1.古い株式会社の定款を見ていたら
古い株式会社(昭和50年代に設立)の設立時の定款を見る機会があった。
そこには、任期について、つぎのように記載されていた。
取締役及び監査役の任期は、就任後2年内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までとする。
「間違っちゃったのか?」と思ってしまった。
なお次の記事が非常に参考となった(はやく書籍化されて欲しいシリーズである。)。
鈴木龍介『商業登記の変遷(49)』登記研究第902号(2023)P.59以下
(上記記事では、取締役の任期の変遷にも言及しており、こちらも勉強となる!)
2.昭和49年改正前商法
昭和49年改正前商法においては、監査役の任期は次のとおりであった。
- 監査役の任期は1年を超ゆることを得ず。【商法273条】
- ただし、定款をもって、任期中の最終の決算期に関する定時株主総会の終結に至るまで其の任期を伸長することを妨げず。【商法256条3項を同法280条により準用】
3.昭和49年改正
昭和49年改正により、監査役の任期は次のとおりとなった。
いずれも商法273条である。
- 監査役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとす。【1項】
- 最初の監査役の任期は前項の規定に拘らず就任後1年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとす。【2項】
- 前2項の規定は定款を以て任期の満了前に退任したる監査役の補欠として選任せられたる監査役の任期を退任したる監査役の任期の満了すべき時までと為すことを妨げず。【3項】
「最初の監査役の~」なんていうのがあったのは、はじめて知った。
経過措置も知りたかったが、確認できなかった。
4.その後の改正
(1)平成5年改正
「2年」から「3年」に。
(2)平成13年12月改正
「3年」から「4年」に。
5.会社法の制定
つぎのとおり。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(監査役の任期)
第三百三十六条
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
3 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
4 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
二 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
四 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更