種類株式について(株主リストとの関係で)

2018年12月19日

1.条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第百七条 

株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。

(・・・)

第百八条 

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

一 剰余金の配当

二 残余財産の分配

三 株主総会において議決権を行使することができる事項

四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。

八 株主総会(・・・)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(・・・)又は監査役を選任すること。

2 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。

(・・・)

3 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(・・・)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。

会社法107条は、発行する全部の株式の内容について(これは種類株式ではない。)。

会社法108条は、内容の異なる2以上の種類の株式を定める場合の、その内容について。

2.種類株式とは(普通株式とは)

108条による定款の定めを置いていると「種類株式発行会社」となる。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第二条 

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(・・・)

十三 種類株式発行会社 剰余金の配当その他の第百八条第一項各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する株式会社をいう。

(・・・)

というわけで「種類株式」とは、会社法108条1項各号記載の内容につき内容の異なる株式を、それぞれ指すことになる。

従い、会社法108条1項各号記載の内容につき、同条の規定に基づいた内容変更が加えられている株式と、そうでない株式(いわゆる「普通株式」)の双方が、種類株式となりうる。

ただし、一般的には、いわゆる「普通株式」ではない種類株式のことを「種類株式」と呼称するように思う。

商業登記においても、なんら内容変更のくわえられていない株式を「普通株式」と呼称しており、その内容を登記することはない(これを「第1種種類株式」と呼称しても、いわゆる普通株式と異なる内容がなければ、株式の内容の登記は不要になる、はず・・?)。

その他の種類の株式について、当該株式の「(普通株式と)異なる内容」が登記事項となる。

従い、登記されていない株式の内容は、普通株式も種類株式も同じ内容になる。

3.株主リストへの記載

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

第六十一条 

2 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。

一 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数

二 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数

3 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(・・・)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。

一 十名

二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数

 61条2項において、株主全員の同意を要する場合で、かつ種類株式発行会社である場合には、

  • (1)各株主が有する株式の数
  • (2)株式の種類と種類ごとの数
  • (3)各株主の議決権の数

を記載しなければならない。(1)(2)をあわせて「株式の数」と定義されている。

61条3項は、前項の「株式の数」の定義を受けているので、種類株式発行会社である場合には、

(1)各株主が有する株式の数

(2)株式の種類と種類ごとの数

(3)各株主の議決権の数

を記載する。ただし、登記すべき事項に関して議決権を有している者に限られる。

以下、個別に確認。

(1)A会社:普通株式と甲種類株式(完全無議決権株式)を発行

61条3項によるリスト添付の場合には、甲種類株式のみを有する株主は出てこない。

(2)B会社:普通株式とA種類株式(拒否権付株式)を発行

61条3項によるリスト添付の場合には、「株主総会」のリストについて、A種類株式のみを有する株主も登場するし、決議事項がA種類株式(拒否権付株式)の種類株主総会決議を要する事項であれば、別途、A種類株式についてのリストが必要になる。

(3)C会社:普通株式と第1種類株式(取締役選任株式)を発行

「株主総会」において取締役の選任がなされることはなくなる(※1、2)ので、各種類株主総会に関するリストが必要になる。

仮に、C会社が、普通株式・第1種類株式・第2種類株式を発行していて、普通株式で2名、その他の株式で2名の取締役を選任するとしていた場合には、第1種類株式・第2種類株式による種類株主総会のリストにおいて株式の種類の記載が必要になるのだろうか?

※1 

条文記載のとおり(会社法347条。参照は省略。)。
また、登記記載例をみると「選任できないこと」が登記されているが、内藤先生は「選任できないこと」は株式の内容ではないと指摘(「商業登記全書第3巻 株式・種類株式」第2版P381。内藤ブログにも詳細な記事あり。)。いやぁ恐ろしい・・・。

※2

次の条文に留意。恐ろしや・・。

参照条文

会社法

第百十二条 
第百八条第二項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定款の定めは、この法律又は定款で定めた取締役の員数を欠いた場合において、そのために当該員数に足りる数の取締役を選任することができないときは、廃止されたものとみなす
2 前項の規定は、第百八条第二項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定款の定めについて準用する