目次
1.不動産登記の申請における登録免許税の計算
(1)不動産登記申請における「不動産の価格」とは
登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)
(不動産等の価額)
第十条
別表第一第一号、第二号又は第四号から第四号の三までに掲げる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。
附則
(不動産登記に係る不動産価額の特例)
第七条
新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号(固定資産税に関する用語の意義)に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる。
上記の「別表第一」を一部だけ抜粋。
登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)
別表第一
課税範囲、課税標準及び税率の表(第二条、第五条、第九条、第十条、第十三条、第十五条―第十七条、第十七条の三―第十九条、第二十三条、第二十四条、第三十四条―第三十四条の五関係)
登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定又は技能証明の事項 | 課税標準 | 税率 |
(二) 所有権の移転の登記 | ||
イ 相続又は法人の合併による移転の登記 | 不動産の価額 | 千分の四 |
ロ 共有物の分割による移転の登記 | 不動産の価額 | 千分の四 |
ハ その他の原因による移転の登記 | 不動産の価額 | 千分の二十 |
さらに附則7条に規定されている「当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額」は下記のとおり。
登録免許税法施行令(昭和四十二年政令第百四十六号)
附則
3 法附則第七条に規定する政令で定める価額は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十一条第九号に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された価格のある不動産については、次の各号に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ当該各号に掲げる金額に相当する価額とし、課税台帳に登録された価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で課税台帳に登録された価格のあるものの次の各号に掲げる当該申請の日の区分に応じ当該各号に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする。
一 登記の申請の日がその年の一月一日から三月三十一日までの期間内であるもの その年の前年十二月三十一日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に百分の百を乗じて計算した金額
二 登記の申請の日がその年の四月一日から十二月三十一日までの期間内であるもの その年の一月一日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に百分の百を乗じて計算した金額
4 法別表第一の第一号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とするものについて登録免許税を課税する場合において、登記官が当該登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため前項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、法附則第七条に規定する政令で定める価額は、同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする。
すこし整理すると、つぎのとおり。
課税台帳に登録された価格のある不動産 | 課税台帳に登録された当該不動産の価格に百分の百を乗じて計算した金額 |
課税台帳に登録された価格のない不動産 | 当該不動産に類似する不動産で課税台帳に登録された価格に百分の百を乗じて計算した金額を基礎として、登記に係る登記機関が認定した価額。 |
また、参照される「価格」は登記申請のタイミングによって、つぎのとおり区分される。
登記の申請の日がその年の一月一日から三月三十一日まで | その年の前年十二月三十一日現在において課税台帳に登録された価格を計算の基礎とする。 |
登記の申請の日がその年の四月一日から十二月三十一日まで | その年の一月一日現在において課税台帳に登録された価格を計算の基礎とする。 |
さらには、増築等により「前項【附則3項】の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるとき」には、「同項【附則3項】の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額」となる。
「課税台帳に登録された価格のない不動産」のうち建物については、下記にて課税標準価格を認定する基準表が公開されている。(静岡地方法務局管内における登記申請に関して)
上記リンク先における「新築建物課税標準価格認定基準表(令和3年度)」を参照。
(2)固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格とは?
