目次
1.「貸借対照表の要旨」
(1)会社法
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(計算書類の公告)
第四百四十条
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号【官報に掲載する方法】又は第二号【時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法】に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
4 金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。
- 大会社以外:貸借対照表及び損益計算書
- 大会社:貸借対照表
ただし、公告方法が「官報に掲載する方法」または「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である場合には、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)について「要旨」を公告することでOKとなる。
さらに、公告方法が「官報に掲載する方法」または「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である会社にあっては、貸借対照表の内容である情報を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。
(2)会社計算規則
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
第二章 計算書類の要旨の公告
第一節 総則
第百三十七条
法第四百四十条第二項の規定により貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨を公告する場合における貸借対照表の要旨及び損益計算書の要旨については、この章の定めるところによる。
「要旨」については、会社計算規則「第六編 計算書類の公告等」「第二章 計算書類の要旨の公告」においてルールが定められている。
なお、以下では「貸借対照表の要旨」について確認をしていく。
また、会計監査人設置会社に関する公告事項(会社計算規則148条)にはふれない。
(3)円単位・千円単位・百万円単位
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(金額の表示の単位)
第百四十四条
貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨に係る事項の金額は、百万円単位又は十億円単位をもって表示するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社の財産又は損益の状態を的確に判断することができなくなるおそれがある場合には、貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨に係る事項の金額は、適切な単位をもって表示しなければならない。
(表示言語)
第百四十五条
貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨は、日本語をもって表示するものとする。ただし、その他の言語をもって表示することが不当でない場合は、この限りでない。
原則として、「百万円単位」または「十億円単位」で表示する。
ただし、それでは「株式会社の財産又は損益の状態を的確に判断することができなくなるおそれ」がある場合には、適切な単位をもって表示すべしとされている。
(千円単位、円単位での表示が認められているということ。)
(表示言語についても、計算規則145条にて、似たような規定が置かれている。)
端数処理については規定がない。
(4)区分ほか
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(貸借対照表の要旨の区分)
第百三十八条
貸借対照表の要旨は、次に掲げる部に区分しなければならない。
一 資産
二 負債
三 純資産
3つに区分しなければならない。
- 資産
- 負債
- 純資産
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(貸借対照表の要旨への付記事項)
第百四十二条
貸借対照表の要旨には、当期純損益金額を付記しなければならない。ただし、法第四百四十条第二項の規定により損益計算書の要旨を公告する場合は、この限りでない。
損益計算書の要旨を公告する場合以外は、貸借対照表の要旨に「当期純損益金額」を付記しないといけない。
実務上は、利益剰余金のところに付記される。
2.資産の部
(1)会社計算規則
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(資産の部)
第百三十九条
資産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 流動資産
二 固定資産
三 繰延資産
2 資産の部の各項目は、適当な項目に細分することができる。
3 公開会社の貸借対照表の要旨における固定資産に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 有形固定資産
二 無形固定資産
三 投資その他の資産
4 公開会社の貸借対照表の要旨における資産の部の各項目は、公開会社の財産の状態を明らかにするため重要な適宜の項目に細分しなければならない。
5 資産の部の各項目は、当該項目に係る資産を示す適当な名称を付さなければならない。
(2)整理
以下、公開会社に関するルールには触れない。
資産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
- 流動資産
- 固定資産
- 繰延資産
各項目を、適当な項目に細分化することはできる。
(その場合には、各項目にかかる資産を示す、適当な名称を付さないといけない。)
(名称のルールが決まっているわけではない。)
3.負債の部
(1)会社計算規則
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(負債の部)
第百四十条
負債の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 流動負債
二 固定負債
2 負債に係る引当金がある場合には、当該引当金については、引当金ごとに、他の負債と区分しなければならない。
3 負債の部の各項目は、適当な項目に細分することができる。
4 公開会社の貸借対照表の要旨における負債の部の各項目は、公開会社の財産の状態を明らかにするため重要な適宜の項目に細分しなければならない。
5 負債の部の各項目は、当該項目に係る負債を示す適当な名称を付さなければならない。
(2)整理
