建設業法における主な用語の定義【その3】

1.建設業法における主な用語の定義

「その1」では、「建設業」「経営管理責任者」「経営管理体制」について、確認している。

「その2」では、「専任技術者」「令3条の使用人」について、確認している。

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2.「主任技術者」とは

※以下、特段の言及のない限り「一般建設業」を前提としている。

(1)「主任技術者」の条文上の位置づけ

「主任技術者」については、「経営管理責任者」や「専任技術者」と異なり、法令上で定義がなされている。

ただし、「経営管理責任者」・「専任技術者」に関する規定は建設業法「第二章 建設業の許可」に置かれていたのに対して、「主任技術者」に関する規定は同法「第四章 施工技術の確保」に置かれている。

条文については、下記(2)で参照するとして、定義部分のみを抜粋すると次のとおり。

第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの

7条2号イ・ロ・ハは、それぞれ専任技術者に求められている技術的要件を定めたもの。
つまり、主任技術者は、専任技術者と同等以上の知識及び技術又は技能をもっていなければならない。

そうした技術等をもって「建設工事の技術上の管理」「建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督」を行わなければならない。

参照条文

(主任技術者及び監理技術者の職務等)
第二十六条の四 
主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。
2 工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない。

さらには、当該工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者が職務として行う指導に従う義務を課される。

なお職務や配置義務について詳細は「監理技術者制度運用マニュアル」(平成16年3月1日国総建第316号)を参照のこと。

参考記事(外部リンク)
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

関連通達も含めて「監理技術者制度運用マニュアル」が掲載されている。

(2)「主任技術者」の配置義務【その1】

該当する条文が長いので、適宜分割して紹介。
また、特段の言及のない限り「一般建設業」を前提としている点にも、改めて留意。

まずは大原則。

参照条文

(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条 
建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
(・・・)

請け負った建設工事を施工する際には、当該建設工事の「工事現場」に「主任技術者」をおかなければならない。

工事現場に赴く必要があるため、この点が「専任技術者」との兼務について、論点となる。
(参照:平成15年4月21日国総建第18号)

(3)「主任技術者」の配置義務【その2:現場専任】

つづいて「工事現場ごとの専任」の主任技術者等が求められるケースについて。

重要な建設工事にあたっては、主任技術者(又は監理技術者)についても「専任」であることが求められる。

なお、ここでいう「専任」の考え方については、さきほども紹介した「監理技術者制度運用マニュアル」(平成16年3月1日国総建第316号)が詳しい。

参照条文

(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条 
建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 (・・・)
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。(・・・)
(・・・)

対象施設については、建設業法施行令27条に定めがおかれている。

参照条文

建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)

(専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)
第二十七条 
法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が四千万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、八千万円)以上のものとする。
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
二 第十五条【公共性のある施設又は工作物。鉄道、道路、河川に関する工作物など。】第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
(・・・)
ニ 学校
ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場
ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設
ト 病院又は診療所
(・・・)
ヲ 事務所
ワ ホテル又は旅館
カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿
ヨ 公衆浴場
(・・・)
ソ 工場、ドック又は倉庫
ツ 展望塔
2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。

途中「・・・」で省略しているが、対象工事の範囲はとても広い。
中部地方整備局の用意した資料を見てみると「請負金額4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の個人住宅・長屋を除くほとんどの工事」において専任を要すると記載されている。

参考記事(外部リンク)

『建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和5年9月 改訂)』「問5 専任の監理・主任技術者が必要な工事とは」より

(4)「主任技術者」の配置義務【その3:一式工事、附帯工事】

「主任技術者」に関する規定ではないが、建設業法26条からの流れで、一式工事に関連する建設業法26条の2を見ていく。

参照条文

(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条の二 
土木工事業又は建築工事業を営む者は、土木一式工事又は建築一式工事を施工する場合において、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。
2 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。

1項は、土木一式工事又は建築一式工事を施工する場面において、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事(軽微な建設工事を除く。つまり許可を要する建設工事の場合。)を施工する際に、当該建設工事について、つぎのような対応を要求する。

