住宅金融支援機構について(不動産登記との関わりから)

1.独立行政法人住宅金融支援機構

(1)住宅金融支援機構の概要

住宅金融支援機構は、正式名称「独立行政法人住宅金融支援機構」という独立行政法人。
住宅ローンの利用を検討する際には、必ずといってよいほど耳にする組織。

1950年に「住宅金融公庫」として設立され、2007年から独立行政法人(承継)となっている。

下記は、住宅金融支援機構のHP。

こちらをみると、買取債権等残高 24兆619億円(令和4年3月31日現在)という驚愕の数字が!
このうち買取債権は18兆5,346億円、貸付金は5兆5,022億円にのぼるとのこと。

いわゆる住宅ローンだけでなく、リバースモーゲージ・住まい再建・マンションストック維持管理に関する取組みもおこなっている。

2022事業年度決算における当期純利益は法人全体で2125億円(利益剰余金は18928億円。)。

(2)根拠法

法人の根拠法は、通則法と個別法の二本立てになっている。

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

(目的等)
第一条 
この法律は、独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項を定め、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)と相まって、独立行政法人制度の確立並びに独立行政法人が公共上の見地から行う事務及び事業の確実な実施を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。
2 各独立行政法人の組織、運営及び管理については、個別法に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

参照条文

独立行政法人住宅金融支援機構法(平成十七年法律第八十二号)

(目的)
第一条 
この法律は、独立行政法人住宅金融支援機構の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めることを目的とする。

(名称)
第三条 
この法律及び独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人の名称は、独立行政法人住宅金融支援機構とする。

ちなみに独立行政法人の一覧は、つぎの総務省HPにおいて確認することができる。

参考記事(外部リンク)

上記総務省HPの「データ集」段落の最上段に「独立行政法人一覧」が掲載されている。

(3)司法書士業務との関わり

抵当権の登記との関係で頻繁に接することとなる。

また独立行政法人の登記については、通則法で次のように定められている。

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

(登記)
第九条 
独立行政法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

通則法9条にいう「政令」とは「独立行政法人等登記令(昭和三十九年政令第二十八号)」である。

2.独立行政法人住宅金融支援機構と「代表権」

(1)独立行政法人通則法における「代表権」に関する規定

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

(役員)
第十八条 
各独立行政法人に、個別法で定めるところにより、役員として、法人の長一人及び監事を置く。
2 各独立行政法人には、前項に規定する役員のほか、個別法で定めるところにより、他の役員を置くことができる。
3 各独立行政法人の法人の長の名称、前項に規定する役員の名称及び定数並びに監事の定数は、個別法で定める。

(役員の職務及び権限)
第十九条 
法人の長は、独立行政法人を代表し、その業務を総理する。
2 個別法で定める役員(法人の長を除く。)は、法人の長の定めるところにより、法人の長に事故があるときはその職務を代理し、法人の長が欠員のときはその職務を行う。
3 前条第二項の規定により置かれる役員の職務及び権限は、個別法で定める。
(・・・)

独立行政法人の代表者は、まずもって「法人の長」である。
この「法人の長」は、主務大臣の任命による(通則法20条)。

また、個別法で定めるところにより他の役員(法人の長一人及び監事以外の役員)を置くことができるが、この役員の職務及び権限は、個別法により定めるとされている。

参照条文

独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)

(代理人の選任)
第二十五条 
法人の長その他の代表権を有する役員は、当該独立行政法人の代表権を有しない役員又は職員のうちから、当該独立行政法人の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

「代理人」に関する規定である。

「法人の長」などの代表権を有する役員は、代表権を有しない役員又は職員のなかから「業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人」を選任できるというもの。

(2)独立行政法人住宅金融支援機構法における「代表権」に関する規定

上記(1)の通則法の規定をふまえて個別法(独立行政法人住宅金融支援機構法)を確認していく。

参照条文

独立行政法人住宅金融支援機構法(平成十七年法律第八十二号)

