商業登記における「本人確認証明書」

1.本人確認証明書とは

(1)条文

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書面)
第六十一条 
(・・・)
7 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項及び第百三条において「取締役等」という。)が就任を承諾したこと(・・・)を証する書面に記載した取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等(・・・)が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。

(2)整理

平成27年2月27日より施行された「本人確認証明書」について。
(関係する通達は「平成27年2月20日民商第18号局長通達」。)

つぎのようなケースで添付が必要となる。

  • 設立の登記
  • 取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記

監査役も対象となっている点には注意!

添付すべき書類は次のとおりであり、これを実務上「本人確認証明書」と呼んでいる。

  • 取締役等が就任を承諾したこと(・・・)を証する書面に記載した取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書
  • または上記証明書の謄本であり、取締役等(・・・)が原本と相違がない旨を記載した書面でもOK

これにともない「就任を承諾したことを証する書面」において、取締役等の氏名・住所の記載を要するケースがでてきたことに留意。

本人確認書類の添付が不要となるのは、つぎのようなケース。

  • 取締役等が「再任」である変更登記申請
  • 取締役等について61条4項・5項・6項に基づいて印鑑証明書を添付している設立登記申請
  • 取締役等について61条4項・5項・6項に基づいて印鑑証明書を添付している変更登記申請

2.添付不要となる「再任」の意義

(1)61条7項の趣旨

取締役等の就任に関係する登記について真実性の向上を図る趣旨。

なお商業登記における「真実性の向上を図るための措置」については、下記関連記事にリンクをはっている記事も参照のこと。

再任のケースが除外されたのは、本件措置により一度その実在性が確認されている取締役等について、重ねて実在性の確認をする必要性は乏しいとの理由による。

【参考文献:「平成27年改正商業登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱いについて」佐藤真紀子(登記研究809号59頁~)】

(2)このようなケースは「再任」

そうなると、再任といっても「本件措置により一度その実在性が確認」されているケースに限定されるような気もするが、そうした経過措置はとられていない。

とはいえ「再任」の語について定義づけもなされておらず、この点は解釈に委ねられている。

重任のほか、同一申請で「退任・就任」の登記がなされるケース(権利義務取締役等だったときなど)は「再任」に含まれるものと解される。

【参考文献:登記研究806号65頁~「商業登記倶楽部の実務相談室から見た 商業・法人登記実務上の諸問題(第20回)」】

【参考文献:神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介 編著『商業・法人登記500問』テイハン(2023/07/06)P.243】

(3)申請にスキマが空いていたら・・

たとえば令和5年5月1日に同日付辞任の登記をした取締役について、令和5年7月1日に就任の登記をする場合にはどうか?

あるいは、監査役を辞任して、取締役にスライドする場合はどうか?

詳細は、上記参考文献を参照のこと。

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