株式会社における「分配可能額」の計算

2023年4月29日

1.ただ条文を追いかけるだけ

(1)分配可能額の役割

会社債権者の保護

(2)基本となる条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(配当等の制限)
第四百六十一条 
次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 (・・・)

会社法461条は「配当等の制限」とのタイトルのもと、1項において「分配可能額を超えて行ってはいけない行為」、2項において「分配可能額の計算方法」について定めている。

(3)制限の対象となる行為

剰余金の配当の配当はもちろんのこと、「自己株式の取得」についても一定の場合において制限対象となる。

2.分配可能額の計算

(1)あらためて461条2項

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(配当等の制限)
第四百六十一条 
(・・・)
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

(2)要するに

まずは、最終事業年度の末日における「剰余金の額」を計算する。

そこに、最終事業年度の末日後に生じた「剰余金の額」の変動を反映させる。

変動要素としては、つぎのとおり。

  • +【二】臨時計算書類に基づく「臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日まで」の利益及び当該期間中に処分した自己株式の対価の価額。
  • -【三】自己株式の帳簿価格
  • -【四】最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における対価の額
  • -【五】臨時計算書類に基づく「臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日まで」の損失
  • -【六】会社計算規則158条
参照条文

会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)

(その他減ずるべき額)
第百五十八条 
法第四百六十一条第二項第六号に規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第一号から第八号までに掲げる額の合計額から第九号及び第十号に掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
(・・・)

3.剰余金とは

(1)基本となる446条

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(剰余金の額)
第四百四十六条 
株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 資産の額
ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
ハ 負債の額
ニ 資本金及び準備金の額の合計額
ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
二 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を控除して得た額
三 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(次条第一項第二号の額を除く。)
四 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(第四百四十八条第一項第二号の額を除く。)
五 最終事業年度の末日後に第百七十八条第一項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
六 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における次に掲げる額の合計額
イ 第四百五十四条第一項第一号の配当財産の帳簿価額の総額(同条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く。)
ロ 第四百五十四条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額
ハ 第四百五十六条に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額
七 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

(2)要するに

結論としては、つぎの金額の合計。

  • その他資本剰余金
  • その他利益剰余金
  • 最終事業年度末日後の変動(446条2号以下)
参照条文

会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)

(最終事業年度の末日における控除額)
第百四十九条 
法第四百四十六条第一号ホに規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第一号に掲げる額から第二号から第四号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 法第四百四十六条第一号イ及びロに掲げる額の合計額
二 法第四百四十六条第一号ハ及びニに掲げる額の合計額
三 その他資本剰余金の額
四 その他利益剰余金の額

(最終事業年度の末日後に生ずる控除額)
第百五十条 
法第四百四十六条第七号に規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第八号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 最終事業年度の末日後に剰余金の額を減少して資本金の額又は準備金の額を増加した場合における当該減少額
二 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における第二十三条第一号ロ及び第二号ロに掲げる額
三 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式に係る法第四百四十六条第二号に掲げる額
四 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収分割会社又は新設分割会社となる吸収分割又は新設分割に際して剰余金の額を減少した場合における当該減少額
五 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為をした場合における当該吸収型再編受入行為に係る次に掲げる額の合計額
イ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他資本剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他資本剰余金の額を減じて得た額
ロ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他利益剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他利益剰余金の額を減じて得た額
六 最終事業年度の末日後に第二十一条の規定により増加したその他資本剰余金の額
七 最終事業年度の末日後に第四十二条の二第五項第一号の規定により変動したその他資本剰余金の額
八 最終事業年度の末日後に第四十二条の二第七項の規定により自己株式の額を増加した場合における当該増加額
2 (・・・)
3 (・・・)

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