常用漢字について

2023年9月9日

1.現在の常用漢字に至るまで

(1)おおまかな流れ

1923年(大正12年)に最初の「常用漢字」表が策定される。

幾度かの改定。

1946年(昭和21年)に「当用漢字」表が策定される。

幾度かの改定。

1981年(昭和56年)に「常用漢字」表が策定される。

2010年(平成22年)に「改定常用漢字表」が策定される。

(2)常用漢字表、当用漢字表について

いずれも文化庁HPにおいて確認することができる。

参考記事(外部リンク)

2.漢字表の目的・役割

(1)当用漢字表では(使用範囲を示すものとして)

当用漢字表においては「まえがき」で、つぎのように記載されている。

1  この表は,法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で,使用する漢字の範囲を示したものである。

1  この表は,今日の国民生活の上で,漢字の制限があまり無理がなく行われることをめやすとして選んだものである。

(・・・)

さらには「使用上の注意事項」として、つぎのように記載されている。

イ   この表の漢字で書きあらわせないことばは,別のことばにかえるか,または,かな書きにする。
ロ   代名詞・副詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞は,なるべくかな書きにする。
(・・・)
ヘ   あて字は,かな書きにする。
ト   ふりがなは,原則として使わない。
(・・・)

漢字使用に対する「制限」が意識されている。

(2)常用漢字表では(国語表記の目安として)

常用漢字表においては「前書き」(「まえがき」ではない!)で、つぎのように記載されている。

1 この表は,法令,公⽤⽂書,新聞,雑誌,放送など,⼀般の社会⽣活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すものである。
2 この表は,科学,技術,芸術その他の各種専⾨分野や個々⼈の表記にまで及ぼそうとするものではない。ただし,専⾨分野の語であっても,⼀般の社会⽣活と密接に関連する語の表記については,この表を参考とすることが望ましい
3 この表は,都道府県名に⽤いる漢字及びそれに準じる漢字を除き,固有名詞を対象とするものではない
4 この表は,過去の著作や⽂書における漢字使⽤を否定するものではない。
5 この表の運⽤に当たっては,個々の事情に応じて適切な考慮を加える余地のあるものである。

「目安」であって「制限」ではない。

とはいえ、「子の名に使用できる文字」(使用できる文字を制限)では、使用可能な文字種の1つとして列挙されている。
【参照記事:子の名に用いることのできる漢字(文字)】

(3)改定常用漢字表に関連して

改定常用漢字表の作成は、平成17年3月30日の文部科学大臣諮問に基づくものである。
そこでは、つぎの点を考慮し、常用漢字表の再検討をすることが求められていた。

  • パソコンや携帯電話などの情報機器の普及が漢字使用に大きな影響を与えていること。
    (機器のサポートによって利用できる漢字の数が増大するなかで、言語生活の円滑化が重要となってくる。)
  • JIS漢字との関係性
    (JIS第4水準までの漢字数は10050字。大量の漢字が利用しやすい環境にあって「漢字の多様化傾向」が認められる。そうした状況においては、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安の意義が高まっている。)
  • 情報機器の広範な普及により「手書きをする機会」が確実に減少する中で、漢字を手で書くことをどのように位置づけるか。
    (漢字を手書きすることは、漢字を正確に弁別し、的確に運用する能力を形成するためには欠かせない。)
    (手書き自体が、日本の文化として極めて大切なものである。)

上記カッコ内は平成22年6月7日付での文化審議会答申から抜粋した。

参考記事(外部リンク)
国の国語施策について紹介する報告・答申・建議等(文化審議会 国語分科会 国語課題小委員会)を公開しました。

上記ページ内に「『改定常用漢字表(答申)』(平成22年6月7日)」が掲載されている。

3.現在の「常用漢字表」から

本表(字種2136字を掲げ、字体・音訓・語例等を示す。)や付表(いわゆる当て字や熟字訓を語の形で掲載。)もさることながら、その他の記述もおもしろい。
その一部をご紹介。

(1)字体について

字体を「文字の骨組み」と定義している。
表中では、明朝体のうちの一種を例に用いて「印刷文字における現代の通用字体」を示している。

「字体」や「字形」などの語の定義については、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)(平成28年2月29日)」に記載がある。

【参照記事:「常用漢字表の字体・字形に関する指針」について】

(2)字体の許容

「しんにゅう/しょくへん」に関係する字のうち,「辶/𩙿」の字形が通用字体である字については,「辶/飠」の字形を角括弧に入れて許容字体として併せ示した。
当該の字に関して,現に印刷文字として許容字体を用いている場合,通用字体である「辶/𩙿」の字形に改める必要はない。

そもそも「しんにょう」ではないことに驚いた。
また「しんにゅう」については、戸籍に関連する「平成2年10月20日民二第5200号通達」でも言及されており、昔からよく言われるものなのかと感じた。

(3)字体についての解説(第1 明朝体のデザインについて)

上記(1)で確認した通り、常用漢字表においては「明朝体のうちの一種」を例として字形を示している。

そして「字形」というのは様々であって、明朝体1つをとっても、同じ字でありながら細かなところで形の相違が見られるものがある。
(わかりやすい例としては、漢字の「八」。
「ハ」のようなデザインとなるものもあれば、上記のように富士山みたいな形のものもある。)

これらは、字形の違いはあっても、それは書体設計上の表現の差(すなわちデザインの違い)にすぎず、「字体の違い」ではないといえる。

とはいえ、形の違いが「デザインの差」に過ぎないのか、字体の違いに及ぶものであるのかは、素人には判別しづらいものである。

(4)字体についての解説(第2 明朝体と筆写の楷書との関係について)

印刷文字と手書き文字とのあいだには、書き方の習慣による字形の差がある。
(具体的な字形で確認するのが手っ取り早いと思うので、ぜひ常用漢字表を確認いただきたい。)

この差異は、字体の違いには及ばないものと、字体の違いに及ぶものがあるとされる。

字体の違いに及ぶものの例として「溺」という漢字が例に挙げられている。
「溺」を手書きする際に、「さんずい+弱」と書くケースがあり(自分もそう書くと思う)、それは字体の違いに及ぶとされている。

4.まとめ

以上が、常用漢字(常用漢字表)に関する、自分なりのまとめである。

「字体」「字形」の使い分けなど、理解不十分な箇所が多いが、今後も知識をブラッシュアップしていきたい。

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