目次
1.取扱通達の公開
(1)取扱通達が法務省HPにて公開
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(令和5年2月8日付け民二第70号民事局長通達)」が法務省HPにて公開されている。
この記事では、本通達を「取扱通達」という。
(2)気になる箇所をピックアップ
- 規則第3条第4号「承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面」
- 規則第3条第6号「承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真」
- 法第2条第3項第5号「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について」の調査事項
2.規則第3条第4号
「承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面」
(1)取扱通達より引用
第4節 承認申請書類
第1 承認申請書の添付書類
4
(・・・)
管轄法務局における申請土地の書面調査や実地調査においても基礎となる資料であるほか、法第2条第3項第5号に規定する「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」に該当しないことを隣接地所有者に確認するために必要となるものである。
具体的には、登記所備付地図等や、国土地理院が公開している地理院地図などに、承認申請者が認識している土地の位置及び範囲を示したものが必要となる。なお、法第2条第3項第5号の「境界」とは、公的境界である「筆界」ではなく、「所有権界」を意味し、本図面で表示される土地の範囲も「所有権界」による範囲を意味する。したがって、本図面で表示された土地の範囲が「筆界」と相違することをもって承認申請を却下することはできない。そのため、本図面を作成するに当たり、承認申請者は、自らが認識する「所有権界」による土地の範囲を示せば足り、隣接地との境界について復元測量等を実施することまでは要しない。もっとも、管轄法務局の審査に資することを目的として、あらかじめ復元測量等を実施し、その成果を資料として任意に提出することは差し支えない。
取扱通達P9
(2)ポイントまとめ
念頭に置かれているのは、「登記所備付地図等や、国土地理院が公開している地理院地図などに、承認申請者が認識している土地の位置及び範囲を示したもの」。
なお、「登記所備付地図等」は、取扱通達のP4にて「登記所備付地図(不動産登記法第14条第1項地図)又は地図に準ずる図面(同条第4項の地図 。)」と定義されている。
そして、地図上に示すべきは申請者の認識する「所有権界」であり、かつ示される「所有権界」が「筆界」と相違していたとしても、そのことだけをもって却下とはならない。
申請に先立ち、復元測量までは求められていない。
とはいえ・・・。
3.規則第3条第6号
「承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真」
(1)取扱通達より引用
第4節 承認申請書類
第1 承認申請書の添付書類
6
(・・・)
管轄法務局における土地の隣接関係の書面調査や実地調査において判断するための基礎となる資料であるほか、法第2条第3項第5号に規定する「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」に該当しないことを隣接地所有者に確認するために必要となるものである。具体的には、各境界点を示すもの(境界標、ブロック塀又は道路のへり等の地物、簡易な目印等をいい、審査時及び国庫帰属時において確認可能なものであることを要する。)を明確に撮影した写真であって、上記4の図面におけるそれらの位置関係を明らかにしたものが必要となる。
取扱通達P10
なお、境界点を示すものについては、承認申請後の管轄法務局における審査時及び国庫帰属時において現地の確認が可能なものである必要があるが、境界標が存在しない場合に、隣地と境界を確定し、測量に基づく恒久性のある境界標を埋設することまでは要しない点に注意する必要がある。
(2)ポイントまとめ
念頭に置かれているのは、「境界標、ブロック塀又は道路のへり等の地物、簡易な目印等」であるが「審査時及び国庫帰属時において確認可能なものであることを要する」。
悩ましいのは「境界標が存在しない場合に、隣地と境界を確定し、測量に基づく恒久性のある境界標を埋設することまでは要しない」という点で、このあたりのニュアンスが知識不足で理解できない・・。
4.法第2条第3項第5号
「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について」の調査事項
(1)取扱通達より引用【書面調査編】
第10節 承認申請の審査
第3 調査事項
⑨ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について
