目次
1.相続登記の義務化
相続登記等の申請義務化については令和6年4月1日施行です。
参照する条文は、現時点(令和5年9月1日)において未施行のものを含みます。
(1)改正条文
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
2.令和5年9月12日民二第927号通達について
(1)法務省HPで確認可能
上記リンク先の
「3 法令改正に基づく不動産登記事務の取扱いに関する主要な通達等」
「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係)令和5年9月12日付け法務省民二第927号通達」として掲載
(2)相続人申告登記の申出の手続に関する取扱い
相続人申告登記の申出の手続に関する取扱いについては別に通達がでるそうな。
3.令和5年9月12日民二第927号通達の内容(義務に関する事項)
(1)基本的義務の確認
改正不登法第76条の2第1項前段
自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、その所有権の移転の登記を申請せよ!
改正不登法第76条の3第2項
(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三
前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。
申請義務の履行期間内に相続人申告登記の申出をした者は、当該申請義務を履行したものとみなす
(2)不動産の承継について遺言がされていた場合
遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様の義務を負う(改正不登法第76条の2第1項後段)。
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)であった場合には、同項前段の規定による申請義務をおう。
「相続人に対する遺贈に限る」
(3)遺産分割が成立した場合の申請義務【追加的申請義務】
相続の開始後に遺産の分割があったときには、当該遺産の分割によって所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、その所有権の移転の登記を申請する義務を負うこととされた(改正不登法第76条の2第1項前段)。
【その1】法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割が成立した場合
当該遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産分割の日から3年以内
【その2】相続人申告登記の申出後に遺産分割が成立した場合
その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(改正不登法第76条の2第1項前段の規定によ
る登記がされた後に遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、その所有権の移転の登記を申請
4.同通達の内容(経過措置に関する事項)
(1)遡及して適用される
施行日(令和6年4月1日)前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても適用される!
(2)施行日から3年以内に
当該施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は当該施行日のいずれか遅い日から3年以内に、その所有権の移転の登記を申請しなければならない。
遺贈(相続人に対する遺贈に限る)や遺産分割についても同様。
5.同通達の内容(過料事件に関する事項)
(1)申請の催告
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)
(裁判所への通知)
第百八十七条
登記官は、次の各号に掲げる場合には、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知しなければならない。
一 法第百六十四条の規定により過料に処せられるべき者があることを職務上知ったとき(登記官が法第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務に違反した者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限る。)。
(・・・)
催告書は「書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行う方法」により送付される。
(2)催告を行う端緒
思ったよりケースが限定されている!
- 相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき
- 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき
法務局への申請時に添付書類として提出された「遺産分割協議書」「遺言」が端緒になるという。
(3)「正当な理由」の申告
登記官から送付される催告書には、「登記の申請をしていないことにつき、『正当な理由』がある場合は過料の適用対象とはなりませんので、『正当な理由』がある場合には、下記3【様式:別記第1号参照】の『申告欄』にその具体的な事情を記載し、当該事情を裏付ける資料とともに、登記所に持参又は返送してください」と記載されている。
正当な理由の申告は、催告書に手書きしても良いし、申告欄に「別紙のとおり」として別紙にまとめても良いだろうし、さらには自ら申告書を作成(催告書と適宜紐付けをしたもので)したものによっても良いだろう。
(4)管轄地方裁判所に通知
上記で引用した規則187条1号による。
6.「正当な理由」について
(1)正当な理由の位置づけ
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(過料)
第百六十四条
第三十六条【土地の表題登記の申請】、第三十七条【地目又は地積の変更の登記の申請】第一項若しくは第二項、第四十二条【土地の滅失の登記の申請】、第四十七条【建物の表題登記の申請】第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条【合体による登記等の申請】第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条【建物の表題部の変更の登記】第一項から第四項まで、第五十七条【建物の滅失の登記の申請】、第五十八条【共用部分である旨の登記等】第六項若しくは第七項、第七十六条の二【相続等による所有権の移転の登記の申請】第一項若しくは第二項又は第七十六条の三【相続人である旨の申出等】第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
(2)通達中での例示
催告書において、「正当な理由」がある場合にはその具体的な事情を申告するよう求めた上で、当該申告内容その他一切の事情を総合的に考慮して行うが、つぎのような事情が認められる場合には「正当な理由がある」とされるという。
以下の事実は、登記官から送付される催告書に注記する形で記載されている。
- 相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
- 相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
- 相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
- 相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
以上に該当しない場合であっても、申請をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には、「正当な理由あり」とされる。