  • 当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する。
  • 当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させる。

2項は、附帯する他の工事(軽微な建設工事を除く。)を施工する場面において、当該建設工事について次のような対応を要求する。

  • 当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する。
  • 当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させる。

(5)「主任技術者」の配置義務【その4:特定専門工事】

建設業法26条の3は、「特定専門工事」において、一定の条件のもと下請負人における主任技術者の配置を不要とする規定である。

下記にて整理をしているが、筆者も、完全に正しく理解できている自信がありません。

参照条文

第二十六条の三 
特定専門工事の元請負人及び下請負人(建設業者である下請負人に限る。以下この条において同じ。)は、その合意により、当該元請負人が当該特定専門工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならない主任技術者が、その行うべき次条第一項に規定する職務と併せて、当該下請負人がその下請負に係る建設工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならないこととされる主任技術者の行うべき次条第一項に規定する職務を行うこととすることができる。この場合において、当該下請負人は、第二十六条第一項の規定にかかわらず、その下請負に係る建設工事につき主任技術者を置くことを要しない。
2 前項の「特定専門工事」とは、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるものであつて、当該建設工事の元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額。以下この項において同じ。)が政令で定める金額未満となるものをいう。ただし、元請負人が発注者から直接請け負つた建設工事であつて、当該元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額が第二十六条第二項に規定する金額以上となるものを除く。
3 第一項の合意は、書面により、当該特定専門工事(前項に規定する特定専門工事をいう。第七項において同じ。)の内容、当該元請負人が置く主任技術者の氏名その他の国土交通省令で定める事項を明らかにしてするものとする。
4 第一項の元請負人及び下請負人は、前項の規定による書面による合意に代えて、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより第一項の合意をすることができる。この場合において、当該元請負人及び下請負人は、当該書面による合意をしたものとみなす。
5 第一項の元請負人は、同項の合意をしようとするときは、あらかじめ、注文者の書面による承諾を得なければならない。
6 注文者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該注文者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。
7 第一項の元請負人が置く主任技術者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者でなければならない。
一 当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上指導監督的な実務の経験を有すること。
二 当該特定専門工事の工事現場に専任で置かれること。
8 第一項の元請負人が置く主任技術者については、第二十六条第三項の規定は、適用しない。
9 第一項の下請負人は、その下請負に係る建設工事を他人に請け負わせてはならない。

まとめると、つぎのとおり。

  • 特定専門工事である下請負に係る建設工事であること。
    「特定専門工事」とは、同法26条の3第2項において、つぎのように定義されている。
    • 土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるもの
      (建設業法施行令30条1項に規定が置かれている)
      • 一 大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事
      • 二 鉄筋工事
    • かつ、当該建設工事の元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額。)が政令で定める金額未満
      (建設業法施行令30条2項により「4000万円」)
    • かつ、元請負人が発注者から直接請け負つた建設工事であり、当該元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額が第二十六条第二項に規定する金額以上となる場合を除く。
      (建設業法26条2項⇒同法3条1項2号⇒建設業法施行令2条=4500万円)
  • 元請負人及び下請負人が「当該元請負人が配置する主任技術者が、その行うべき職務と併せて、当該下請負人がその下請負に係る建設工事につき配置すべき主任技術者の行うべき職務を行うこと」について合意し、かつ合意内容を書面にすること。
    (当該書面への記載事項については、建設業法施行規則17条の6に規定が置かれている。)
  • 上記合意に先立ち、元請負人が注文者から書面による承諾を得ること。
  • 元請負人が配置する主任技術者が、つぎのいずれの要件も満たすこと。
    • 当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上指導監督的な実務の経験を有すること。
    • 当該特定専門工事の工事現場に専任で置かれること。
  • 下請負人は、その下請負に係る建設工事を他人に請け負わせないこと。

実際に活用される例があるのかイメージつかない・・・
(注文者は、どのようなケースで、これを承諾するのだろうか?)

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