子に対する扶養(とくに大学の学費について)

2020年5月15日

単に「子」といっても、「未成年子(その対として成年子)」や「未成熟子」という分類がされる。

また、判例学説ともに様々なようで、以下簡単に、業務にあたっての基礎知識として、自分なりのまとめ。
(そのため、結論と言えるものはない。)

1.根拠条文

参照条文

民法(明治二十九年法律第八十九号)

第八百七十七条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

扶養とは、「自らの資産や労力だけでは生活を維持できない者に対する援助」のことをいう。

877条は、未成熟子に対する親の扶養義務を定めている。

また扶養義務の程度については、「生活保持義務:自己の生活を切り下げてまで自己と同程度の生活をさせる義務」と、「生活扶助義務:相手方が最低限の生活を維持できない状態にあり、かつ扶養する側に余力がある場合に、その余力の限りで相手方に最低限の生活を維持させる義務」の2種類に分けて考えるのが通説(二元説)?

各扶養のうち、生活保持義務を認めるのは、「親の未成熟子に対する扶養」と「夫婦間の扶養」の2種類とされる。

「未成熟子」の定義が確認できなかったが、単に「成年」「未成年」で切り分けるものではないという趣旨かと。
とはいえ、稼働能力のある成年子(いずれ18歳以上)は、未成熟子に入るのだろうか?大学の学費とか?

【参考】

参照条文

第八百二十条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

820条は、監護教育の義務について定めるものであり、この義務には「監護教育の費用負担」までが含まれるわけではないとされる。
親権者が、その費用負担をするとしても、それは「本条の義務によるものではなく、父母として未成熟子に対して負っている扶養義務(877条)の履行である。」というのが通説的見解とされる。

2.扶養の程度

参照条文

第八百七十九条
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

(1)未成年者に対する扶養

二元説にいうところの、生活保持義務ということになるので、親は自己の水準と同程度の生活を送らせる扶養義務を負う。
また、仮にその水準が、最低生活水準を維持できない場合には、公的扶助がこれを補うことになる。

(2)教育中の成年子に対する扶養

まとめを作成するにいたった本題である。
ここも、学説・裁判例(たとえば東京高裁H22.7.30家月63.2.145)はわかれる。

争われる場面としては、「離婚後の非親権者の父又は母に対する扶養料の請求」のケースのようで、あまり義務の内容や位置づけは深堀りされていない印象であった。
単に理解不足かもしれないが。

親権者と未成年者が、ともに相続人となるケースで遺産分割をするときに、たとえば「親権者が未成年者を扶養するから(成年後も大学の学費を負担するから)、未成年者の取得分はゼロ」という理屈は成り立つのだろうか(亡くなった親権者の扶養を担うから、という理屈はどうか。)?
未成年者にとっては、親権者の扶養義務は当然のことで、「扶養義務を受けること」が法定相続分にかわる利益になるのだろうか?

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