目次
1.登記識別情報の提供
(1)登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(登記識別情報の提供)
第二十二条
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合には、登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない。
ただし、登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、提供しなくても良い。
では、提供しなくても良いとされる「正当な理由」とは何か?
「正当」といわれると、「ちゃんとした理由じゃなきゃ駄目」と考えられる。
「紛失した」なんていうのは、ちゃんとした理由にならない気がするが、どうなのだろうか?
(2)不動産登記令も一応確認
不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)
(登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記等)
第八条
法第二十二条の政令で定める登記は、次のとおりとする。ただし、確定判決による登記を除く。
一 所有権の登記がある土地の合筆の登記
二 所有権の登記がある建物の合体による登記等
三 所有権の登記がある建物の合併の登記
四 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
五 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
六 質権又は抵当権の順位の変更の登記
七 民法第三百九十八条の十四【根抵当権の共有】第一項ただし書(同法第三百六十一条において準用する場合を含む。)の定めの登記
八 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
九 仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消
2 前項の登記のうち次の各号に掲げるものの申請については、当該各号に定める登記識別情報を提供すれば足りる。
一 所有権の登記がある土地の合筆の登記 当該合筆に係る土地のうちいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報
二 登記名義人が同一である所有権の登記がある建物の合体による登記等 当該合体に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報
三 所有権の登記がある建物の合併の登記 当該合併に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報
2.「正当な理由」とは
(1)不動産登記事務取扱手続準則に書いてあった!
平成17年2月25日民二第456号局長通達
「不動産登記事務取扱手続準則の改正について(通達)」
(登記識別情報を提供することができない正当な理由)
第42条
法第22条ただし書に規定する登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合とは、次に掲げる場合とする。
(1) 登記識別情報が通知されなかった場合
(2) 登記識別情報の失効の申出に基づき、登記識別情報が失効した場合
(3) 登記識別情報を失念した場合
(4) 登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずることとなる場合
(5) 登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合
(2)まとめ
失念でもOK。
なお、4号が念頭に置くのは、分筆された土地の一方について所有権移転登記申請をなすときとのこと。
この場合、分筆前の登記識別情報を提供する必要があるところ、当該登記識別情報は他方の土地について有効であり続けるにもかかわらず、一方の登記申請において第三者の目に触れることで保管・管理に問題を生じうるとのことから。
同じく5号が念頭に置くのは、大量の不動産や多数の共有者がいる登記申請において、登記識別情報の提供に相当の時間を要することとなるケースとのこと。
4号については、確かに、気になる人は気になるかなと思う。
5号については、提供しないことで、事前通知になったり、本人確認情報を作成したりするほうが、よほど手間ではないかと思った。