戸籍の請求と送付先住所の関係

2022年7月17日

1.ふと疑問に思ったこと

後見登記事項証明書において「住所」として「事務所住所」が登記されている。

後見人の職務として、職務上請求書を利用せず、戸籍の郵送請求をした場合に、発行された戸籍の送付先はどこに送付するのが適切なのか?

なお、職務上請求書を利用すべきか否か、後見登記における「住所」に事務所住所を登録して良いか否か、については検討の対象外とする。
(戸籍関係の通達についてもチェックしていない)

2.条文(その1)

昭和二十二年法律第二百二十四号
戸籍法
第十条 
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(・・・)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
② 市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
③ 第一項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。

戸籍謄本等の請求をすることのできる者について定めた原則的な条文。
1項は「範囲」。いわゆる本人請求について。
2項は、かりに請求権者であっても、目的が不当である場合には、発行する市町村の判断で拒否できる旨。
3項は、郵送でも請求可能である旨。なお、第3項にいう「法務省令」は、つぎのとおり

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)
第十一条 
戸籍法第十条第三項(同法第十条の二第六項、第十二条の二及び第四十八条第三項において準用する場合を含む。)の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする
一 郵便
二 民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者又は同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便

3.条文(その2)

第十条の二 
前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
② 前項の規定にかかわらず、国又は地方公共団体の機関は、(・・・)
③ 第一項の規定にかかわらず、弁護士(・・・ここに司法書士も含まれている。・・・)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
④ 第一項及び前項の規定にかかわらず、弁護士(・・・ここに司法書士も含まれている。・・・)は、受任している事件について次に掲げる業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該事件の種類、その業務として代理し又は代理しようとする手続及び戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならない。
一 弁護士にあつては、裁判手続又は裁判外における民事上若しくは行政上の紛争処理の手続についての代理業務(弁護士法人については弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第三十条の六第一項各号に規定する代理業務を除く。)
(・・・)
⑤ 第一項及び第三項の規定にかかわらず、弁護士は、刑事に関する事件(・・・)
⑥ 前条第三項の規定は、前各項の請求をしようとする者について準用する。

1項は、第三者請求の原則として、3つの要件のうちいずれかを備えていること、また要件ごとに請求にあたって明示しなければいけない事項を規定している。
(1)自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
(2)国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合
(3)前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合

2項については省略。

3項については、司法書士もその中に含まれている「職務上請求」について。
職務上請求も、第三者からの請求となるが、すこし特殊な地位を与えられている。
とはいえ「当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにして」とある点には注意が必要。

4項は代理業務に関する職務上請求について。3項とは異なり、「当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項」は不要に。

5項については省略。

6項は、職務上請求を含む第三者請求においても、本人請求と同様に郵送等による請求ができることを示す。

4.条文(その3)

第十条の三 
第十条第一項又は前条第一項から第五項までの請求をする場合において、現に請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により、当該請求の任に当たつている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならない。
② 前項の場合において、現に請求の任に当たつている者が、当該請求をする者(前条第二項の請求にあつては、当該請求の任に当たる権限を有する職員。以下この項及び次条において「請求者」という。)の代理人であるときその他請求者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、法務省令で定める方法により、請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しなければならない。

1項は、請求する者に対して、特定の方法により特定の事項を明示することが求められている。詳しくは法務省令で定められている。
「方法」は長いので、「事項」のみをここで確認。

第十一条の三 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める事項は、氏名及び住所又は生年月日とする。ただし、次の各号の請求をする場合には、それぞれ当該各号に定める事項とする。
一 戸籍法第十条の二第二項【国又は地方公共団体の機関】の請求 氏名及び所属機関、住所又は生年月日
二 戸籍法第十条の二第三項から第五項まで【いわゆる職務上請求】の請求 氏名及び住所、生年月日又は請求者の事務所の所在地

第三者請求の場合には、原則として「氏名及び住所又は生年月日」を明示しないといけない。
これが職務上請求の場合には、「氏名及び住所、生年月日又は請求者の事務所の所在地」となる。

2項は、現に請求の任に当たつている者が請求をする場合の代理人である場合には、依頼又は法令の規定により請求の任に当たつていることを、法務省令で定める方法により明らかにしなければならない。

5.条文(その4)

