法定相続情報制度と遺言執行者

1.法定相続情報制度

(1)制度内容は規則に定め

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(法定相続情報一覧図)
第二百四十七条
表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。
一被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
二相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄
(・・・)

(2)「法定相続情報」とは何か?

規則247条記載のとおり、つぎに記載された情報を「法定相続情報」という。

  • 被相続人
    • 氏名
    • 生年月日
    • 最後の住所
    • 死亡の年月日
  • 相続開始の時における同順位の相続人
    • 氏名
    • 生年月日
    • 被相続人との続柄

この法定相続情報を記載した書面(法定相続情報一覧図)を申出に基づき登記官(法務局)が保管し、かつ交付申出に対して同図の写しを交付するのが、法定相続情報制度である。

2.申出人の資格

(1)規則247条に限定列挙

申出人の資格は規則247条に限定的に記載されている。

相続人(【規則247条】第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条【規則247条】において同じ。)
又は
当該相続人の地位を相続により承継した者

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(法定相続情報一覧図)
第二百四十七条
(・・・)
3 前項の申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
(・・・)
二 被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書
(・・・)
七 代理人によって第一項の申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

(2)整理

というわけで、相続人か、その相続人から相続により地位を承継した者しか申出人になることはできない。

3.遺言執行者の取扱い

(1)Q&A

最近改正された「法定相続情報証明制度質疑事項集(第6版)」(インターネットで検索するとでてきます。司法書士は、会経由で情報連携がなされているはずです。)では、つぎのように記載されている。

問45 遺言執行者(民法第1006条等)は、申出人になることはできないが、申出を代理することができると考えるがどうか。

→ 御理解のとおり。

問46 遺言執行者が代理して申出がされた場合において、登記官は、専ら代理人が遺言執行者の地位にあることを添付された書面により確認すれば足り、当該代理人が具体的に相続手続を行う権限を有しているかやその必要があるかどうかについてまで確認する必要はないとの理解でよいか。

→御理解のとおり。

(2)通達

順序が逆だったかもしれないが、上記質疑事項集の改訂は、つぎの通達改正にもとづく。

法務省民二第292号平成29年4月17日「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務等の取扱いについて(通達)」

同通達の、「第2 改正省令の施行に伴う事務の取扱い」「5 添付書面について(5)」において、規則247条3項7号について解説されている。
そのなかで「代理人」として列挙されているのは、つぎのとおり。

  • 法定代理人
    • 親権者又は未成年後見人
    • 成年後見人又は代理権付与の審判のある保佐人・補助人
    • 不在者財産管理人・相続財産清算人
    • 遺言執行者
  • 委任による代理人
    • 親族
    • 戸籍法第10条の2第3項に掲げられる者
参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(法定相続情報一覧図)
第二百四十七条
(・・・)
2 前項の申出は、次に掲げる事項を内容とする申出書を登記所に提供してしなければならない。
(・・・)
二 代理人(申出人の法定代理人又はその委任による代理人にあってはその親族若しくは戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十条の二第三項に掲げる者に限る。以下本条において同じ。)によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
(・・・)

そして遺言執行者については、代理権限を証する書面として、つぎのように記載されている。

遺言書の写し及び遺言者の死亡を証する情報、遺言書情報証明書及び遺言者の死亡を証する情報又は遺言執行者の選任に係る審判書

(3)整理

というわけで、遺言執行者は「相続人の法定代理人」として保管申出・交付申出を代理してすることができる。

その際には、遺言書の写し(with遺言者の死亡を証する情報)または「遺言執行者の選任審判書」が代理権限証明書面ということになる。

「申出人」という記載は、一覧図上のどこに記載すれば良いのだろうか???

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