目次
1.配置技術者とは
(1)配置技術者の定義
建設業法26条に規定されている「工事現場に配置すべき技術者」のことをいう。
建設工事の適正な施工を確保するために、請け負った建設工事を施工する工事現場に、当該建設工事について一定の資格を有する者をおいて、工事の施工の技術上の管理を行う必要がある。
法令上「配置技術者」という用語は用いられていない。
建設業法(昭和二十四年法律第百号)
(主任技術者及び監理技術者の職務等)
第二十六条の四
主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。
2 工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない。
(2)主任技術者及び監理技術者
詳しい定義は、それぞれの項を参照。
主任技術者(建設業法26条1項):
建設業の許可を受けたものが建設工事を施工する場合に、工事現場において施工の技術上の管理をつかさどる者として配置される者(元請か下請、請負金額の多寡にかかわらず。)。
監理技術者(建設業法26条2項):
発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負金額の合計が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる場合に、主任技術者に代えて設置される者(なお「特定建設業」の許可を持っていなければ、こうした下請契約は不可。)。
2.主任技術者
(1)条文
(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条
建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
(・・・)
(許可の基準)
第七条
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
(・・・)
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(・・・)による高等学校(・・・)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(・・・)若しくは高等専門学校(・・・)を卒業した(・・・)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
(・・・)
(2)整理
建設業者(建設業の許可を受けて建設業を営む者)は、請け負った建設工事の施工にあたり、その建設工事の工事現場に、『施工の技術上の管理をつかさどるもの』=『主任技術者』を置かなければならない。
主任技術者は「営業所技術者に相当する技術上の管理をする能力を持った者」でなければいけない。
3.監理技術者
(1)条文
(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条
(・・・)
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額【5000万円。ただし建設工事業の場合は8000万円】以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
(許可の基準)
第十五条
国土交通大臣又は都道府県知事は、特定建設業の許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
(・・・)
二 その営業所ごとに、特定営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。【土木工事業、建築工事業、電気工事業など。施行令5条の2を参照。】)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。
イ 第二十七条第一項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者
ロ 第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額【4500万円】以上であるものに関し二年以上指導監督的な実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
(・・・)
(2)整理
こちらも要するに、特定建設業における「特定営業所技術者」相当の技術要件を満たした者を工事現場に配置せよ、ということ。
3.配置技術者の現場専任性
(1)条文
(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条
(・・・)
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。(・・・)
(2)整理
まず前提として、配置技術者には、原則として現場専任性はないということ。
ただし、つぎの工事については、現場専任性が求められる。
- 公共性のある施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの
- 多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの
政令の内容はつぎのとおり。
建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)
(専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)
第二十七条
法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、【1】次の各号のいずれかに該当する建設工事で【2】工事一件の請負代金の額が四千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、九千万円)以上のものとする。
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
二 第十五条第一号【鉄道、道路、上下水道など】及び第三号【電気又はガス事業用施設】に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設
ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設
ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)
ニ 学校
ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場
ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設
ト 病院又は診療所
チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設
リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設
ヌ 集会場又は公会堂
ル 市場又は百貨店
ヲ 事務所
ワ ホテル又は旅館
カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿
ヨ 公衆浴場
タ 興行場又はダンスホール
レ 神社、寺院又は教会
ソ 工場、ドック又は倉庫
ツ 展望塔
2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。
いくつかある専任性の例外が、まず施行令27条2項で登場する。
【専任性の例外1:工事の密接性から許容。】
(1)密接な関係のある二以上の建設工事を(2)同一の建設業者が(2)同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、『同一の専任の主任技術者』が管理可能。
(これは、そもそも「監理技術者」が配置されるケースでは適用がないという理解で良いか?)
