未支給年金の支給について(成年後見人の業務)

成年後見人の事務として関与した「未支給年金」についてメモ。

詳細は、年金事務所や社会保険労務士に確認するようにしましょう。

1.未支給年金とは

(1)未支給年金の定義

未支給年金とは、
年金給付の受給権者が死亡した場合に、その者に支給すべき年金であって、まだ支給されていないもの、
をいう。

相続人であれば、だれでも受け取ることができるというわけではなく、一定の要件に該当する親族からの請求に基づき、その請求者に対して支給される。

(2)受け取ることができる年金額について

すでに受取済みの年金や亡くなった時期によって異なるが、基本的に考えるべきは、つぎの2点。

  • 最後に受給した年金は、前々月と前月の分であること。
  • 亡くなった月の分まで受給ができること(日割りはしない)。

たとえば7月1日に亡くなった場合には、つぎのように考える。

  • 前月6月15日に受給しているのは、4月分と5月分。
  • 未支給年金は、6月分と7月分(日割りしない)ということになる。

2.未支給年金の請求者になれるのは?

(1)一定の範囲の遺族

未支給年金を受け取ることのできる人は、つぎの要件を満たした人に限ります。

  • 亡くなった方(年金受給者)と生計を同じくしていた方
  • 亡くなった方(年金受給者)の親族のうち、三親等以内かつ受給順位が一番高い方

(2)「生計を同じくしていた」

基本的には、「住民票上同一世帯に属していたとき」により判断されると思うが、その他にも要件の定めはあるため、迷うようであれば年金事務所等に相談すべき。

(3)三親等以内の親族のうち順位が高い者

三親等以内の親族については、つぎのとおり受給の順位が定められています。
数字が順位をあらわします。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹
  5. その他三親等以内の親族

なお、同順位の遺族が複数いる場合には、そのうちの1人の請求によっても支給がなされ、かつ、その支給をもって「同順位の遺族全員のために支給がなされた」こととされます。

3.未支給年金と相続税

(1)「遺族」に対して支給されるもの

国民年金法に基づく未支給年金請求権については、最高裁判決(平成7年11月7日)において、その相続性が否定されています。

民法の相続とは別に、年金受給者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものであるから。

(2)当該遺族の一時所得に該当

亡くなった方の未支給年金は、その支給金を受け取った方の一時所得に該当します。

場合によっては、確定申告が必要となるケースもありますが、その点については税務署・税理士に確認しましょう。

4.関連条文・判例

(1)条文

国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)
(未支給年金)
第十九条 
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。
3 第一項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4 未支給の年金を受けるべき者の順位は、政令で定める。
5 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

(2)判例

平成7年11月7日最高裁判所第三小法廷判決