目次
1.法律の目的
(1)条文
犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成十九年法律第百三十三号)
(目的)
第一条
この法律は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払等のため、預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする。
以下、特段の記載のない限り、参照条文は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成十九年法律第百三十三号)」によるもの。
(2)整理
法律の正式名称は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」。
通称「振り込め詐欺救済法」。以下、このように呼称する。
そもそも「振り込め詐欺」って何だろうと思ったが、つぎのような金融庁HPがある。
振り込め詐欺救済法においては、つぎのように定義されている。
(定義)
第二条
(・・・)
3 この法律において「振込利用犯罪行為」とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。
被害者(何かしらの財産罪の)からお金を取得する方法として「預金口座等への振込み」が利用されていた場合に、同法による救済の対象となりうるということか。
2.手続きの流れ
(1)おおまかな流れ
- 金融機関が振り込め詐欺等により資金が振り込まれた口座を凍結
- 預金保険機構のホームページで口座名義人の権利を消滅させる公告手続を行う
- 被害者から支払申請を受け付ける
- 被害者に対して被害回復分配金を支払う
(2)預金保険機構とは
預金保険機構とは「預金者等の保護及び破綻金融機関に係る資金決済の確保を図るため、預金保険制度を確立し、信用秩序の維持に資する、との預金保険法の目的達成に向けて、預金保険制度を適切に運用すること等を使命」とした団体である(同機構HPの「組織の概要」「使命」より引用)
設立根拠法は、預金保険法。
預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)
(法人格)
第三条
預金保険機構(以下「機構」という。)は、法人とする。
(登記)
第七条
機構は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の準用)
第八条
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条及び第七十八条の規定は、機構について準用する。
そして、上記(1)2の公告は以下のHPで実施されている。
3.少し手続きの内容をみてみる
(1)預金口座等に係る取引の停止等の措置
第三条
金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。
(・・・)
「捜査機関等」について、法律上は定義されていないと思われる。
「犯罪利用預金口座等」については法2条4項に定義がある。
(2)預金等に係る債権の消滅手続
(公告の求め)
第四条
金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、次に掲げる事由その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、速やかに、当該預金口座等について現に取引の停止等の措置が講じられていない場合においては当該措置を講ずるとともに、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、当該預金口座等に係る預金等に係る債権について、主務省令で定める書類を添えて、当該債権の消滅手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
一 捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があったこと。
二 前号の情報その他の情報に基づいて当該預金口座等に係る振込利用犯罪行為による被害の状況について行った調査の結果
三 金融機関が有する資料により知ることができる当該預金口座等の名義人の住所への連絡その他の方法による当該名義人の所在その他の状況について行った調査の結果
四 当該預金口座等に係る取引の状況
(・・・)
条文参照はしないが、法4条2項では「前項の規定を・・・適用しない」場合が定められている。
たとえば「前項(法4条1項)に規定する預金口座等についてこれに係る預金等の払戻しを求める訴え」が提起されていたり「強制執行等」が行われているとき。
(3)預金等に係る債権の消滅
第七条
対象預金等債権について、第五条第一項第五号に掲げる期間内に権利行使の届出等がなく、かつ、前条第二項の規定による通知がないときは、当該対象預金等債権は、消滅する。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。
公告をし、金融機関に対する権利行使の届出等(法5条1項5号)がなく、かつ金融機関から「犯罪利用預金口座等でないことが明らかになった」旨の通知(法6条2項)がなければ、預金債権が消滅する!
(4)被害回復分配金の支払手続
大まかな流れは、つぎのとおり。
- 被害回復分配金の支払手続の開始に係る公告(法10条及び法11条1項)
- 金融機関は、対象犯罪行為による被害を受けたことが疑われる者に対し被害回復分配金の支払手続の実施等について周知するため、必要な情報の提供その他の措置を適切に講ずる(法11条4項)
- 被害回復分配金の支払を受けようとする者は、支払申請期間内に、申請書に疎明資料を添付して、対象預金口座等に係る金融機関に申請する(法12条)
- 金融機関は、上記申請があった場合において、支払申請期間が経過したときは、上記申請書及び資料等に基づき、その申請人が被害回復分配金の支払を受けることができる者に該当するか否かの決定をする(法13条)。決定内容は、申請人に送付される(法14条)。
- 金融機関は、すべての申請に対する決定を行ったときは、遅滞なく、支払該当者決定を受けた者に対し、被害回復分配金を支払う(法16条)。
4.被害者による差押えや払戻訴訟との関係
この点については、自分の能力をはるかに超えるので、つぎのような文献を見つけたことのみ記録。
第2分科会の第5章。