選択的夫婦別姓制度(選択的夫婦別氏制度)

2015年11月5日

1.上告審弁論

(1)「夫婦別姓を認めない」「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」とする2つの規定

昨日、平成27年11月4日、最高裁判所大法廷において、民法で定めた「夫婦別姓を認めない」「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」とする2つの規定の合憲性が争われた2つの訴訟の上告審弁論が開かれました。

一部ニュースでは、年内にも判断が下されると報道されています。

いずれについても、社会的影響の非常に大きな論点に係る最高裁判所の判断となります。

(2)仮に違憲判決が出たのなら?

この報道に触れて思ったことは、「仮に違憲判決が出た場合にどうなるか」でした。

特に前者「選択的夫婦別姓制度」については、既存の規定を違憲といっただけでは、不十分で、まず「夫婦別姓を選択できること」を認め、さらに「夫婦別姓の場合における子の姓の取扱い」や「戸籍上の記載方法」などなど多くのことを法制化したり改正したりしなければなりません。

もちろん、現行規定が違憲となるかどうか、仮に違憲となった場合に既存の条項をどのように改めるべきかということは、現時点ではわかりません。

2.「氏」の制度

(1)氏の制度の変遷

なお「氏」の制度の変遷については、つぎのリンクが非常にわかりやすいです。

法務省:我が国における氏の制度の変遷

「選択的夫婦別姓」について考える際に、仮に制度設計するとどのようになるのかということは知っておいた方が良いような気がします。

(2)法務省において準備された民法改正案

そこで、参考になる資料として、平成8年・平成22年に法務省において準備された民法改正案をご紹介します。詳細については、次のリンクをご参照ください。

法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

以下では、「選択的夫婦別姓」について、この改正案をみながら整理して行きたいと思います(なお、民法上「姓」という言葉ではなく、「氏」という言葉が使われるため、「別姓」ではなく「選択的夫婦別氏制度」と呼ぶのが、法律的には正しい点にご留意ください。)。

3.民法改正案から考える

重ねて言及しますが、以下の内容は平成8年または平成22年の改正案の内容である点にご留意ください。

(1)婚姻時の選択

選択的夫婦別氏制度としては、まず婚姻時に、夫若しくは妻の氏を称するか、各自婚姻前の氏を称するか選択することができます。

なお、婚姻後に同氏夫婦から別氏夫婦、あるいは別氏夫婦から同氏夫婦となることはできません。

但し、すでに同氏で婚姻している夫婦については、(改正された)法律施行後1年以内であれば、配偶者との合意に基づき別氏転換可能となります。

(2)子の氏の定まり方

そして子の氏は、夫婦同氏の場合には夫婦の、夫婦別氏の場合には、夫婦で婚姻時に定めた氏(夫または妻の氏のいずれか)となります。

従って、複数の子がいる場合、その子らの氏は同一となります。養子についても、ほぼ同様です。

法律改正後の経過措置に基づいて、別氏夫婦となることを選択した夫婦については、婚姻時に夫婦が称する氏として定められた氏が、前段の子の氏となります(つまり子の氏に変更は起きない。)。

(3)子の氏の変更の仕方(婚姻中)

別氏夫婦婚姻中における子の氏の変更については、子が未成年である場合については、特別の事情のある場合に限り家庭裁判所の許可を得て可能となっています。

別氏は認めるとしても、コロコロ変更しないようにするための規律といえましょう。

子の氏については、この他にも規律が追加されます(それだけ複雑となります。)。

4.まとめ

ざっと以上の通りなのですが、結局のところ、(制度そのものの当否は別として)制度設計上は「子の姓」をどうなるのかに留意する必要があるといえそうです。

さらに気になったのは、現行「改姓(改氏)」については、戸籍法107条(「やむを得ない事由」と「裁判所の許可」)で規律されていますが、実際の運用はどうなっているのか。この点については、別途調べてみたいと思います。