1.有限会社とは
(1)条文
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
第一款 旧有限会社の存続
第二条
前条第三号の規定による廃止前の有限会社法(以下「旧有限会社法」という。)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(以下「旧有限会社」という。)は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後は、この節の定めるところにより、会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による株式会社として存続するものとする。
2 前項の場合においては、旧有限会社の定款、社員、持分及び出資一口を、それぞれ同項の規定により存続する株式会社の定款、株主、株式及び一株とみなす。
3 第一項の規定により存続する株式会社の施行日における発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、同項の旧有限会社の資本の総額を当該旧有限会社の出資一口の金額で除して得た数とする。
第一条
次に掲げる法律は、廃止する。
(・・・)
三 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)
(・・・)
(商号に関する特則)
第三条
前条第一項の規定により存続する株式会社は、会社法第六条第二項の規定にかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない。
2 前項の規定によりその商号中に有限会社という文字を用いる前条第一項の規定により存続する株式会社(以下「特例有限会社」という。)は、その商号中に特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
3 特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社は、その商号中に、特例有限会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
4 前二項の規定に違反して、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者は、百万円以下の過料に処する。
(2)整理
旧有限会社法の規定によって設立された会社であって、商号中に有限会社という文字を用いる株式会社のことを「特例有限会社」という。
特例有限会社については様々な特則があるが、この記事では「特別決議」の要件について確認する。
2.有限会社における特別決議
(1)株式会社と条文を比較
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
(株主総会に関する特則)
第十四条
特例有限会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 次に掲げる場合には、前項本文の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 前項本文の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 前項本文の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
3 特例有限会社の株主総会の決議については、会社法第三百九条第二項中「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二」とあるのは、「総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の四分の三」とする。
4 特例有限会社は、会社法第百八条第一項第三号に掲げる事項についての定めがある種類の株式に関し、その株式を有する株主が総株主の議決権の十分の一以上を有する株主の権利の行使についての規定の全部又は一部の適用については議決権を有しないものとする旨を定款で定めることができる。
5 特例有限会社については、会社法第二百九十七条及び第三百一条から第三百七条までの規定は、適用しない。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株主総会の決議)
第三百九条
(・・・)
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条【株式会社又は指定買取人による買取り】第二項及び第五項の株主総会
二 第百五十六条【株式の取得に関する事項の決定】第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条【全部取得条項付種類株式の取得に関する決定】第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四 第百八十条【株式の併合】第二項の株主総会
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会【募集事項の決定など】
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会【新株予約権の募集事項の決定など】
七 第三百三十九条【解任】第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条【責任の一部免除】第一項の株主総会
九 第四百四十七条【資本金の額の減少】第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
(・・・)
十 第四百五十四条【剰余金の配当に関する事項の決定】第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定【定款の変更、事業の譲渡等、解散】により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編【組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付】の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
(・・・)
(2)整理
というわけで、まずは、特例有限会社以外の株式会社における特別決議の要件について
- 当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること。
(「過半数」を上回る割合を定款で定めることも可能) - かつ、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成を得ること。
(「3分の2」を上回る割合を定款で定めることも可能) - さらに、定款によって、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定めることも可能。
一方で、特例有限会社においては、つぎのとおりとなる。
- 総株主の半数以上の賛成を得ること。
(これを上回る割合を定款で定めることも可能) - かつ、当該株主の議決権の4分の3以上の賛成を得ること。
(これを上回る割合を定款で定めることも可能) - さらに、定款によって、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定めることも可能。
おそろしあ。