争いがある土地(法第2条第3項第5号)
【書面調査】
(・・・)
(2) 所有権の範囲について争いがある土地
所有権の範囲については、以下の2点を確認する必要がある。ア 承認申請者が認識している隣接土地との境界が表示されていること
添付書面の「承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面(規則第3条第4」 号)、「承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真」(規則第3条第5号)及び「承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真」(規則第3条第6号)を確認するものとする。
また、法第7条の規定に基づき収集した申請土地に係る法務局等の保有する資料(登記記録、登記所備付地図等、地積測量図、筆界特定図面等)と添付書面の内容に齟齬がないかを確認するものとする。イ 承認申請者が認識している申請土地の境界について、隣接地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと
(a) 管轄法務局から隣接地所有者に対し、申請土地と申請土地に隣接する土地(以下「隣接土地」という)との境界及び境界紛争の有無を確認するため、承認申請があった旨を記載した通知書に規則第3条第4号から第6号までの書類の写し及び管轄法務局負担の返信用封筒を添付して、隣接土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人に送付するものとする(規則第13条第1項)。
(b) (a)の通知書は、<別添第9号様式>によって作成するものとし、表題部所有者又は所有権の登記名義人の登記記録上の住所地に宛てて送付するものとする(規則第13条第2項)。
(c) 隣接土地の該当性は、登記所備付地図等において申請土地に隣接しているかによって確認するものとし、申請土地と境界点で接している全ての土地について通知をするものとする。
なお、申請土地について、関係機関から林地台帳地図又は森林計画図の写しの提供がある場合には、当該図面も参考にするものとする。(d) 隣接土地が共有地である場合は、共有者全員の登記記録上の住所地に宛てて通知書を送付するものとする。
(e) 通知書の回答期限は、作成の日から2週間とする。返信期限までに返信がない場合は、再度通知書を送付するものとし、回答期限は再度の作成の日から2週間とする。
ただし、通知を受ける者が外国に住所を有する場合には、これらの回答期限は4週間とする。
なお、再度の通知に対して正当な理由がなく回答がなかった場合には、異議のないものとして取り扱い、実地調査を行うこととして差し支えない。(f) 通知に対して「異議はない」旨の回答があった場合には、承認申請者と当該隣接地所有者との間に境界の認識に相違はないものと判断するものとする。
(g) 通知に対して「異議がある」旨の回答があった場合には、承認申請者に結果を伝えるとともに、隣接地所有者から異議が提出されている状態では、隣接地所有者との間に境界の争いが存在することになるため、法第2条第3項第5号に該当し承認申請は却下となることを説明し、隣接地所有者との調整や申請の取下げの検討を促すものとする。
この場合の隣接地所有者との調整期限は、2か月を目安とし、調整が整った場合には、該当する規則第3条第4号から第6号までの書面を補正させた上で、関係する隣接地所有者に対して再通知を行うものとする。なお「異議がある、 」との回答に具体的な理由が記載されていない場合には、具体的な理由を明らかにするよう再通知することとし、それでもなお理由を示さない場合には、承認申請者と当該隣接地所有者との間に境界の認識に相違はないものと判断するものとする。(h) 隣接地所有者に通知が届かなかった場合(宛所不明で返戻された場合)は、実地調査において隣接地の状況を確認し、隣接地所有者や近隣住民等に認識を確認するなどの調査を実施することとなる。
取扱通達P28以下
通知書が返戻された場合は、その旨を審査結果報告書に記載し、当該通知書は承認申請書類つづり込み帳につづり込むものとする。
(2)ポイントまとめ【書面調査編】
全体として「承認申請者が認識している申請土地の境界について、隣接地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと」という点に重きが置かれている。
簡単に流れをまとめると、つぎのとおり。
- 管轄法務局から、承認申請があった旨を記載した通知書に規則第3条第4号から第6号までの書類の写し及び管轄法務局負担の返信用封筒を添付して、隣接土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人に送付。
(なお、送付先は、表題部所有者又は所有権の登記名義人の登記記録上の住所地となる!)