地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
(固定資産税に関する用語の意義)
第三百四十一条
固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(・・・)
五 価格 適正な時価をいう。
(・・・)
九 固定資産課税台帳 土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する。
十 土地課税台帳 登記簿に登記されている土地について第三百八十一条第一項に規定する事項を登録した帳簿をいう。
(・・・)
(固定資産課税台帳の登録事項)
第三百八十一条
市町村長は、土地課税台帳に、総務省令で定めるところにより、登記簿に登記されている土地について不動産登記法第二十七条第三号及び第三十四条第一項各号に掲げる登記事項、所有権、質権及び百年より長い存続期間の定めのある地上権の登記名義人の住所及び氏名又は名称並びに当該土地の基準年度の価格又は比準価格(・・・)を登録しなければならない。
(・・・)
「価格」の決定については、つぎのとおり。
地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)
第四百三条
市町村長は、第三百八十九条【特定の船舶や鉄道の用に供する固定資産】又は第七百四十三条【大規模の償却資産】の規定によつて道府県知事又は総務大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、固定資産の価格を決定しなければならない。
2 固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員は、総務大臣及び道府県知事の助言によつて、且つ、納税者とともにする実地調査、納税者に対する質問、納税者の申告書の調査等のあらゆる方法によつて、公正な評価をするように努めなければならない。
(固定資産の価格等の登録)
第四百十一条
市町村長は、前条第一項の規定によつて固定資産の価格等を決定した場合においては、直ちに当該固定資産の価格等を固定資産課税台帳に登録しなければならない。
2 市町村長は、前項の規定によつて固定資産課税台帳に登録すべき固定資産の価格等のすべてを登録した場合においては、直ちに、その旨を公示しなければならない。
3 (・・・)
2.固定資産の価格の通知
(1)法令で定められている原則
地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
(土地又は家屋の基準年度の価格又は比準価格の登記所への通知)
第四百二十二条の三
市町村長は、第四百十条【固定資産の価格等の決定等】第一項(・・・)によつて、土地及び家屋の基準年度の価格又は比準価格を決定し、又は修正した場合においては、その基準年度の価格又は比準価格その他総務省令で定める事項を、遅滞なく、当該決定又は修正に係る土地又は家屋の所在地を管轄する登記所に通知しなければならない。
市町村長が、固定資産の価格を決定(あるいは修正)した際には、その価格を「土地又は家屋の所在地を管轄する登記所」に通知しなければならない、のである。
通知「しなければならない」のである。
(2)「事務簡素化の観点」からの通達
ところが、こんな通達がある。
(市町村によっては、ちゃんと通知しているところもあるそうな。)
昭和42年6月26日民三第676号通知
【要約】
市町村長の行う土地又は家屋に係る基準年度の価格又は比準価格の登記所への通知の方法については、法務省からの要望もあり、事務簡素化の観点からも従来の方法に代えて次のような方法をとることもさしつかえない。
(1)不動産の登記の際、登録免許税の徴収上必要を生じた場合に、登記所の依頼に応じて、その都度個別に、市町村長が登記所に対して通知する。
(2)この場合にあっては、登記官から市町村長にあてた固定資産評価証明書交付依頼書(登記官の押印のあるもの)を持参した登記申請人(その委任を受けた者を含む。)に対して固定資産評価証明書を交付する方法でも良い。
(3)こうした方法を採用する場合には、市町村長から登記所への通知を行う必要はない。
(4)固定資産評価証明書の交付については手数料を徴収しないこと
法務局としては、登記には関係のない不動産の価格など知る必要もないのに、管轄する不動産について一括して価格を通知されても事務処理上の負担が大きいばかり。
そんなわけで、申請人(その委任を受けた者を含む。)を小間使いとして、市町村長から不動産の価格を確認させることに!!
3.固定資産課税明細書の活用
(1)固定資産評価証明書の強要
とはいえ、その価格というのは、固定資産税(都市計画税)納税通知書にも記載されているのである。
にもかかわらず、上記のような固定資産評価証明書を取得させるという不合理が、近年までまかり通っていたと考えると恐ろしい。
(2)課税明細書の利用推奨
東京23区の都税事務所においては、つぎのようにアナウンスしている。
所有権移転にかかる不動産登記申請の際には、登録免許税の算定のため、固定資産の価格を記載する必要があります。
その価格は、固定資産税・都市計画税納税通知書と同時期にお送りする課税明細書でご確認いただけます。注意事項
不動産登記申請は、課税明細書の写しを添付して行うことができます。
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/info/kazeimeisaisho.pdf?ver=20230605
「Q7 不動産登記の申請を行う場合、固定資産の価格はどのように確認すればよいですか。」を参照。
また、Q7の下部に「関連事項」としてパンフレットのリンクが掲載されている。
(3)法務局での取扱い
日本司法書士連合会宛に令和2年12月8日付で、法務省民二課より事務連絡が発出されている。
静岡県司法書士会宛に令和4年1月18日付で、静岡地方法務局首席登記官より事務連絡が発出されている。
(いずれも司法書士の方は会員向け掲示板で確認のこと)
上記の情報が、どれくらい一般の方向けに公開されているのかは不明。
相続登記の義務化にあたり、登記申請の簡易化が求められているところ、このあたりも明確にするべきではないか?
インターネットで検索すると、つぎのような情報が確認できる。
(ただし管轄法務局ごとに取扱いが異なる可能性もあるため、注意!!)
評価証明書について写しの添付のみで良い(そのため原本還付に関する対応も不要)?
名寄帳や納税通知書についても同様の取扱い?
納税通知書については、「課税明細」にかかる部分のみを添付すればOK?
評価通知書については原則として原本を添付?