裁判上の和解調書による登記

2020年12月24日

1.裁判上の和解とは

民事訴訟法(平成八年法律第百九号)
第二百六十七条
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。  

民事執行法(昭和五十四年法律第四号)
第百七十七条
意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第二十七条第一項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は第三項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。
2 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。

2.不動産登記における単独申請の可否

確定判決における「登記手続きをせよ」との文言に対応して、「登記手続きをする」との文言にする必要があり、「登記書類を交付する」では単独申請はできない(参照:昭和56年9月8日付民三第5483号民事局第三課長回答)。 

不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
第六十三条
第六十条【共同申請】・・・の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 ・・・

3.執行文の要否

原則として不要であるが、登記手続きを命じる条項の文言だけでなく、和解調書全体の記載から判断される。
参照:(要する)登記インターネット3巻12号177P。和解調書の記載が、1項において所有権の確認、2項において売買契約の成立、3項において代金の支払い、4項において登記文言、5項において3項の支払いが履行されないときには2項の売買は解除される、と順番に記載されていた。4項は、とくに3項等を条件せず、2項による売買を原因として登記するとの内容になっていた。条件は付されていないものの、全体(とりわけ5項)をみれば、代金の支払いをもって登記の意思表示がなされるものと解釈し、執行文を必要と判断した。
参照2:(要しない)登記研究385号81頁。和解調書の記載が、1項において被告は原告に対して年月日財産分与を原因として所有権移転登記をする、2項において原告は被告に対して金○○百万円を年月日限り支払う、というもの。理由付けははっきりとしていないが、原則的に財産分与は対価性のある行為ではないから、特段の記載がない限り2項が条件であるとは読み取れないということか?