4.現場専任性の例外(法26条3項但書)
(1)条文
建設業法(昭和二十四年法律第百号)
(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条
(・・・)
3 (・・・)。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。
一 当該建設工事が次のイからハまでに掲げる要件のいずれにも該当する場合における主任技術者又は監理技術者
イ 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額【1億円】未満となるものであること。
ロ 当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
ハ 主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。
二 当該建設工事の工事現場に、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合における監理技術者
(・・・)
4 前項ただし書の規定は、同項各号の建設工事の工事現場の数が、同一の主任技術者又は監理技術者が各工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を行つたとしてもその適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数【2!】を超えるときは、適用しない。
(2)整理
【例外2:3項1号のいずれにも該当すること】
- 請負代金の金額が1億円未満
- 工事現場間の移動時間又は連絡方法に関する体制整備
- 情報通信技術を利用する方法による職務実施
【例外3:3項2号に該当すること】
監理技術者を補佐する者を現場専任で配置すること。
5.26条3項1号の要件を満たすための体制等の整備
(1)条文
建設業法施行規則(昭和二十四年建設省令第十四号)
(法第二十六条第三項第一号ロの国土交通省令で定める要件)
第十七条の二
法第二十六条第三項第一号ロの国土交通省令で定める要件は、次に掲げるものとする。
一 同一の主任技術者又は監理技術者を置こうとする建設工事の工事現場間の距離が、これらの者がその一日の勤務時間内に巡回可能なものであり、かつ、一の工事現場において災害、事故その他の事象が発生した場合における当該工事現場と他の工事現場との間の移動時間がおおむね二時間以内であること。
二 前号の建設工事の全部又は一部について締結される下請契約が、次に掲げるものに限られること。
イ 前号の主任技術者又は監理技術者を置く建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「一次下請契約」という。)
ロ イの建設業者から直接建設工事を請け負つた建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「二次下請契約」という。)
ハ ロの建設業者から直接建設工事を請け負つた建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「三次下請契約」という。)
三 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、同号の主任技術者又は監理技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合は、当該工事に関する実務の経験を一年以上有する者に限る。)を当該建設工事に置いていること。
四 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、当該工事現場の施工体制を同号の主任技術者又は監理技術者が情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を講じていること。
五 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、次に掲げる事項を記載した人員の配置を示す計画書を作成し、当該工事現場に備え置き、及び第二十八条第一項に規定する帳簿(第二十六条第六項の規定による記録が行われた同項のファイル又は電磁的記録媒体を含む。)の保存期間と同じ期間営業所で保存していること。
イ 当該建設業者の名称及び所在地
ロ 第一号の主任技術者又は監理技術者の氏名
ハ 当該主任技術者又は監理技術者の一日あたりの労働時間のうち労働基準法(昭和三十二年法律第四十九号)第三十二条第一項の労働時間を超えるものの見込み及び当該労働時間の実績
ニ 当該建設工事に係る次の事項
(1) 当該建設工事の名称及び工事現場の所在地
(2) 当該建設工事の内容
(3) 当該建設工事の請負代金の額
(4) 第一号の移動時間
(5) 一次下請契約、二次下請契約及び三次下請契約のうち実際に締結されたもの
(6) 第三号の者の氏名、所属会社及び当該建設工事に関する実務の経験の内容(実務の経験の内容については、当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合に限る。第十七条の五第一項第五号ニ(6)において同じ。)
(7) 前号の措置
(8) 次条の情報通信機器
2 前項第五号イからニまでに掲げる事項が、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ建設業者において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面又は出力装置の映像面に表示されるときは、当該記録をもつて同項に規定する計画書への記載に代えることができる。
(法第二十六条第三項第一号ハの国土交通省令で定める措置)
第十七条の三
法第二十六条第三項第一号ハの国土交通省令で定める措置は、前条第一項第一号の主任技術者又は監理技術者が当該工事現場以外の場所から当該工事現場の状況の確認をするために必要な映像及び音声の送受信が可能な情報通信機器が設置され、かつ、当該機器を用いた通信を利用することが可能な環境が確保されていることとする。
(2)整理
法26条3項1号ロ「移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保」に関して。
- 建設工事の工事現場間の距離が、『複数の現場に配置される配置技術者』がその一日の勤務時間内に巡回可能なものであり、かつ、一の工事現場において災害、事故その他の事象が発生した場合における当該工事現場と他の工事現場との間の移動時間がおおむね2時間以内
- 下請契約が、三次下請契約まで。
- 工事現場に、配置技術者と連絡等を行うための者(一式工事の場合には、当該工事に関する実務経験が1年以上ある者に限る。)を配置すること。
- 配置技術者が、工事現場の施工体制を情報通信技術を利用する方法により確認できるような措置を講じていること。
- 人員配置に関する計画書を作成し、これを工事現場で閲覧可能にし、営業所でも一定期間保存すること。
法26条3項1号ハ「工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置」に関して。
- 工事現場以外の場所から当該工事現場の状況の確認をするために必要な映像及び音声の送受信が可能な情報通信機器が設置されていること。
- 当該機器を用いた通信を利用することが可能な環境が確保されていること
6.26条3項2号の要件を満たすための「監理技術者補佐」とは
(1)条文
建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)
(監理技術者の行うべき職務を補佐する者)
第二十九条
法第二十六条第三項第二号の政令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 法第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者のうち、法第二十六条の四第一項に規定する技術上の管理及び指導監督であつて監理技術者がその職務として行うべきものに係る基礎的な知識及び能力を有すると認められる者として、建設工事の種類に応じ国土交通大臣が定める要件に該当する者
二 国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
(2)整理
- 一般建設業許可における営業所技術者相当の技術要件を満たす者のうち、さらに、監理技術者の職務にかかる基礎的な知識・能力を有するものとして国土交通大臣が定める要件に該当する者。
- 上記と、同等以上の能力を有すると国土交通大臣が認定した者。
この要件は「告示」されている。
くわしくは告示の内容を確認してほしいが、概要はつぎのとおり。
- 請け負った建設工事の種類にかかる主任技術者の資格を有する者のうち、一級の技術検定の第一次検定【学科試験】に合格した者(建設工事の種類に応じて指定された検定種別に限る)。
- 請け負った建設工事の種類にかかる監理技術者の資格を有する者
7.感想
複雑である。
