戸籍法と職務上請求と司法書士法人

1.職務上請求

(1)条文

参照条文

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

第十条の二 
(・・・)
③ 第一項の規定にかかわらず(・・・)司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)(・・・)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
④ 第一項及び前項の規定にかかわらず(・・・)司法書士(・・・)は、受任している事件について次に掲げる業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該事件の種類、その業務として代理し又は代理しようとする手続及び戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならない。
(・・・)
二 司法書士にあつては、司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第三号及び第六号から第八号までに規定する代理業務(同項第七号及び第八号に規定する相談業務並びに司法書士法人については同項第六号に規定する代理業務を除く。)
(・・・)
⑥ 前条第三項の規定は、前各項の請求をしようとする者について準用する。

第十条 
(・・・)
③ 第一項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。

(2)確認したいこと

論点はいろいろあると思うが「法人の登記事項証明書」の添付の要否について確認したい。

個人たる司法書士が請求する場合には「会員証の写し」を添付すればOKなのに、なぜに司法書士法人になると「法人の登記事項証明書」原本を添付する必要があるのか?
(さらに、これを原本還付してもらうためには「相違ない」謄本を提出しなければならない!)

2.職務上請求をするときの添付書類

(1)総則的な規定の確認

参照条文

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

第十条の三 
第十条第一項又は前条第一項から第五項までの請求をする場合において、現に請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により、当該請求の任に当たつている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならない。

参照条文

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

第十一条の二 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
(・・・)
四 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類又は弁護士、司法書士(・・・)(以下「弁護士等」という。)若しくは弁護士等の事務を補助する者であることを証する書類で写真をはり付けたものを提示し、弁護士等の所属する会が発行した戸籍謄本等の交付を請求する書面(以下「統一請求書」という。)に当該弁護士等の職印が押されたものによつて請求する方法
五 戸籍法第十条第三項(同法第十条の二第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき戸籍謄本等の送付の請求をする場合には、次に掲げる方法
(・・・)
ハ 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類又は弁護士等であることを証する書類の写し及び統一請求書に弁護士等の職印が押されたものを送付し、当該弁護士等の事務所の所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法。ただし、弁護士等の所属する会が会員の氏名及び事務所の所在地を容易に確認することができる方法により公表しているときは、第一号に掲げる書類及び弁護士等であることを証する書類の写しの送付は、要しない。

(2)個人事務所の司法書士

まずは市役所等に赴いて請求する場合。

参照条文

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

第十一条の二 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
(・・・)
四 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類【運転免許証など】又は弁護士、司法書士(・・・)(以下「弁護士等」という。)若しくは弁護士等の事務を補助する者であることを証する書類で写真をはり付けたものを提示し、弁護士等の所属する会が発行した戸籍謄本等の交付を請求する書面(以下「統一請求書」という。)に当該弁護士等の職印が押されたものによつて請求する方法

つぎに郵送により請求する場合

参照条文

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

第十一条の二 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
(・・・)
五 戸籍法第十条第三項(同法第十条の二第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき戸籍謄本等の送付の請求をする場合には、次に掲げる方法
(・・・)
ハ 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類【運転免許証など】又は弁護士等であることを証する書類の写し及び統一請求書に弁護士等の職印が押されたものを送付し、当該弁護士等の事務所の所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法。ただし、弁護士等の所属する会が会員の氏名及び事務所の所在地を容易に確認することができる方法により公表しているときは、第一号に掲げる書類及び弁護士等であることを証する書類の写しの送付は、要しない

(3)法人事務所の司法書士

項をわけたが、戸籍法10条の2において「司法書士(司法書士法人を含む。・・・)」とされているのだから、以上までの規定は司法書士法人にも適用されるものであるはず。

では、なぜ司法書士法人の場合には、これに加えて「法人の登記事項証明書」の添付が必要になるのだろうか?

