登記の際の漢字(外字・異体字)について【その1】

2023年2月7日

1.正字・外字・異体字(正しい漢字とは?)

(1)はじめに

まずはじめに断っておかなければならないのは、筆者は、この記事で主として言及する「漢字・文字情報・情報システム」の専門家ではないということです。
加えて、この記事では「文字情報としての登記」という観点から登記実務を眺めていくのですが、この点についても勉強不足な状態です。

以上の前置き(言い訳)をご了承の上、下記、ご参照ください。

(2)正字・異体字・外字の定義

外字・異体字の検討にあたっては、異体字の対義語である正字も含めた、定義の確認が必要となるでしょう。

素人ながら、正字・外字・異体字を定義すると、つぎのとおりだと考えます。

  • 「正字」
    正しい字体・正しい字形で表記された漢字
  • 異体字
    正字ではないけれど、誤字ではなく、正字と同じ意味を持つ字体の異なる漢字
    (「誤字」というのは、字体・字形を誤った漢字のこと。)
  • 外字
    利用する文字集合において文字コードが割り振られていない漢字
    (漢字だけでなく、変体仮名なども含む。)

順序だてて考えてみると、つぎのように整理できます。

  1. 正しい字体・字形を理解する。
  2. 正字ではないものの、許容される「異体字」を理解する。
  3. 正字でも異体字でもないものが「誤字」である。

そして、正字・異体字の話と、「外字」の話はまた別の次元の話ということになります。
外字かどうかは「特定の文字集合において文字コードが割り振られているか否か」ということであり、文字の正しさとは関係はないからです。

もちろん、文字集合の作成にあたって、ある文字にコードを割り振るかどうかの基準としては、正字・異体字・誤字というのは重要な指標にはなるのでしょう。

(3)「正しい字体」とは何か?

こうしてみると「異体字」を理解するにあたっては、結局「なにが正字なのか」が重要であるように思います。
しかしながら、何を基準として「正字」(正しい字)というのかは不分明です。

2.「康煕字典」の役割

(1)登記先例・戸籍先例における言及

登記実務・戸籍実務の先例を見ていると「康煕字典」という言葉が頻出します。

平成6年11月16日民二第7007号通達

【要約】

三 本表において正字等(以下「上段の字体」という。)とは、次に掲げる字体のことである。

①常用漢字表の通用字体

②人名用漢字別表に掲げる字体

③常用漢字表の①以外の康煕字典体、人名用漢字別表の②以外の康煕字典体及びその他の漢字の康煕字典体あるいはその他の漢和辞典において正字とされている字体

(・・・)

平成6年11月16日民二第7007号通達を要約抜粋

(2)康煕字典とは何ぞや?

上記先例を見ても、正しい字体か否かの判別をするにあたり「康煕字典」体であるか否かが重要となりそうです。
常用漢字表や人名用漢字別表と同等の取扱いを受けています。

どういった書物かということは、下記リンク先のWikipediaをご参照ください。

参考記事(外部リンク)

ポイントとなるのは、康煕字典そのものが「木版によって印刷」された字書であり、かつ「金属活字開発において正字の規範」とされていたことです。
(カッコ内は上記Wikipediaより引用。)

(3)康煕字典を気軽に確認できる?

とはいえ、康煕字典って現物を見たことない・・・。

そう思ってインターネットで検索してみると、そもそも一般の漢和辞典のように一般に入手可能な状態にはないことがわかります。

参考記事(外部リンク)
Amazon.co.jp: 康煕字典

なお、国立国会図書館のデジタルアーカイブで検索をすると、再版・訂正版などが確認できます。
当然ながら、中国(清王朝・康熙帝のとき)で編纂された辞書なので、漢字オンリーです。

これをみると、はたして登記実務における「正しさを判断する際の基準」足りうるのか疑問を感じます。
(これから申請しようとする際に、ある漢字が正字か誤字かを確認するときに、どのように康煕字典を確認すれば良いのでしょうか?)

参考記事(外部リンク)

3.コンピューター化と正字・異体字・外字

次の記事つづく。

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