法務局における遺言書の保管等に関する法律について(3)

2018年8月13日

1.条文の確認

法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年七月十三日法律第七十三号)

(遺言書情報証明書の交付等)
第九条
次に掲げる者(以下この条において「関係相続人等」という。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言書(その遺言者が死亡している場合に限る。)について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(第五項及び第十二条第一項第三号において「遺言書情報証明書」という。)の交付を請求することができる
一 当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人(・・・)
二 前号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者又はその相続人(・・・)
イ 第四条第四項第三号イ【受遺者】に掲げる者
ロ 民法第七百八十一条第二項の規定により認知するものとされた子(胎内に在る子にあっては、その母)
ハ (・・・)廃除する意思を表示された推定相続人(・・・)又は(・・・)廃除を取り消す意思を表示された推定相続人
ニ 民法第八百九十七条第一項ただし書の規定により指定された祖先の祭祀を主宰すべき者し
ホ (・・・)遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
ヘ 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第二号【遺言信託】に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受益者となるべき者として指定された者若しくは残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者又は同法第八十九条第二項の規定による受益者指定権等の行使により受益者となるべき者
ト 保険法(平成二十年法律第五十六号)第四十四条第一項又は第七十三条第一項の規定による保険金受取人の変更により保険金受取人となるべき者
チ イからトまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
三 前二号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載さ
れた次に掲げる者
イ 第四条第四項第三号ロ【遺言執行者】に掲げる者
ロ 民法第八百三十条第一項の財産について指定された管理者
ハ 民法第八百三十九条第一項の規定により指定された未成年後見人又は同法第八百四十八条の規定により指定された未成年後見監督人
ニ 民法第九百二条第一項の規定により共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、同法第九百八条の規定により遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者又は同法第千六条第一項の規定により遺言執行者の指定を委託された第三者
ホ (・・・)
へ 信託法第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受託者となるべき者、信託管理人となるべき者、信託監督人となるべき者又は受益者代理人となるべき者として指定された者
ト イからへまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
2 前項の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下この条及び次条第一項において「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3 関係相続人等は、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該関係遺言書の閲覧を請求することができる。
4 第一項又は前項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
5 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

2.遺言書情報証明書の交付請求をできる者

(1)相続人や受遺者など

遺言書情報証明書の交付請求をできるものについて。
とくに重要と思われるところについて、抜粋したものが上記。

相続人、受遺者(保管申請書に記載されている人)、遺言書に記載された遺言執行者(保管申請書に記載されている人)など。

(2)交付申請先

第2項で、交付申請をする法務局について規定されていて、「現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官」にもできるというのが素晴らしい!

(3)相続人等への通知

第5項が留意すべき点で、証明書の交付等をした際に、交付等した旨を、(1)相続人、(2)申請書に記載された受遺者、(3)申請書に記載された遺言執行者に、通知がされます。

この規定をみても、送付先の確認のため、保管申請時に受遺者や遺言執行者の住所を証する書面が必要になるような気が。。

また、相続人についても、通知対象者になっているので、たとえば相続人でない受遺者が証明書の請求をする際には、相続関係を証明するための戸籍が必要になる?その場合には、受遺者が被相続人の出生死亡等の戸籍を集める?!(本当に受遺者であるかどうかは、戸籍請求の際には証明しようがないのではないか?)

そうしてみると、公正証書遺言との使い分けが、一層大事になるように思います。

3.遺言書保管事実証明書

(遺言書保管事実証明書の交付)
第十条
何人も、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には遺言書保管ファイルに記録されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第一項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。

こちらは「あなたの関係する遺言書を保管しているよ。」という証明書になるのでしょうか?ちょっとイメージがわかない。。

4.検認手続きが不要!!

(遺言書の検認の適用除外)
第十一条
民法第千四条【遺言書の検認】第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。 

 検認手続きは不要となります。

とはいえ、第9条5項により、相続人、受遺者、遺言執行者に通知がされます。その意味では、保管制度を利用したほうが、通知される対象は広いことに。

5.その他

(1)手数料

(手数料)
第十二条
次の各号に掲げる者は、物価の状況のほか、当該各号に定める事務に要する実費を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
一 遺言書の保管の申請をする者遺言書の保管及び遺言書に係る情報の管理に関する事務
二 遺言書の閲覧を請求する者遺言書の閲覧及びそのための体制の整備に関する事務
三 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する者遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付及びそのための体制の整備に関する事務
2 前項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。

 各申請に際しては、手数料がかかります。
財産価格に比例する内容とはならないかと思いますが、どれくらいの値段設定になるのか気になります。

(2)施行日

(・・・)
附則
この法律は、公布の日から起算して二年を超えない
範囲内において政令で定める日から施行する。

 施行までは、公布から2年。

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