参照条文

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

第十条の三 
第十条第一項又は前条第一項から第五項までの請求をする場合において、現に請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により、当該請求の任に当たつている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならない。
② 前項の場合において、現に請求の任に当たつている者が、当該請求をする者(前条第二項の請求にあつては、当該請求の任に当たる権限を有する職員。以下この項及び次条において「請求者」という。)の代理人であるときその他請求者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、法務省令で定める方法により、請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しなければならない。

「法人の登記事項証明書」の添付が必要になるのは、戸籍法10条の3の第2項による。
(法人の場合には、法人の代表者という「法人の代理人」が請求するから?)

「明らかにすべき事項」は具体的には下記のとおり。

参照条文

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

第十一条の三 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める事項は、氏名及び住所又は生年月日とする。ただし、次の各号の請求をする場合には、それぞれ当該各号に定める事項とする。
一 戸籍法第十条の二第二項の請求 氏名及び所属機関、住所又は生年月日
二 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求 氏名及び住所、生年月日又は請求者の事務所の所在地

第十一条の四 
戸籍法第十条の三第二項の法務省令で定める方法は、委任状、法人の代表者又は支配人の資格を証する書面その他の現に請求の任に当たつている者に戸籍謄本等の交付の請求をする権限が付与されていることを証する書面を提供する方法とする。
② 前項に掲げる書面で官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のものに限る

規則11条の3の第2号の規定は、つぎのように読むのか?

  • 氏名
  • 住所・生年月日・事務所所在地のいずれか

そして法人にあっては、規則11条の4により、請求にあたり次の情報を提供する必要がある。

  • 法人代表者の資格を証する書面
  • 上記は通常は「官庁又は公署の作成したもの」であるから、作成後3カ月以内のもの

そして提出した書面について、原本還付を求める場合には、次の規定が適用となる。

参照条文

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

第十一条の五 
戸籍謄本等(戸籍法第百二十条第一項の書面を含む。)の交付の請求(以下この条において「交付請求」という。)をした者は、当該交付請求の際に提出した書面の原本の還付を請求することができる。ただし、当該交付請求のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
② 前項本文の規定による原本の還付の請求(以下この条において「原本還付請求」という。)をする者は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
③ 市町村長は、原本還付請求があつた場合には、交付請求に係る審査の完了後、当該原本還付請求に係る書面の原本を還付しなければならない。この場合には、前項の謄本と当該原本還付請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、同項の謄本に原本還付の旨を記載しなければならない。
④ 前項前段の規定にかかわらず、市町村長は、偽造された書面その他の不正な交付請求のために用いられた疑いがある書面については、これを還付することができない。
⑤ 第三項の規定による原本の還付は、その請求をした者の申出により、原本を送付する方法によることができる。

つまり、原本還付にあたっては、請求者側はつぎのような作業が必要となる。

  • 原本の還付の請求をすること。
  • 請求にあたっては、「原本と相違ない」旨を記載した謄本を提出すること。
    (請求者名の署名や記名押印に関する指示はないが、後記新宿区HPの記載を参照のこと。)

参照までに商業登記や不動産登記における原本還付規定について

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3.司法書士であることの確認方法

(1)司法書士連合会のホームページ

上記にて、たとえば筆者の所属している「司法書士法人貝原事務所」を検索してもらえれば代表社員の氏名と事務所所在地を確認することができる。

そもそも、この連合会HPでの会員情報の公表措置は、規則11条の2の第5号ハに記載する「所属する会が会員の氏名及び事務所の所在地を容易に確認することができる方法により公表しているとき」に該当するように思われる。
(後述の新宿区役所HPにおいても資格者情報については「ホームページ等で・・・確認できる場合は不要」との記載がある。)

「司法書士法人において確認を要する『代表者の資格を有すること』についても連合会HPで確認できると言えるのではないか?」とも思えるのだが、このように緩く戸籍法令を解釈する方向性は許されないだろう。

(2)新宿区役所の案内

しっかりと「法人の代表者の資格証明書の原本(発行後3か月以内)」と案内されている。
ご丁寧に、原本還付に関する説明もなされている。

(3)戸籍請求が電子化されたらどうなるのだろうか?

この場合には、代表者が請求にあたり電子署名(法人代表者としての)すればクリアか?
はやく電子化されてほしいものである。