規則
第十一条の二 
戸籍法第十条の三第一項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
一 戸籍法第十条第一項、第十条の二第一項又は第二項の請求をする場合には、(・・・)国若しくは地方公共団体の機関が発行した身分証明書で写真を貼り付けたもののうち、いずれか一以上の書類を提示する方法
二 戸籍法第十条第一項又は第十条の二第一項の請求をする場合において、前号に掲げる書類を提示することができないときは、イに掲げる書類のいずれか一以上の書類及びロに掲げる書類のいずれか一以上の書類を提示する方法(ロに掲げる書類を提示することができない場合にあつては、イに掲げる書類のいずれか二以上の書類を提示する方法)
イ 国民健康保険、健康保険、船員保険若しくは介護保険の被保険者証、共済組合員証、国民年金手帳、国民年金、厚生年金保険若しくは船員保険に係る年金証書、共済年金若しくは恩給の証書、戸籍謄本等の交付を請求する書面に押印した印鑑に係る印鑑登録証明書又はその他市町村長がこれらに準ずるものとして適当と認める書類
ロ 学生証、法人が発行した身分証明書(国若しくは地方公共団体の機関が発行したものを除く。)若しくは国若しくは地方公共団体の機関が発行した資格証明書(第一号に掲げる書類を除く。)で、写真をはり付けたもの又はその他市町村長がこれらに準ずるものとして適当と認める書類
三 戸籍法第十条第一項又は第十条の二第一項の請求をする場合において、前二号の方法によることができないときは、当該請求を受けた市町村長の管理に係る現に請求の任に当たつている者の戸籍の記載事項について当該市町村長の求めに応じて説明する方法その他の市町村長が現に請求の任に当たつている者を特定するために適当と認める方法
四 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類又は弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士若しくは行政書士(以下「弁護士等」という。)若しくは弁護士等の事務を補助する者であることを証する書類で写真をはり付けたものを提示し、弁護士等の所属する会が発行した戸籍謄本等の交付を請求する書面(以下「統一請求書」という。)に当該弁護士等の職印が押されたものによつて請求する方法
五 戸籍法第十条第三項(同法第十条の二第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき戸籍謄本等の送付の請求をする場合には、次に掲げる方法
イ 戸籍法第十条第一項又は第十条の二第一項の請求をする場合には、第一号若しくは第二号イに掲げる書類のいずれか一以上の写しを送付し、当該書類の写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法戸籍の附票の写し若しくは住民票の写しを送付し、これらの写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法又は当該請求を受けた市町村長の管理に係る現に請求の任に当たつている者の戸籍の附票若しくは住民票に記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法。ただし、請求者が法人である場合には、次に掲げる方法によるものとする。
(1) 法人の代表者又は支配人が現に請求の任に当たつているときは、第一号若しくは第二号イに掲げる書類のいずれか一以上の写しを送付し、法人の代表者若しくは支配人の資格を証する書面に記載された当該法人の本店若しくは支店(現に請求の任に当たつている者が支配人であるときは、支店に限る。)の所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法
(2) 法人の従業員が現に請求の任に当たつているときは、第一号若しくは第二号イに掲げる書類のいずれか一以上の写し及びその所属する法人の営業所若しくは事務所等の所在地を確認することができる書類を送付し、当該所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法
ロ 戸籍法第十条の二第二項の請求をする場合には、当該請求をする国又は地方公共団体の機関の事務所の所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法
ハ 戸籍法第十条の二第三項から第五項までの請求をする場合には、第一号に掲げる書類又は弁護士等であることを証する書類の写し及び統一請求書に弁護士等の職印が押されたものを送付し、当該弁護士等の事務所の所在地を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法。ただし、弁護士等の所属する会が会員の氏名及び事務所の所在地を容易に確認することができる方法により公表しているときは、第一号に掲げる書類及び弁護士等であることを証する書類の写しの送付は、要しない

ここで郵送請求に関する規定が、5号イ。

「第一号若しくは第二号イに掲げる書類のいずれか一以上の写しを送付し、当該書類の写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法、戸籍の附票の写し若しくは住民票の写しを送付し、これらの写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法又は当該請求を受けた市町村長の管理に係る現に請求の任に当たつている者の戸籍の附票若しくは住民票に記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法。」

郵送による場合には、請求した戸籍謄本等は「本人確認書類に記載された現住所」を送付すべき場所として指定しなければならない。

話は逸れるが、職務上請求の時には、5号ハを見ると、会員証や登記事項証明書の写しを送付する必要はないように思える(司法書士の連合会や単位会が会員住所をHP上で公開している。「容易に確認」できないと反論されるのか?)。

6.条文(その5)

第十一条の四 
戸籍法第十条の三第二項の法務省令で定める方法は、委任状、法人の代表者又は支配人の資格を証する書面その他の現に請求の任に当たつている者に戸籍謄本等の交付の請求をする権限が付与されていることを証する書面を提供する方法とする。
② 前項に掲げる書面で官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のものに限る。

