1.業務執行社員
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(業務の執行)
第五百九十条
社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
(2)整理
原則として、社員は「業務執行社員」となる。
ただし、定款に別段の定めをおくことが可能。
(社員の中から、何かしらの方法によって、特定のものを業務執行社員とすることが可能。)
定款の定めの置き方としては、つぎのような方法がある。
- 定款に直接、業務執行社員の氏名等を定める方法
- 定款に選定方法(例:社員間での互選)を定める方法
業務執行社員を定款で定めた場合には、当該業務執行社員について、つぎのような規定が適用される。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(業務を執行する社員を定款で定めた場合)
第五百九十一条
業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
4 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
5 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
6 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
また、法人である社員が業務執行社員となる場合には、つぎの規定にも注意が必要である。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(法人が業務を執行する社員である場合の特則)
第五百九十八条
法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
2 第五百九十三条から前条までの規定は、前項の規定により選任された社員の職務を行うべき者について準用する。
2.業務執行社員の登記手続き
(1)登記事項
業務執行社員の「氏名・名称」が登記事項となる。
「年月日業務執行権付与」「年月日業務執行権喪失」という原因で登記される。
(2)添付書類
業務執行社員の定め方により添付書類は異なる。
定款変更による場合には、総社員の同意書が必要となる。
互選等による場合には、定款及び互選書が必要となる。
就任承諾書は不要とされている。
3.代表社員
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(持分会社の代表)
第五百九十九条
業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。
3 持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。
4 持分会社を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(2)整理
原則として、業務執行社員は、代表社員となる。
ただし、次の方法により、業務執行社員の中から、特定のものを代表社員と定めることができる。
- 定款
- 定款の定めに基づく社員の互選
条文の記載の仕方が、業務執行社員の記載の仕方とやや異なる。
代表社員:定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる
業務執行社員:社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する
なお、599条3項に規定された「定款の定めに基づく社員の互選」といわれているところの「社員」の解釈については、ハンドブック5版P.626(注2)を参照(社員全員ではなく、業務執行社員の過半数で定める趣旨だというもの。文言の使い分けは・・・。法人社員がいる場合には、だれが具体的意思表示をするか(法人代表者か職務執行者か)という大きな違いが生じる・・・。)。
また、互選により選定された代表社員については「就任承諾」が必要となっている。
平成18年3月31日法務省民商第782号
第4部持分会社
第2 設立
2 設立の登記の手続
(3)添付書面
登記の申請書には,次に掲げる区分に応じ,次の書面を添付しなければならない。
ア 合名会社(商登法第93条,第94条)
(・・・)
(イ)定款の定めに基づく社員の互選によって代表社員を定めたときは,その互選を証する書面及び代表社員の就任承諾書
4.登記手続き
(1)登記事項
代表社員の氏名・名称および住所
代表社員が法人の場合には、上記に加え、職務執行者の氏名・住所も登記事項となる。
(2)添付書類
定め方により添付書類は異なる。
定款に氏名等を定めている場合 | 定款変更に係る総社員の同意書 |
定款の定めに基づく社員の互選の場合 | 定款、互選書と就任承諾書 |
