目次
1.物権とは
物権とは、特定の物を支配することができる権利。
(⇔債権とは、特定の人に特定の行為を請求できる権利。)
そのため、物権には絶対性と排他性がある。
- 絶対性:誰にでも主張ができる。
- 排他性:同じ物に同じ内容の物権が並立することはない。
さらに物権は、民法その他の法律に定めるもののほか、創設することができない(物権法定主義)。
2.民法における「物権」
(1)物権の創設
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(物権の創設)
第百七十五条
物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
「その他の法律」としては、例えば、つぎのようなものがある。
採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)
(内容及び性質)
第四条
採石権者は、設定行為をもつて定めるところに従い、他人の土地において岩石及び砂利(砂及び玉石を含む。以下同じ。)を採取する権利を有する。
2 採石権は、その内容が地上権又は永小作権による土地の利用を妨げないものに限り、これらの権利の目的となつている土地にも、設定することができる。但し、地上権者又は永小作権者の承諾を得なければならない。
3 採石権は、物権とし、地上権に関する規定(民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十九条の二(地下又は空間を目的とする地上権)の規定を除く。)を準用する。
漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)
(漁業権の性質)
第七十七条 漁業権は、物権とみなし、土地に関する規定を準用する。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二編第九章【質権】の規定は個別漁業権に、同編第八章から第十章までの規定は団体漁業権に、いずれも適用しない。
「採石権」は「物権」であるが、「漁業権」は「物権とみなされる権利」となっている。
(2)物権の種類
民法の章タイトルを抜粋すると、つぎのとおり。
- 第二章 占有権
- 第三章 所有権
- 第四章 地上権
- 第五章 永小作権
- 第六章 地役権
- 第七章 留置権
- 第八章 先取特権
- 第九章 質権
- 第十章 抵当権
このほか、章立てはされていないが「入会権」(民法263条、294条)も規定されている。
そして「根抵当」は、民法上つぎのように定義されている。
民法(明治二十九年法律第八十九号)
第十章 抵当権
第四節 根抵当
(根抵当権)
第三百九十八条の二
抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
(・・・)
根抵当権は、抵当権の一種ということになっている。
3.不動産登記法における「物権」
(1)登記できる物権
不動産登記法3条(登記することができる権利等)においては、つぎの物権が列挙されている。
- 所有権
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 先取特権
- 質権
- 抵当権
- 採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)による)
民法に定められた物権のうち「占有権」「留置権」「入会権」は、登記できない物権とされている。
(2)登記できる権利
不動産登記法3条(登記することができる権利等)に列挙されている権利のうち、物権を除くと、つぎのとおりである。
- 賃借権
- 配偶者居住権
このほか買戻特約(買戻権?)も登記可能。
4.根抵当権と根質権は?
(1)民法において
上記2(2)において掲載した条文のとおり。
根抵当権は、抵当権の一種として規定されている(398条の2以下)。
根質権について民法上の明文規定はない。
(2)不動産登記法において
根抵当権については、つぎのような規定の仕方をされている。
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(抵当権の登記の登記事項)
第八十八条
抵当権(根抵当権(民法第三百九十八条の二第一項の規定による抵当権をいう。以下同じ。)を除く。)の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
(・・・)
2 根抵当権の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第一号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
(・・・)
「抵当権」という語には「根抵当権」も含むことを当然の前提として、不動産登記法88条では「根抵当権を除く抵当権」という規定をしている。
根質権については、不動産登記法では規定されていないが、不動産登記規則や不動産登記令では規定がある。
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)
(付記登記)
第三条
次に掲げる登記は、付記登記によってするものとする。
(・・・)
二 次に掲げる登記その他の法第六十六条に規定する場合における権利の変更の登記又は更正の登記
(・・・)
ハ 民法第三百九十八条の十二第二項(同法第三百六十一条において準用する場合を含む。)に規定する根質権又は根抵当権を分割して譲り渡す場合においてする極度額の減額による変更の登記
(・・・)
不動産登記令は引用しないが「別表(第三条、第七条関係)」の47項の登記欄は「根質権の設定の登記」である。