(共有地である場合は、共有者全員の登記記録上の住所地に宛てて通知書を送付!) - 通知書の回答期限は、作成の日から2週間とする。返信期限までに返信がない場合は、再度通知書を送付するものとし、回答期限は再度の作成の日から2週間。
(ただし、通知を受ける者が外国に住所を有する場合には、これらの回答期限は4週間) - 再度の通知に対して正当な理由がなく回答がなかった場合には、異議のないものとして取り扱い、実地調査を行う。
- 通知に対して「異議はない」旨の回答があった場合には、承認申請者と当該隣接地所有者との間に境界の認識に相違はないものと判断する。
- 通知に対して「異議がある」旨の回答があった場合には、承認申請者に結果を伝えるとともに、隣接地所有者との調整や申請の取下げの検討を促す。
(この場合の隣接地所有者との調整期限は、2か月を目安。)
(ただし「異議がある」との回答に具体的な理由が記載されていない場合には、具体的な理由を明らかにするよう再通知することとし、それでもなお理由を示さない場合には、承認申請者と当該隣接地所有者との間に境界の認識に相違はないものと判断する。) - 隣接地所有者に通知が届かなかった場合(宛所不明で返戻された場合)は、実地調査において隣接地の状況を確認し、隣接地所有者や近隣住民等に認識を確認するなどの調査を実施する。
これは、比較的軽い?
「回答なし」や「通知が届かず」のケースが多いのではないか?
(さすがに、無視はしないのか??)
(3)取扱通達より引用【実地調査編】
第10節 承認申請の審査
第3 調査事項
⑨ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について
争いがある土地(法第2条第3項第5号)【実地調査】
(・・・)
(2) 所有権の範囲について争いがある土地ア 承認申請者が認識している隣接土地との境界が現地で確認できること
添付書面の「承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面(規則第3条第4」 号)、「承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真」(規則第3条第5号)及び「承認申請に係る土地と当該土地
に隣接する土地との境界点を明らかにする写真」(規則第3条第6号)を参考に、現地で境界点の存在と位置を確認し、図面及び写真と齟齬していないかを確認するものとする。
添付書面と現地の状況が明らかに齟齬している場合は、承認申請者に事情を聴取するものとする。イ 承認申請者が認識している申請土地の境界について、隣接地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと
取扱通達P30以下
前記書面調査の(2)イにおいて隣接地所有者に送付した通知書に関し、承認申請者が認識している境界に異議がない旨の返信があった場合には、実地調査において当該者に改めて境界の認識を確認する必要はない。
隣接地所有者へ通知を2回送付しても返信がなかった場合、宛先不明で返送された場合及び異議の内容を具体的に明らかとしなかった場合は、隣接土地の状況を確認し、所有者又は占有者が存在し、聴取が可能な場合は境界に関する認識を聴取するものとする。
隣接土地が更地である場合のように所有者又は占有者に境界の認識を聴取することが困難なときにおいては、承認申請者に当該隣接土地に係る境界の争いの有無を確認するとともに、必要に応じて隣接地所有者や近隣住民に対する事情聴取を実施するものとする。
なお、実地調査において、書面調査では確認することができなかった隣接土地が存在する場合には、当該土地の隣接地所有者の境界に関する認識も調査する必要がある。現地で認識を聴取することができればそれで足り、現地で認識について聴取できない場合には、他の隣接地所有者と同様、境界の認識を確認する通知を改めて送付するものとする。
(2)ポイントまとめ【実地調査編】
場合をわけると、つぎのとおり。
- 通知書に関し「異議がない旨」の返信があった場合
実地調査において当該者に改めて境界の認識を確認する必要はない。 - 通知を2回送付しても返信がなかった場合、宛先不明で返送された場合、異議の内容を具体的に明らかとしなかった場合
隣接土地の状況を確認し、所有者又は占有者が存在し、聴取が可能な場合は境界に関する認識を聴取。
隣接土地が更地である場合のように所有者又は占有者に境界の認識を聴取することが困難なときは、必要に応じて隣接地所有者や近隣住民に対する事情聴取を実施する。
(隣接地所有者のところまで聞きにいかないよね?)
通知書に関し「異議がない旨」の返信があった場合以外のケースで、隣接地所有者からのヒアリングができなかったときには「境界が明らかでない」いうことになる?