相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

2022年10月13日

1.いわゆる「相続土地国庫帰属制度」について

(1)法律の目的

参照条文

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)
(目的)
第一条 
この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。

(2)相続土地国庫帰属制度のおおまかな仕組み

つぎの流れで、要件を満たす土地については、国庫に帰属させることができる。

  1. 相続等によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者は、管轄法務局に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができる。
  2. 管轄法務局は、承認申請された土地が「通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたもの」に該当しないと判断したときは、土地の所有権の国庫帰属について承認。
  3. 土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた者が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属。

2.「相続等によって土地の所有権又は共有持分を取得した者」とは

(1)「相続等」とは

第1条において、次のように定義されている。

  • 相続
  • 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)

(2)資格混在や共有の場合にはどうなるの?

こちらの法務省HPに詳しく解説されている。
【外部リンク】法務省:相続土地国庫帰属制度の概要

  • 複数回の持分取得によって単独所有になったケースでは、いずれかの取得原因が「相続等」であれば申請可能。
  • 共有状態であっても、いずれか一人の共有者が上記に該当していれば、他の共有者がともに申請する限りにおいて、申請可能。
参照条文

(承認申請)
第二条 
土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。
(・・・)

3.「通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたもの」とは

(1)条文

参照条文

(承認申請)
第二条 
(・・・)
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(承認)
第五条 
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。

(2)まとめ

第2条は「申請できない」要件。

第5条は「該当しなければ承認される」要件。

いずれにせよ政令の内容が気になります。

4.「負担金」はいくら?

(1)関連リンク

参照条文

(負担金の納付)
第十条 
承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。
2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。
3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。

(2)まとめ

こちらも政令で定めることに。

5.関連リンク

(1)法務省の制度紹介ページ

(2)同じく法務省の「負担金」に関する考え方の紹介ページ

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