負債の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
- 流動負債
- 固定負債
各項目を、適当な項目に細分化することはできる。
(その場合には、各項目にかかる負債を示す、適当な名称を付さないといけない。)
(名称のルールが決まっているわけではない。)
負債の部において留意しなければいけないのは「引当金」に関するルール
負債に係る引当金がある場合には、当該引当金については、引当金ごとに、他の負債と区分しなければならない。
例として、つぎのようなもの(直近官報における公告より適宜抜粋)。
- 賞与引当金
- 製品保証引当金
- 退職給付引当金
- 役員退職慰労引当金
4.純資産の部
(1)会社計算規則
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(純資産の部)
第百四十一条
純資産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 株主資本
二 評価・換算差額等
三 株式引受権
四 新株予約権
2 株主資本に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。この場合において、第五号に掲げる項目は、控除項目とする。
一 資本金
二 新株式申込証拠金
三 資本剰余金
四 利益剰余金
五 自己株式
六 自己株式申込証拠金
3 資本剰余金に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 資本準備金
二 その他資本剰余金
4 利益剰余金に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 利益準備金
二 その他利益剰余金
5 第三項第二号及び前項第二号に掲げる項目は、適当な名称を付した項目に細分することができる。
6 評価・換算差額等に係る項目は、次に掲げる項目その他適当な名称を付した項目に細分しなければならない。
一 その他有価証券評価差額金
二 繰延ヘッジ損益
三 土地再評価差額金
(2)整理
純資産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
- 株主資本
- 資本金
- 新株式申込証拠金
- 資本剰余金
- 資本準備金
- その他資本剰余金
- 利益剰余金
- 利益準備金
- その他利益剰余金
- 自己株式
- 自己株式申込証拠金
- 評価・換算差額等
- 株式引受権
- 新株予約権
区分しなければいけない項目が多い。
また、損益計算書の要旨を公告する場合以外は、貸借対照表の要旨に「当期純損益金額」を付記しないといけないが、これを「利益剰余金」の項目の最下段に付記する。
「その他資本剰余金」「その他利益剰余金」については、さらに適当な名称を付した項目に細分化できる。
5.別記事業会社(例として建設業)の特例について
(1)会社計算規則
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(別記事業を営む会社の計算関係書類についての特例)
第百十八条
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)別記に掲げる事業(以下この条において「別記事業」という。)を営む会社(企業集団を含む。以下この条において同じ。)が当該別記事業の所管官庁に提出する計算関係書類の用語、様式及び作成方法について、特に法令の定めがある場合又は当該別記事業の所管官庁がこの省令に準じて計算書類準則(以下この条において「準則」という。)を制定した場合には、当該別記事業を営む会社が作成すべき計算関係書類の用語、様式及び作成方法については、第一章から前章までの規定にかかわらず、その法令又は準則の定めによる。ただし、その法令又は準則に定めのない事項については、この限りでない。
(・・・)
3 別記事業とその他の事業とを兼ねて営む会社の主要事業が別記事業でない場合には、当該会社が作成すべき計算関係書類の用語、様式及び作成方法については、第一項の規定を適用しないことができる。ただし、別記事業に関係ある事項については、当該別記事業に関して適用される法令又は準則の定めによることができる。
4 前三項の規定の適用がある会社(当該会社が作成すべき計算関係書類の用語、様式及び作成方法の全部又は一部について別記事業に関して適用される法令又は準則の定めによるものに限る。以下「別記事業会社」という。)が作成すべき計算関係書類について、この省令の規定により表示を要しない事項がある場合においては、当該事項に関して適用される法令又は準則の定めにかかわらず、その表示を省略し、又は適当な方法で表示することができる。
(2)別記事業の指定
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)
別記
一 建設業
(・・・)
三 銀行・信託業
(・・・)
二十 医業(社会医療法人債を発行し、又は発行しようとする医療法人が行う業務に限る。)
二十一 学校設置事業(金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第一条第二号に掲げる証券若しくは証書を発行し、若しくは発行しようとする学校法人等又は同令第一条の三の四に規定する権利を有価証券として発行し、若しくは発行しようとする学校法人等が行う業務に限る。)
(3)建設業法施行規則
建設業法施行規則(昭和二十四年建設省令第十四号)
(法第六条第一項第六号の書類)
第四条
法第六条【一般建設業の許可申請書の添付書類】第一項第六号の国土交通省令で定める書類は、次に掲げるものとする。
(・・・)
八 株式会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第三条第二項に規定する特例有限会社を除く。以下同じ。)以外の法人又は小会社(資本金の額が一億円以下であり、かつ、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上でない株式会社をいう。以下同じ。)である場合においては別記様式第十五号から第十七号の二までによる直前一年の各事業年度の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び注記表、株式会社(小会社を除く。)である場合においてはこれらの書類及び別記様式第十七号の三による附属明細表
(・・・)
このうち「様式第十五号」が貸借対照表である。
様式には記載要領が記載されており、一部を抜粋すると、つぎのとおり。
2 勘定科目の分類は、国土交通大臣が定めるところによること。
3 記載すべき金額は、千円単位をもって表示すること。 ただし、会社法(平成17年法律第86号)第2条第6号に規定する大会社にあっては、百万円単位をもって表示することができる。この場合、「千円」とあるのは「百万円」として記載すること。
4 金額の記載に当たって有効数字がない場合においては、科目の名称の記載を要しない。