現に請求の任に当たつている者と請求者が相違する場合(職務上請求の含む)の場合には「戸籍謄本等の交付の請求をする権限が付与されていることを証する書面」を提供しなければならない。
これはコピーではだめで、かつ「官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のもの」でなければならない。。。

(でも、これって司法書士法人の代表者名で郵送請求する場合には該当しないのではないか・・・)

そして原本還付を請求する場合には、つぎの条項。。。

第十一条の五 
戸籍謄本等(戸籍法第百二十条第一項の書面を含む。)の交付の請求(以下この条において「交付請求」という。)をした者は、当該交付請求の際に提出した書面の原本の還付を請求することができる。ただし、当該交付請求のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
② 前項本文の規定による原本の還付の請求(以下この条において「原本還付請求」という。)をする者は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
③ 市町村長は、原本還付請求があつた場合には、交付請求に係る審査の完了後、当該原本還付請求に係る書面の原本を還付しなければならない。この場合には、前項の謄本と当該原本還付請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、同項の謄本に原本還付の旨を記載しなければならない。
④ 前項前段の規定にかかわらず、市町村長は、偽造された書面その他の不正な交付請求のために用いられた疑いがある書面については、これを還付することができない。
⑤ 第三項の規定による原本の還付は、その請求をした者の申出により、原本を送付する方法によることができる。

ちゃんと「原本と相違ない旨を記載した謄本を提出」しましょう!

第十条の四 
市町村長は、第十条の二第一項から第五項までの請求がされた場合において、これらの規定により請求者が明らかにしなければならない事項が明らかにされていないと認めるときは、当該請求者に対し、必要な説明を求めることができる。

7.まとめ

成年後見人が本人のために戸籍請求を郵送にて行う場合、「本人請求」の「代理請求」(かつ「郵送請求」)に該当する。

(1)代理請求であることから必要となる手続き

「戸籍謄本等の交付の請求をする権限が付与されていることを証する書面」すなわち「後見登記事項証明書」を提供する必要がある。

当該書面は原本で提出する必要がある。

「後見登記事項証明書」は「官庁又は公署の作成したもの」であるから、その作成後三月以内のものでなければならない。

(2)「本人請求」にあたり必要となる手続き

「特定の方法」による「請求の任に当たつている者」の本人確認が必要。

【方法その1】
「国若しくは地方公共団体の機関が発行した身分証明書で写真を貼り付けたもの」を提示。
司法書士会員証はこれに該当しないので、運転免許証等の提示が必要になる。
その場合、運転免許証等に表示される住所と「後見登記事項証明書」に表示されている住所に相違がある。

【方法その2】

「介護保険の被保険者証や、これらに準ずるものとして市町村長が適当と認める書類」(イ書類)を2点、または「介護保険の被保険者証や、これらに準ずるものとして市町村長が適当と認める書類」(イ書類)を1点と「法人が発行した身分証明書など写真をはり付けたもの又はその他市町村長がこれらに準ずるものとして適当と認める書類」(ロ書類)を1点セットで提示。

この場合には、後見登記事項証明書が「イ書類」、司法書士証が「ロ書類」に該当しうるように思う。
後見登記事項証明書が「イ書類」に該当するか否かについては争いがあるかもしれないが、法務局が発行している書類で、請求の任に当たつている者の「氏名」「住所」が記載されているのだから、よほど年金手帳よりも正確性があろう(ただ「住所」については登録の段階で確認がされていないし、「生年月日」も記載されていない。とはいえ、こうしたウィークポイントもロ書類たる司法書士証が補うわけで、かつ本来司法書士証記載事項たる氏名・事務所住所は「所属する会が会員の氏名及び事務所の所在地を容易に確認することができる方法により公表」しているのだ。)。

(3)「特定の方法」に紐づく「郵送請求」

送付先住所の指定の方法として、つぎの2つの方法が考えられる。

【方法その1】
「第一号若しくは第二号イに掲げる書類のいずれか一以上の写しを送付し、当該書類の写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法」
ここでいう「第一号」とは要するに運転免許証等。「第二号イ」とは前号でいうところの「イ書類」。
後見登記事項証明書が「イ書類」に該当するのであれば、ここに記載の事務所住所に送付することで良いのだろう。

【方法その2】
「戸籍の附票の写し若しくは住民票の写しを送付し、これらの写しに記載された現住所を戸籍謄本等を送付すべき場所に指定する方法」

(4)まとめのまとめ

以上いろいろと検討してみた。
とはいえ、円滑な戸籍発行事務に協力するのも大事なことなので、窓口職員の方と適切な関係を構築していきたいと思います!!