地方公営企業が不動産を取得した際に、だれが「代表者」となるか。
1.地方公営企業とは
(1)定義
地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)
(この法律の適用を受ける企業の範囲)
第二条
この法律は、地方公共団体の経営する企業のうち次に掲げる事業(これらに附帯する事業を含む。以下「地方公営企業」という。)に適用する。
一 水道事業(簡易水道事業を除く。)
二 工業用水道事業
三 軌道事業
四 自動車運送事業
五 鉄道事業
六 電気事業
七 ガス事業
2 前項に定める場合を除くほか、次条から第六条まで、第十七条から第三十五条まで、第四十条から第四十一条まで並びに附則第二項及び第三項の規定(以下「財務規定等」という。)は、地方公共団体の経営する企業のうち病院事業に適用する。
3 前二項に定める場合のほか、地方公共団体は、政令で定める基準に従い、条例(・・・)で定めるところにより、その経営する企業に、この法律の規定の全部又は一部を適用することができる。
「企業」というのは、要するに「事業の企て」。
法人格を有するわけではない。
地方公営企業は、地方公共団体の活動を「一般行政事務」と「公営企業」に分別し、後者について規律しようとするもの。
一般行政事務 | 公営企業 |
経費は権力的に賦課徴収される租税によって賄われる。 | 提供する財貨又はサービスの対価である料金収入によって維持される。 |
教育・社会福祉・土木・消防など | 上下水・公共輸送・医療など |
行政サービスのうち、サービス利用の有無にかかわらず住民全員で経費負担すべきものが前者で、公共性はあるけれどサービス利用の多寡によって経費負担の量を変えるべきものが後者といえるのだろうか。
(2)わかりやすくいうと
(3)静岡県における地方公営企業

(1)法人格を有しない「事業」の総体
(2)ただし会計上の独立性を有し、意思決定についても特殊。
2.地方公営企業の組織形態
(1)管理者の設置
第二章 組織
(管理者の設置)
第七条
地方公営企業を経営する地方公共団体に、地方公営企業の業務を執行させるため、第二条第一項の事業ごとに管理者を置く。ただし、条例で定めるところにより、政令で定める地方公営企業について管理者を置かず、又は二以上の事業を通じて管理者一人を置くことができる。なお、水道事業(簡易水道事業を除く。)及び工業用水道事業を併せて経営する場合又は軌道事業、自動車運送事業及び鉄道事業のうち二以上の事業を併せて経営する場合においては、それぞれ当該併せて経営する事業を通じて管理者一人を置くことを常例とするものとする。
(2)管理者の権限
(管理者の地位及び権限)
第八条
管理者は、次に掲げる事項を除くほか、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する。ただし、法令に特別の定めがある場合は、この限りでない。
一 予算を調製すること。
二 地方公共団体の議会の議決を経るべき事件につきその議案を提出すること。
三 決算を監査委員の審査及び議会の認定に付すること。
四 地方自治法第十四条第三項並びに第二百二十八条第二項及び第三項に規定する過料を科すること。
2 第七条ただし書の規定により管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う。
(管理者の担任する事務)
第九条
管理者は、前条の規定に基いて、地方公営企業の業務の執行に関し、おおむね左に掲げる事務を担任する。
一 その権限に属する事務を分掌させるため必要な分課を設けること。
二 職員の任免、給与、勤務時間その他の勤務条件、懲戒、研修及びその他の身分取扱に関する事項を掌理すること。
三 予算の原案を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
四 予算に関する説明書を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
五 決算を調製し、地方公共団体の長に提出すること。
六 議会の議決を経るべき事件について、その議案の作成に関する資料を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
七 当該企業の用に供する資産を取得し、管理し、及び処分すること。
八 契約を結ぶこと。
九 料金又は料金以外の使用料、手数料、分担金若しくは加入金を徴収すること。
十 予算内の支出をするため一時の借入をすること。
十一 出納その他の会計事務を行うこと。
十二 証書及び公文書類を保管すること。
十三 労働協約を結ぶこと。
十四 当該企業に係る行政庁の許可、認可、免許その他の処分で政令で定めるものを受けること。
十五 前各号に掲げるものを除く外、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則によりその権限に属する事項
3.登記申請との関係
というわけで
(1)から、登記名義人は「地方公共団体そのもの」となるが、
(2)から、申請権限が、当該企業の「管理者」となる。