LLP(有限責任事業組合)について(主にその登記に関して)

1.有限責任事業組合とは

(1)有限責任事業組合(LLP)制度について

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)(以下単に「法」といいます。)に基づく組合契約です。

創業を促し、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門的な能力を持つ人材の共同事業を振興するために、民法組合の特例として2005年8月に創設されました。

特徴は、つぎのとおりです。

  • 構成員全員が有限責任
    (出資金の下限は1円。現物出資も可能。)
  • 利益や権限などの分配に関するルールは内部自治(契約)により決定
  • 構成員課税
    (法人課税ではない)

組合契約に基づくものであるため、たとえば株式会社のように、利益分配が出資比率に拘束されたり、期間設計に限定が設けられていたりということがありません。

民法組合とは異なり「有限責任」となっているため、組合契約について登記が必要となっています。

とはいえ「組合契約」ですので、法人格はありません。

(2)有限責任事業組合(LLP)の活用状況

経済産業省HPによると、2017年12月末時点の数字となりますが、
総数が7,593件とのこと。

都道府県別の登記件数(後述のように登記が必要)は、静岡県は129件となっています。
最多は、東京都の2,821件となっています。
(数字はいずれも2017年12月末時点)

下記外部リンクは、経済産業省HPに掲載されている「LLPの設立状況」という資料です。

(3)有限責任事業組合(LLP)と登記

有限責任事業組合(LLP)については、その「有限責任」という性質上、登記が必要とされています。

登記に関する規律は、基本的には法に定めがありますが、法73条は「商業登記法」と「民事保全法」を準用しています。
準用条文については、体力不足のため未確認です。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(登記)
第八条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

2.有限責任事業組合の登記事項(一部)

(1)効力の発生の登記

組合契約が効力を生じたときには、組合の主たる事務所の所在地において、登記をする必要があります。

なお、有限責任事業組合契約は、(1)個人又は法人が出資して、それぞれの出資の価額を責任の限度として共同で営利を目的とする事業を営むことを約し、(2)各当事者がそれぞれの出資に係る払込み又は給付の全部を履行することによって、その効力を生じます。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(組合契約の効力の発生の登記)
第五十七条 組合契約が効力を生じたときは、二週間以内に、組合の主たる事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 第四条第三項第一号、第二号及び第四号から第六号までに掲げる事項
二 組合の事務所の所在場所
三 組合員が法人であるときは、当該組合員の職務を行うべき者の氏名及び住所
四 組合契約書において第三十七条第一号から第五号までに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由

(2)変更の登記

効力発生時に登記をする以上、その後に、登記事項の変更が発生した場合には、その変更の登記を行う必要があります。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(変更の登記)
第五十八条 組合において前条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。

(3)解散・清算結了の登記

組合を解散(最終的には清算結了)した場合にも、その解散・清算結了の登記が必要となります。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(解散の事由)
第三十七条 組合は、次に掲げる事由によって解散する。ただし、第二号又は第三号に掲げる事由による場合にあっては、その事由が生じた日から二週間以内であって解散の登記をする日までに、新たに組合員(同号に掲げる事由による場合にあっては、居住者又は内国法人である組合員)を加入させたときは、この限りでない。
一 目的たる事業の成功又はその成功の不能
二 組合員が一人になったこと。
三 第三条第二項の規定に違反したこと。
四 存続期間の満了
五 総組合員の同意
六 組合契約書において前各号に掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生

3.有限責任事業組合の効力発生の登記

(1)申請人

組合員からの申請。

(2)添付書類

添付書類は、つぎのとおりです。
法67条に直接規定されています。

  1. 組合契約書
  2. 第三条第一項に規定する出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面
  3. 組合員が法人であるときは、次の書面
    1. 当該法人の登記事項証明書。
      ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合を除く。
    2. 当該組合員の職務を行うべき者の選任に関する書面
    3. 当該組合員の職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面

なお、法人が組合員になることも可能であり、その場合には職務執行者を選任する必要があります。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(法人が組合員である場合の特則)
第十九条 法人が組合員である場合には、当該法人は、当該組合員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の組合員に通知しなければならない。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百七十一条【委任の規定の準用】の規定は、前項の規定により選任された組合員の職務を行うべき者について準用する。

出資に関する事項は登記される事項ではないものの、組合員の資格として「出資に係る払込み及び給付を完了させること」が求められており、そのため「出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面」が添付書類になっています。
法務局で公開されている記載例によると、株式会社の払込証明書と同様の書面を求めているように見えます。

その他、準用される商業登記法に基づく添付書類については、記載を省略します。

(3)登記すべき事由

法57条より、つぎの事項を登記する必要があります。

  • 法4条3項1号、2号及び第4号から第6号までに掲げる事項
    • 有限責任事業組合の事業(1号)
    • 組合の名称(2号)
    • 組合員の氏名又は名称及び住所(4号)
    • 組合契約の効力が発生する年月日(5号)
    • 組合の存続期間(6号)
  • 組合の事務所の所在場所
  • 組合員が法人であるときは、当該組合員の職務を行うべき者の氏名及び住所
  • 組合契約書において第三十七条第一号から第五号までに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由

組合員の出資の目的及びその価額は登記事項とはされていません。
(有限責任なのにどうしてなのでしょうか?)

4.有限責任事業組合の変更の登記

(1)申請人

組合員からの申請。

(2)添付書類

添付書類は、つぎのとおりです。
法68条に直接規定されています。

  1. 当該事項の変更を証する書面を添付
  2. 法人である組合員の加入による変更の登記の申請書には、前条(法67条)第三号に掲げる書面を添付

その他、準用される商業登記法に基づく添付書類については、記載を省略します。
(合同会社と似たような考え方になるのでしょうか?)

(3)登記すべき事由

省略

5.有限責任事業組合の解散・清算結了の登記

(1)申請人

清算人からの申請。

清算人の選任は、つぎの規定による。

有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)
(清算人)
第三十九条 組合が解散したときは、組合員がその清算人となる。ただし、総組合員の過半数をもって清算人を選任したときは、この限りでない。
2 前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
3 裁判所は、前項の規定により清算人を選任した場合には、組合員が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。

(2)添付書類

解散(及び清算人選任)の登記の申請書には、つぎの書面を添付します。(法69条、70条。)

  1. 解散事由の発生を証する書面
  2. 第三十九条第一項ただし書の規定により選任された清算人の場合
    1. 総組合員の過半数の一致があったことを証する書面
    2. 選任された者が就任を承諾したことを証する書面
  3. 裁判所が選任した清算人の場合
    1. その選任を証する書面

なお清算人が法人である場合には、上記3(2)3以降の書面が同様に必要となる。

清算結了の登記の申請書には、法51条の規定による清算に係る計算の承認があったことを証する書面を添付します。(法71条)

その他、準用される商業登記法に基づく添付書類については、記載を省略します。

(3)登記すべき事由

省略