「成年後見制度の在り方に関する研究会」をみる

なお、以下は上記掲載資料から、筆者の気になるところを抜粋したり、適宜加筆したりしたものです。
原資料との関係で、網羅性や、抜粋箇所の意義の同一性を保証するものではないので、ご留意ください。

1.成年後見制度の見直し

第二期成年後見制度利用促進基本計画や障害者の権利に関する条約との関係で、成年後見制度の見直しは必須。

とりわけ、第二期基本計画においては、成年後見制度が権利擁護支援の手段の一つとして位置付けられ、権利擁護支援を総合的に充実させていくとの基本的な考え方が示されている。
このような基本的な考え方にもとづき、専門家会議における具体的な指摘も踏まえて、制度の見直しに向けた検討を行うことが求められていること、任意後見制度についても制度自体の見直しについて検討すべきことが示されている。

2.第二期基本計画で指摘されたポイント

  • 他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・補充性の考慮)
  • 三類型を一元化すべき
  • 終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき
  • 本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべき

3.見直しに関する主な論点(参考資料1(法務省資料)から)

  • 成年後見制度のスポット利用の可否
    他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時機に必要な範囲期間で利用できるようにすべき
  • 成年後見制度の3類型の在り方
    成年後見制度の3類型(後見保佐補助)を廃止して、事案に応じて権限を付与すべき
  • 成年後見人の柔軟な交代
    本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべき
  • 成年後見人の報酬の在り方
    後見人等の報酬の決定についてできるだけ予測可能性の高い制度にすべき
  • 任意後見制度の在り方
    • 任意後見制度の利用が低調であるため、同制度の利用を促進する方策を検討すべき
    • 本人の判断能力が低下しているのに、適切な時期に任意後見監督人の選任申立てがされていない

4.見直しに関する主な論点(厚生労働省資料1から)

(1)尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善等【基本的な考え方】

  • 後見人等による財産管理のみを重視するのではなく、認知症高齢者や障害者の特性を理解した上で、本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援・身上保護も重視した制度の運用とすること。
  • 法定後見制度の後見類型は、終了原因が限定されていること等により、実際のニーズにかかわらず、一時的な法的課題や身上保護上の重要な課題等が解決した後も、成年後見制度が継続することが問題であるとの指摘や、一時的な利用を可能として、より利用しやすい制度とすべきとの指摘などがある。
    これを踏まえ、成年後見制度を利用することの本人にとっての必要性や、成年後見制度以外の権利擁護支援による対応の可能性についても考慮された上で、適切に成年後見制度が利用されるよう、連携体制等を整備すること。
  • 成年後見制度以外の権利擁護支援策(※)を総合的に充実すること。
    ※ 意思決定支援等によって本人を支える各種方策や司法による権利擁護支援を身近なものとする各種方策
  • 本人の人生設計についての意思を反映・尊重できるという観点から任意後見制度が適切かつ安心して利用されるための取組を進めるとともに、本人の意思、能力や生活状況に応じたきめ細かな対応を可能とする補助・保佐類型が利用されるための取組を進めること。
  • 安心かつ安全に成年後見制度を利用できるようにするため、不正防止等の方策を推進すること。

(2)より具体的に

  • 成年後見制度等の見直しに向けた検討
    • 市町村長の関与などの権限・成年後見制度利用支援事業についても見直しに向けた検討
    • 成年後見制度以外の権利擁護支援策を総合的に充実
  • 成年後見制度以外の権利擁護支援策を総合的に充実
    • 成年後見制度の利用を必要とする人が、適切に日常生活自立支援事業等から移行
    • 身寄りのない人等への生活支援サービスについて、意思決定支援や信頼性等を確保しながら取組を拡げるた
      めの方策を検討(司法による権利擁護支援を身近なものとする方策についても検討)
    • 地域住民や企業等が権利擁護支援の実践への理解や共感をもって寄付などに参画する取組を普及させるため
      の方策を検討
    • 虐待等の事案を受任する法人が都道府県等の適切な関与を受けつつ後見業務を実施できるよう、法人の確保
      の方策等を含め検討
  • 本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透
    • 都道府県等は、意思決定支援研修等を継続的に行う。国は、意思決定支援の指導者育成、意思決定支援等に
      関する専門職のアドバイザー育成、専門的助言についてのオンライン活用支援などに取り組む。
    • 各種意思決定支援ガイドライン等について、普及・啓発を行っていく。
    • 意思決定支援の取組が、保健・医療・福祉・介護・金融等幅広い関係者や地域住民に浸透するよう、各ガイ
      ドラインに共通する基本的な意思決定支援の考え方についての議論を進め、その結果を整理した資料を作成し、研修等を通じて継続的に普及・啓発を行う。
  • 家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進
    • 本人の自己決定権を尊重し、身上に配慮した後見事務を適切に行う後見人等が選任される必要
    • 本人の状況の変化等を踏まえ、後見人等の柔軟な交代が行われることを可能とする必要
    • (適切な後見人等の選任・交代は、本人が納得した上で、後見人等に対して適切な報酬が支払われることにも関係)
  • 適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等
    • 最高裁判所及び各家庭裁判所には、報酬の算定の考え方を早期に整理することが期待
    • 市町村には、全国どの地域でも必要な人が成年後見制度を利用できるよう、成年後見制度利用支援事業の実施内容を早期に検討することが期待
    • 国は、成年後見制度の見直し検討の際、報酬のあり方も検討する。
    • 報酬のあり方の検討に併せて、関係省庁は、報酬助成等の制度のあり方について検討する。
  • 不正防止の徹底と利用しやすさの調和等
    • 専門職団体・市民後見人を支援する団体等には、適切な保険の導入に向けた検討を進めることが期待
  • 各種手続における後見業務の円滑化等
    • 市町村・金融機関等の窓口で成年後見制度を利用したことによって不利益を被ることのないよう、同制度の理解の促進を図る必要がある。