建設業法における主な用語の定義【その1】

2018年11月5日

1.「建設業」「建設業者」とは

(1)建設業とは

参照条文

建設業法(昭和二十四年法律第百号)

(定義)
第二条 
この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
3 この法律において「建設業者」とは、第三条第一項の許可を受けて建設業を営む者をいう。
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
5 この法律において「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう。

「建設業」とは「建設工事の完成を請け負う営業」をいう。(法2条2項)

建設業元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業
建設工事土木建築に関する工事で建設業法別表第一の上欄に掲げるもの
下請契約「建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者」と「他の建設業を営む者」との間で当該建設工事の全部または一部について締結される請負契約のこと。
発注者建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者のこと。
元請負人下請契約における注文者で建設業者(※建設業者の定義については下記(2)を参照。)であるもの。
下請負人下請契約における請負人

そして「建設工事」とは「土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるもの」をいう。
別表第一の上欄に掲げられているのは、つぎの工事。

  1. 土木一式工事
  2. 建築一式工事
  3. 大工工事
  4. 左官工事
  5. とび・土工・コンクリート工事
  6. 石工事
  7. 屋根工事
  8. 電気工事
  9. 管工事
  10. タイル・れんが・ブロツク工事
  11. 鋼構造物工事
  12. 鉄筋工事
  13. 舗装工事
  14. しゆんせつ工事
  15. 板金工事
  16. ガラス工事
  17. 塗装工事
  18. 防水工事
  19. 内装仕上工事
  20. 機械器具設置工事
  21. 熱絶縁工事
  22. 電気通信工事
  23. 造園工事
  24. さく井工事
  25. 建具工事
  26. 水道施設工事
  27. 消防施設工事
  28. 清掃施設工事
  29. 解体工事

全部で29種類。

(2)建設業者とは

このうち「建設業者」とは「第三条第一項の許可を受けて建設業を営む者」を指す。

建設業法3条1項を確認すると、つぎのとおり。

参照条文

(建設業の許可)
第三条 
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
2 前項の許可は、別表第一の上欄に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる建設業に分けて与えるものとする。
(・・・)

  • 建設業を営もうとする者は、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない。
  • ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

というわけで、建設業(土木建築に関する工事で建設業法別表第一の上欄に掲げる工事の完成を請け負う営業)を営もうとする者は、原則として、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない。

また当該許可は、建設工事の種類ごとにわけて与えられる点にも注意(業種別許可制)。
そのため「附帯工事」という概念がうまれる。(建設業法4条参照。)

(3)許可不要となる「軽微な建設工事」について

「建設業を営む者」であるにもかかわらず、許可が不要となるのは「軽微な建設工事のみを請け負う」ことを営業とする者である。

「軽微」の内容については、つぎのとおり、建設業法施行令が定めをおいている。

参照条文

建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)

(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)
第一条の二 
法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
3 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。

(1)工事一件の請負代金の額が500万円に満たない建設工事
(2)工事一件の請負代金の額が1500万円に満たない建築一式工事
(3)建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事

注意すべきは、令1条の2第2項の「契約の分割(正当な理由がなければ合算)」についてと、同条3項の「材料費又は材料費及び運送賃の加算」である。

なお、「軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者」は、建設業法上においては「建設業者」ではない(許可を受けて営業しているわけではないから)。

2.「経営管理責任者」「経営管理体制」とは

※以下、特段の言及のない限り「一般建設業」を前提としている。

(1)「経営管理責任者」という用語の利用について

「経営管理責任者」というのは、法令上定義された言葉ではないが、つぎのような建設業許可の要件を満たす者を指すとされている。

参照条文

(許可の基準)
第七条 
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
(・・・)

この条文、令和2年10月の法改正施行後の条文なのですが、改正前は次のような条文。

参照条文

【!!令和2年改正前!!】
(許可の基準)
第七条 
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一  法人である場合においてはその役員(・・・)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ  許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ  国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
(・・・)

改正前の条文にあっては「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」がいることが要件。

法改正により、許可取得の要件が「(適切な)責任者を置くこと」ではなく、「(適切な)経営業務の管理体制を備えること」と大きく要件が変わっている。
(とはいえ、許可取得の観点からは「従来の要件から若干緩和された」との表現が適当かもしれません。要するに、それほど大きな変化ではないということ。)

また、従前「許可を受けようとする建設業に関し」として、許可を受けようとする業種と経験年数がリンクしていたが、改正により業種による制限は無くなっている。
(この点は、許可取得の観点からみても、非常に大きい改正であったと個人的には思う。)

そんなわけで、まだ一般的な用語が定まっていない(と個人的には思っている)ので、このあとは「経営管理体制」という表現を使って、その具体的な内容を確認していく。

(2)許可要件としての「経営管理体制」とは

具体的な内容は、建設業法施行規則に規定されている。

参照条文

建設業法施行規則(昭和二十四年建設省令第十四号)

(法第七条第一号の基準)
第七条 
法第七条第一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当するものであること。
イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
(1) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3) 建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2) 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。
二 次のいずれにも該当する者であること。
イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ロ 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和二十九年厚生省令第三十七号)第十三条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ハ 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第五条第一項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百四十一条第一項の規定による届書を提出した者であること。

項目で整理すると、つぎのとおり。

  • (1号)つぎの「いずれか」に該当するものであること
    • (イ要件)常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当
      • 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
      • 建設業に関し五年以上準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者
      • 建設業に関し六年以上準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
    • (ロ要件)常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くもの
      • 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
      • 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
  • (2号)つぎの「いずれにも」該当する者であること
    • イ 健康保険法(・・・)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。
    • ロ 厚生年金保険法(・・・)第十三条第一項の規定による届書を提出した者であること。
    • ハ 雇用保険法(・・・)第百四十一条第一項の規定による届書を提出した者であること。

7条1号ロが、いわゆる「体制(チーム)」による管理を認めたところ。
それにしたって複雑な要件であるし、ある程度の規模が求められるようにも思う。
(ここでの2年、5年、6年といった期間の使い分けを、どこまで合理的に説明できるのだろうか?)

くわえて、ここで社会保険等の届出を法令上の要件として組み込んできたのは、流石と言わざるを得ない。
この点は、まさに事業者としての「体制」といえるのだろう。

3.続きについて

その2においては「専任技術者」「令3条の使用人」について、

その3においては「主任技術者」について、条文に沿って確認をしている。

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