不在者財産管理人が遺産分割調停(あるいは遺産分割審判)に参加する場合、権限外許可を必要とするのか?
1.条文
民法(明治二十九年法律第八十九号)
第二十八条
管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
第百三条
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
2.どんなことが?
よくあるものは次の通り。
(1)遺産分割協議
(2)管理財産の売却・賃貸
(3)相続の承認や放棄
3.遺産分割調停に合意することは?
(1)許可の対象
調停において、調停案に合意することは、許可の対象となる。
(裁判所が関与するとはいえ、基本は、当事者の合意に基づくものであるから。)
(2)調停案が完成したら
管理人としては、調停案が完成した段階で、その調停案をもって権限外許可の審判を申立てる。最後の調停期日の段階で、権限外許可が取れていることが必要。
この場合の審判の主文例
申立人が、○○家庭裁判所(家イ)第○○号遺産分割調停事件において、別紙調停条項(案)をもって調停を成立させることを許可する。
4.遺産分割審判は?
審判は家庭裁判所の行為であり、管理人の処分行為が介在する余地はないので、不要。
5.「調停にかわる審判」は?
審判と同様。
【参考】
1.『家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務(第2版)』P.193以下
2.『不在者・相続人不存在 財産管理の実務(補訂版)』P.75以下