配偶者からの暴力被害者支援について(DV防止法)

1.配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)

(1)DV防止法前文

参照条文

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)

我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
ところが、配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている。
このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは、女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
ここに、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する。

(2)法律の構成

DV防止法の章立ては、つぎのとおり。

  • 第1章 総則
  • 第1章の2 基本方針及び都道府県基本計画等
  • 第2章 配偶者暴力相談支援センター等
  • 第3章 被害者の保護
  • 第4章 保護命令
  • 第5章 雑則
  • 第5章の2 補則
  • 第6章 罰則

(3)定義の確認(法1条)

配偶者からの暴力配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動
(以下「身体に対する暴力等」と総称。)
上記の「配偶者からの暴力」には、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に離婚又は婚姻が取り消された場合において、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含む。
被害者配偶者からの暴力を受けた者
配偶者婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。
離婚婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含む

定義を見ると「配偶者」という言葉じゃなくても良いような気がするが、いろいろな理由があるのだろうか?

なお同法の28条の2は、つぎのとおり「準用」という形で本法の適用範囲を拡大している。

参照条文

(この法律の準用)
第二十八条の二 
第二条及び第一章の二から前章までの規定は、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力(当該関係にある相手からの身体に対する暴力等をいい、当該関係にある相手からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が当該関係を解消した場合にあっては、当該関係にあった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含む。)及び当該暴力を受けた者について準用する。(・・・)

同条は「生活の本拠を共にする交際をする関係にある相手からの暴力」についても準用するよというもの。

下記の支援情報サイトにおいては、DVの定義について、つぎのように紹介している。

「ドメスティック・バイオレンス」の用語については、明確な定義はありませんが、日本では「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護等を図ることを目的として制定された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」は、「DV防止法」と呼ばれることもあります。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/index.html「『ドメスティック・バイオレンス』とは」

2.被害者(配偶者からの暴力を受けた者)に対する支援情報

(1)配偶者からの暴力被害者支援情報

参考記事(外部リンク)
内閣府男女共同参画局では、配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ情報の提供を行っています。

(2)上記情報に記載されている統計から

上記情報では「配偶者暴力相談支援センターへの相談件数の推移」が紹介されている。

2002年度35,943件
2012年度89,490件
2017年度106,110件
2022年度122,211件

さらに2022年度の資料をみると、たとえば静岡県については「県内4つの配偶者暴力相談支援センター」に総数「2,167件」の相談が寄せられており、1センター当たりの相談件数は「541.8」件となっている。

(3)「配偶者暴力相談支援センター」

参照条文

(配偶者暴力相談支援センター)
第三条 
都道府県は、当該都道府県が設置する女性相談支援センターその他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするものとする。
2 市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするよう努めるものとする。
3 配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のため、次に掲げる業務を行うものとする。
一 被害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は女性相談支援員若しくは相談を行う機関を紹介すること。
二 被害者の心身の健康を回復させるため、医学的又は心理学的な指導その他の必要な指導を行うこと。
三 被害者(被害者がその家族を同伴する場合にあっては、被害者及びその同伴する家族。次号、第六号、第五条、第八条の三及び第九条において同じ。)の緊急時における安全の確保及び一時保護を行うこと。
四 被害者が自立して生活することを促進するため、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
五 第四章に定める保護命令の制度の利用について、情報の提供、助言、関係機関への連絡その他の援助を行うこと。
六 被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
4 前項第三号の一時保護は、女性相談支援センターが、自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。
5 前項の規定による委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
6 配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとする。

上記(2)において静岡県内の配偶者暴力相談支援センターは4つと紹介したが、具体的には次のとおり。

静岡県女性相談センター(配偶者暴力相談支援センター)
https://www.pref.shizuoka.jp/kodomokyoiku/kodomokosodate/dv/1040711/1022300.html
静岡市静岡市配偶者暴力相談支援センター
https://www.city.shizuoka.lg.jp/000_002130.html
浜松市浜松市DV相談支援センター
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/jose/dv/dv_madoguchi.html
富士市富士市配偶者暴力相談支援センター
https://www.city.fuji.shizuoka.jp/kenkou/c0201/rn2ola000001m5ig.html
関連記事