以下は、注釈民法を確認したかったが、手元になかったため、確認できる範囲でまとめたもの。
1.事例
(なお、以下「兄弟」と表記するのは、「兄弟姉妹」の意味とする。)
Aさんには、両親BCと、兄弟DEFがいる。なお、Aさんには配偶者も子もいない。
平成28年4月、親Bが死亡した。
平成28年5月、Dの妻Gが、Cと養子縁組をした。
平成28年6月、親Cが死亡した。この時点で、Aさんの直系尊属はすべて死亡した。
平成28年7月、Aさんが死亡した。
では、Aさんの相続人および各相続人の法定相続分はどのようになるか。
2.検討
まず相続人の確定のため、次の条文を確認。
民法
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
では「兄弟姉妹」とはどのように定義されるのか?
法律上の定義はないので、国語辞典から。
「同じ父母から生まれた子供たち同士の関係」
「同じ」となっているが、法律上は片方の親のみを同じくする兄弟が観念されている。
第九百条
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
ここから、相続上は、異父兄弟や異母兄弟が観念される(半血の兄弟)。
また「同じ」であるとは、血縁上のつながりのみならず、法律上の親族関係も含まれるとされる。
第八百九条
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
第七百二十七条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
というわけで、両親の一方のみと養子縁組したGは、Cの嫡出子であるがBの嫡出子ではないこととなり、Aから見て「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」となる。
したがって、相続人はD・E・F・Gとなり、Gのみ半血の兄弟となるから、D・E・Fの相続分は「2/(2+2+2+1)」、Gの相続分は「1/(2+2+2+1)」。
【参考:昭和32年06月27日民事甲1119 回答】
3.類似事例
Aさんには、両親BCと、兄弟DEFがいる。なお、Aさんには配偶者も子もいない。
平成28年4月、AさんはGの養子となった。なお、Gには、HIの2人の子がいる。
平成28年7月、Aさんが死亡した。
では、Aさんの相続人および各相続人の法定相続分はどのようになるか。
根拠条文は前期事例と同じ。
Aさんにとっての兄弟は、両親を同じくするDEFと、養親たるGのみを同じくするHIの5名。
HIはAさんにとって半血の兄弟となるから、相続分は次のとおり。
D・E・F :2/(2+2+2+1+1)
H・I :1/(2+2+2+1+1)
【参考:昭和32年06月27日民事甲1119 回答】
先例を調べていて発見してしまったのが、この事例。
Aさんには、両親BCと、兄弟Dがいる。なお、Aさんには配偶者も子もいない。
平成28年4月Cが死亡した。
平成28年5月Bは、Eと再婚した。Eには子FGがいる。
平成28年6月、BはFGを養子とし、EはBCを養子とした。
平成28年7月、BおよびEが死亡した。
ここでAさんが死亡した場合、相続人とその法定相続分は?
まずAさんにとっては、両親BCを同じくする兄弟Dがいる。
つぎにBのみを同じ親とするFGがいる。
さらに養親Eのみを同じ親とするDFGがいる。
見つけてしまった先例とは、昭和31年03月08日民事甲322 回答のこと。
結論としては、DFGの相続分は均等という回答であるが、これって、
(1)照会元が根拠としてあげる「実父母であろうが養父母であろうが、いずれかの父・母が同じであれば『父母が同じ』(父母の組み合わせは問題にしない。)と考える。」に沿ったものなのか、
(2)資格重複の問題として処理したもの、なのか。
先例を見た際に、要旨だけ読んで(2)だと早合点してしまったのだが、(1)に沿った回答ということだろうか。
(早合点した誤った考え)
Dの資格重複(父母を同じくする兄弟であり養親を通じた兄弟)は認めず、FGの資格重複(父を同じくする兄弟であり養親を通じた兄弟)は認める。
つまり相続分計算の際の分母は「2(D)+1(甲の子C)+1(甲の子C)+1(丁の子F)+1(丁の子G)」となり、
Dについては「2/(2+1+1+1+1)」となり、
FGについては「(1+1)/(2+1+1+1+1)」となる。
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