吸収合併における各別の催告(同時公告との関係)

2019年2月19日

1.会社法の規定

(1)消滅株式会社等に対する異議申述について。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第七百八十九条 

次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。

一 吸収合併をする場合 吸収合併消滅株式会社の債権者

二 吸収分割をする場合 (・・・)

2 前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。

一 吸収合併等をする旨

二 存続会社等の商号及び住所

三 消滅株式会社等及び存続会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの

四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

官報公告において記載すべき事項は意外と少ない。

  1. 吸収合併等をする旨
  2. 存続会社等の商号及び住所
  3. 消滅株式会社等及び存続会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
  4. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

(2)存続株式会社等における異議申述について

参照条文

第七百九十九条 

次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、存続株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。

一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社の債権者

二 吸収分割をする場合 (・・・)

2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。

一 吸収合併等をする旨

二 消滅会社等の商号及び住所

三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの

四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

2.会社法施行規則(計算書類に関する事項として記載すべき事項)

参照条文

会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)

第百八十八条 

法第七百八十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。

一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百八十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの

イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁

ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁

ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十八号イに掲げる事項

二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十六号に掲げる事項

三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨

四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条【計算書類の公告等に関する規定の特例有限会社に対する適用除外】の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨

五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨

六 公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨

七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

ツラツラと記載が続くが、決算公告を失念してしまっていた株式会社の場合、例のごとく第7号に該当する。

⇒「会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」を公告

参照条文

会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)

第百九十九条 

法第七百九十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、(・・・同内容なので省略・・・)

 というわけで、官報公告をしている旨を記載する場合には、①「官報の日付」②「掲載頁」を必ず記載しなければならない。

3.同時公告した場合

(1)同時公告とは

債権者保護手続きとしての公告(「合併しますので異議のある債権者は~」「資本金を減少しますので異議のある債権者は~」)をする際に、計算書類に関する事項(最終の事業年度の貸借対照表の要旨等)の記載が要求される(法799条2項3号)。

その際に、決算公告をしていれば、当該公告を援用する記載をすればよいが、決算公告を怠っていた場合には、理論的には、①まず決算公告をする、②つづけて異議申述公告をするという方法が考えられる。

しかしながら、①②と別個に公告するのは迂遠であるから、便宜、①と②を同時に公告してしまうというのが、同時公告である(規則188条7号)。

ちなみに、会社が定める公告方法が官報の場合、同時公告における最終の事業年度の貸借対照表の要旨の記載は、当該事業年度の決算公告ともなる(大会社を除く)。 

参照条文

会社法

第四百四十条 

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号【官報】又は第二号【日刊新聞紙】に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。

3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。

4 金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。

(2)同時公告に記載した計算書類の内容(最終の事業年度の貸借対照表の要旨)を各別催告で援用することの可否

同時公告が、決算公告の要件を満たすのであれば、当該官報の記載を援用することもOKとなる。

ただし、同時公告と各別催告の到達(郵送で送付する前提)を同時としたい場合、官報掲載ページが判明するのが原則的には官報掲載日当日となってしまうことから、各別催告に記載すべき「掲載頁」がわからないというジレンマが・・・。

そうなると、つぎの選択肢に分かれる。

① 各別催告にも、最終の事業年度の貸借対照表の要旨を掲載する。

② 各別催告は、官報掲載日当日以降に発送する。催告の到達は翌日以降に!

4.官報公告と個別催告の催告期間が異なってもよいのか?

3(2)②の選択をした場合には、検討事項となる。

詳細は、『商業・法人登記360問』P313を参照。