(役員)
第八条 
機構に、役員として、その長である理事長及び監事三人を置く。
2 機構に、役員として、副理事長一人及び理事六人以内を置くことができる。

(副理事長及び理事の職務及び権限等)
第九条 
副理事長は、理事長の定めるところにより、機構を代表し、理事長を補佐して機構の業務を掌理する。
2 理事は、理事長の定めるところにより、理事長(副理事長が置かれているときは、理事長及び副理事長)を補佐して機構の業務を掌理する。
3 通則法第十九条第二項の個別法で定める役員は、副理事長とする。ただし、副理事長が置かれていない場合であって理事が置かれているときは理事、副理事長及び理事が置かれていないときは監事とする。
4 前項ただし書の場合において、通則法第十九条第二項の規定により理事長の職務を代理し又はその職務を行う監事は、その間、監事の職務を行ってはならない。

というわけで、まず通則法にいう「法人の長」は理事長ということになる。

そして個別法により役員として「副理事長一人」及び「理事六人以内」が置かれている。

副理事長は、個別法9条1項(通則法の根拠は同法19条3項)により、代表権を有している。
(副理事長は業務を「掌理」。理事長は業務を「総理」。)

3.独立行政法人住宅金融支援機構と「代表者」「代理人」に関する登記

(1)代表者

独立行政法人の登記については「独立行政法人等登記令(昭和三十九年政令第二十八号)」を確認する。

参照条文

独立行政法人等登記令(昭和三十九年政令第二十八号)

(設立の登記)
第二条 
独立行政法人等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 名称
二 事務所の所在場所
三 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
四 独立行政法人及び国立大学法人等にあつては、資本金
五 代表権の範囲又は制限に関する定めがある独立行政法人にあつては、その定め
六 独立行政法人北方領土問題対策協会にあつては、基金
七 別表の名称の欄に掲げる法人にあつては、同表の登記事項の欄に掲げる事項

以上により、代表権を有する者の氏名・住所・資格が登記事項となっている。

上記2において、独立行政法人住宅金融支援機構において代表権を有する者の資格は「理事長」「副理事長」となっていた。

実際に、手元にあった独立行政法人住宅金融支援機構の登記情報を確認してみると、「理事長」と「副理事長」が1名ずつ「役員に関する事項」に登記されている。

(2)代理人

また代理人に関しても規定が別に設けられている。

参照条文

独立行政法人等登記令(昭和三十九年政令第二十八号)

(代理人の登記)
第六条 
別表の名称の欄に掲げる法人のうち、同表の根拠法の欄に掲げる法律の規定により主たる事務所又は従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができるものが、当該代理人を選任したときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、代理人の氏名及び住所並びに代理人を置いた事務所を登記しなければならない。
2 独立行政法人及び国立大学法人等が独立行政法人通則法第二十五条(国立大学法人法第三十五条において準用する場合を含む。)の代理人を選任したときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、代理人の氏名及び住所、代理人を置いた事務所並びに代理権の範囲を登記しなければならない。別表の名称の欄に掲げる法人のうち、同表の根拠法の欄に掲げる法律の規定により業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができるものが、当該代理人を選任したときも、同様とする。
3 前二項の規定により登記した事項に変更が生じ、又はこれらの項の代理人の代理権が消滅したときは、二週間以内に、その登記をしなければならない。

独立行政法人住宅金融支援機構は別表への記載はない。

というわけで令6条2項により代理人の登記をする。
登記事項はつぎのとおり。

  • 代理人の氏名及び住所
  • 代理人を置いた事務所
  • 代理権の範囲

「代理権の範囲」については、たとえば「代理人〇〇の代理権の範囲」と題し、その内容として「従たる事務所独立行政法人住宅金融支援機構首都圏支店の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限」と記録されている。

また選任年月日は登記事項になっておらず、他方で解任年月日は登記事項となっている。

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