目次
1.労働組合とは
(1)条文上の定義
労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)
(目的)
第一条
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し(・・・)。
(労働者)
第三条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)
(労働組合)
第二条
この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
四 主として政治運動又は社会運動を目的とするもの
(2)整理
ポイントは、つぎの点にあるか?
- 労働者が主体
- 労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図る
2条各号の性質を持つと「(労働組合法上の)労働組合」ではないことになる。
条文の文字面だけでなく、条文制定に関する歴史等々も含めて解釈すべきと思われる文言・規定が随所にみられるが、とりあえず文字面だけで以下、自分なりの整理を進めていく。
(3)労働組合の資格審査(労働委員会)
労働組合法に規定する手続・救済を受けるためには、つぎの2つの要件が必要となる。
- 2条各号の性質を持たないこと
- 労働組合の規約に、5条2項に定める規定が含まれること
上記要件に適合することは、「労働委員会」により審査される。
わが国では、労働組合は自由に設立することができます。したがって、労働組合を設立してもどこへも届け出る必要はありません。ただし、労働組合が労働組合法の定める手続きに参与したり、救済を受けるためには、労働組合法第2条及び第5条第2項に定める一定の資格要件を備えていなければならないことになっています。
この資格の有無を審査することを労働組合の資格審査といい、次の場合には、その都度、資格審査を受ける必要があります。
イ 不当労働行為の救済申立てをする場合
ロ 労働委員会の労働者委員候補者を推薦する場合
ハ 法人登記をするために、資格証明書の交付をうける場合
ニ 労働協約の地域的拡張適用の申立てをする場合
ホ 職業安定法で決められている無料の労働者供給事業の許可申請を行う場合等(中央労働委員会HPより抜粋)https://www.mhlw.go.jp/churoi/shinsa/shikaku.html
(労働組合として設立されたものの取扱)
第五条
2 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。
一 名称
二 主たる事務所の所在地
三 連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
五 単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
六 総会は、少くとも毎年一回開催すること。
七 すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。
八 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
九 単位労働組合にあつては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。
なお、静岡県の労働委員会については、つぎのとおり。
2.労働組合の法人化?
(1)法人化のメリット
- 労働組合の各種法律行為において、労働組合が契約の当事者となる(例:組合名義の銀行口座開設)。
- 労働組合の名義で不動産登記ができる。
(法人でない場合は、法人格なき社団として、組合代表者個人の名義にて登記することになる。)
一般的な「法人のメリット」と同じかな・・。
(2)法人化の手続き(資格審査が必要!)
(法人である労働組合)
第十一条
この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによつて法人となる。
2 この法律に規定するものの外、労働組合の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
3 労働組合に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者に対抗することができない。
というわけで、労働委員会による資格審査を受けたうえで、主たる事務所所在地で登記をすることで法人となる。
(3)法人に関する規定
(代表者)
第十二条 法人である労働組合には、一人又は数人の代表者を置かなければならない。
2 代表者が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、法人である労働組合の事務は、代表者の過半数で決する。
(法人である労働組合の代表)
第十二条の二 代表者は、法人である労働組合のすべての事務について、法人である労働組合を代表する。ただし、規約の規定に反することはできず、また、総会の決議に従わなければならない。
(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の準用)
第十二条の六
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条【住所】及び第七十八条【代表者の行為についての損害賠償責任】(第八条に規定する場合を除く。)の規定は、法人である労働組合について準用する。
(損害賠償)
第八条
使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。
12条2項但書きの「ただし、規約の規定に反することはできず、また、総会の決議に従わなければならない。」という規定は、当然のようにも思われるが・・・。
3.労働組合の法人化の登記手続き
(1)労働組合法施行令に定める登記手続き
法11条2項において「労働組合の登記に関して必要な事項は、政令で定める。」とされている。
具体的には、労働組合法施行令がこれに該当する。
(2)登記事項
労働組合法施行令(昭和二十四年政令第二百三十一号)
(法人である労働組合の登記)
第三条
法第十一条第一項の規定による登記には、左の事項を掲げなければならない。
一 名称
二 主たる事務所の所在場所
三 目的及び事業
四 代表者の氏名及び住所
五 解散事由を定めたときはその事由
第四条
法人である労働組合が主たる事務所を移転したときは、二週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては前条に掲げる事項を登記しなければならない。
2 同一の登記所の管轄区域内において主たる事務所を移転したときは、その移転の登記をするだけで足りる。
第五条
前条の場合を除く外、登記した事項中に変更を生じたときは、二週間以内にその登記をしなければならない。
第七条
法人である労働組合の登記に関する事務は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が管轄登記所としてつかさどる。
2 各登記所に労働組合登記簿を備える。
スッキリとした登記事項である。
(3)登記手続きの添付書類(ごく簡単に)
労働組合法施行令(昭和二十四年政令第二百三十一号)
第八条
法第十一条第一項の規定による登記の申請書には、規約、第二条第二項の証明書及び代表者の資格を証する書面を添附しなければならない。
第九条
法人である労働組合の主たる事務所の移転その他登記事項の変更の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。ただし、代表者の氏、名又は住所の変更の登記については、この限りでない。
第十条
法人である労働組合の解散の登記の申請書には、解散の事由を証する書面及び代表者が清算人とならない場合には清算人の資格を証する書面を添附しなければならない。
設立(正確な用語ではないが)登記においては、つぎの3つが政令上で添付書類とされている。
- 規約
- 第二条第二項の証明書(資格審査の証明書)
- 代表者の資格を証する書面
代表者の決定は、どうやってやるんだろう?選挙かな?
(4)準用規定の確認
労働組合法施行令(昭和二十四年政令第二百三十一号)
第十一条
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第二条から第五条まで、第七条から第十五条まで、第十七条第一項、第二項及び第四項、第十八条、第十九条の二、第二十条第一項及び第二項、第二十一条から第二十三条の二まで、第二十四条第一号から第十四号まで、第二十六条、第二十七条、第五十一条から第五十三条まで、第百三十二条から第百三十七条まで並びに第百三十九条から第百四十八条までの規定は、法人である労働組合の登記に準用する。この場合において、同法第十七条第四項中「事項又は前項の規定により申請書に記載すべき事項」とあるのは「事項」と、「前二項」とあるのは「同項」と読み替えるものとする。
第二条から第五条まで | 登記所及び登記官に関する規定 |
第七条から第十五条まで | 登記事項証明書等に関する規定 (会社法人等番号、印鑑証明書、付属書類の閲覧に関する規定を含む。) 当事者申請主義に関する規定 |
第十七条第一項、第二項及び第四項 第十八条、第十九条の二 第二十条第一項及び第二項 | 登記申請の方式(3項「支店所在地での登記」の削除が反映されていない?) 委任状等の添付 (20条は印鑑届規定廃止が反映されていない?) |
第二十一条から第二十三条の二まで 第二十四条第一号から第十四号まで | 申請書の受付から却下に関する規定 |
第二十六条、第二十七条 | 行政区画等の変更 同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止 |
第五十一条から第五十三条まで | 本店移転の登記に関する規定 |
第百三十二条から第百三十七条まで | 登記の更正及び抹消に関する規定 |
第百三十九条から第百四十八条まで | 行政手続法の適用除外等に関する規定 法務省令への委任に関する規定 |
4.労働者協同組合との比較
(未策定)