又は阪神高速道路の新設、改築又は修繕のための無利子貸付け
  • 道路整備特別措置法に基づく道路管理者の権限の代行その他の業務

4.独立行政法人都市再生機構と不動産登記

参照条文

独立行政法人都市再生機構法(平成十五年法律第百号)

第四十二条

不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、機構を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。

参照条文

独立行政法人都市再生機構法施行令(平成十六年政令第百六十号)

第三十四条

次の法令の規定については、機構を国の行政機関とみなして、これらの規定を準用する。

(・・・)

二十二 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第十六条、【第八款 官庁又は公署が関与する登記等】第百十五条から第百十七条まで及び第百十八条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)

三十二 不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)第七条第一項第六号(同令別表の七十三の項に係る部分に限る。)及び第二項、第十六条第四項【印鑑証明書の添付不要】、第十七条第二項【資格証明不要】、第十八条第四項【代理申請における印鑑証明書の添付不要】並びに第十九条第二項【承諾書への印鑑証明書の添付不要】

 不動産登記申請においては、公共団体と同じ取り扱いを受ける。

登記業務で頻繁に接する「独立行政法人住宅金融支援機構」においては、こうした規定はない。

5.独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と不動産登記

参照条文

独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法施行令(平成十七年政令第二百二号)

第二十二条 
次の法令の規定については、機構を国の行政機関とみなして、これらの規定を準用する。
(・・・)
九 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第十六条及び第百十五条から第百十七条まで
十 不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)第七条第一項第六号(同令別表の七十三の項に係る部分に限る。)及び第二項、第十六条第四項、第十七条第二項、第十八条第四項並びに第十九条第二項

 施行令に規定されている箇所は、都市再生機構における規定と同じ。

都市再生機構は、設置法において、「機構を国の行政機関とみなして、法令を準用」している点が違い(どういう意味があるのだろうか?)。 

参照条文

独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に関する省令(平成十七年国土交通省令第六十四号)

第二十八条

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)第四十三条第一項第四号(同規則第五十一条第八項、第六十五条第九項、第六十八条第十項及び第七十条第七項において準用する場合を含む。)、第六十三条の二第一項及び第三項、第六十四条第一項第一号及び第四号並びに第百八十二条第二項の規定については、機構を国の行政機関とみなして、これらの規定を準用する。

附則第二条

不動産登記規則附則第十五条第四項第一号及び第三号の規定については、機構を国の行政機関とみなして、これらの規定を準用する。

このあたりの準用の読解は、挫折。 

6.まとめ

(1)「国の行政機関」としての規程を準用

というわけで、多くの不動産を扱うであろう2つの機構は、不動産登記法(実は他の法律においても)上は、「国の行政機関」とみなされ、「国の行政機関」に対する各規定が準用されている。

そのため、不動産登記法においては、たとえば機構が権利者になる場合の識別の通知不要(原則)、機構が義務者になる場合の識別や印鑑証明書等の添付不要という取扱いになる。

(2)共同申請の形式をとる際には?

なお、官公署が登記義務者になる場合、ときどき共同申請をとることがある。この場合にも、識別不要や印鑑証明書不要となるが、これらの機構についても同じことがいえるのだろうか?

機構については、印鑑証明書の発行を受けられる可能性があるけど・・・?

【参考:昭和42年4月6日民事三第150号回答】

改正前の不動産登記法にかかる先例ではあるが、この先例解説が面白い。

「真正面からいけば、当然適用がないというのはちょっと行き過ぎな感じがするけれども、実質を考えれば・・・」。