1.相続登記未了
相続登記未了により、現在の所有者が確認できないために、不動産の有効活用ができないという問題があります。
特に、農地や森林などでは、その傾向が顕著です。
不動産を動かす場合には、相続登記をして名義を現在の所有者に移してから、売買というにより新たな所有者に所有権を移転させる必要があります。
それに対し、農地等、基本的に動きのない(あるいは法的には動かせないので、事実上動かしてしまっているような場合も含む。)不動産の場合には、登記を確認すると明治・大正・昭和初期などに登記されたまま止まっていることがよくあるのです。
2.相続登記未了土地の土地活用
そうなると、これから新しく土地を活用する際に、第三者に所有権やその他利用権を設定する前提として、現在の所有者に名義を変える必要があるのですが、これが大変。
・複数回の相続が発生していて、関係する相続人が多数。
・共有ではじまっているため、関係する相続人が多数。
・多数いる相続人の中には、行方不明だったり、相続人がいない人がいる。
・そもそも、登記簿の記載から、現在の所有者を確認することができない(登記上の所有者について、戸籍や住民票が確認できなかったり、そもそも名前だけしか書いていなかったり等々。)。
といった問題がゴロゴロでてくるのです。
そんな時に、農地の話なのですが、こんな制度があります。
3.農地法の制度
(1)所有者等を確知することができない場合における農地の利用
条文タイトルは「所有者等を確知することができない場合における農地の利用」!!
農地法(昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)
第四十三条 農業委員会は、第三十二条第三項(・・・)の規定による公示をした場合において、(・・・)当該公示に係る農地(・・・)の所有者等から(・・・)申出がないとき(・・・)は、農地中間管理機構に対し、その旨を通知するものとする。この場合において、農地中間管理機構は、(・・・)都道府県知事に対し、当該農地を利用する権利(以下「利用権」という。)の設定に関し裁定を申請することができる。
2 第三十八条及び第三十九条の規定は、前項の規定による申請があつた場合について準用する。(・・・)。
4 第二項において読み替えて準用する第三十九条第一項の裁定について前項の規定による公告があつたときは、当該裁定の定めるところにより、農地中間管理機構は、利用権を取得する。
5 農地中間管理機構は、第二項において読み替えて準用する第三十九条第一項の裁定において定められた利用権の始期までに、当該裁定において定められた補償金を当該農地の所有者等のために供託しなければならない。
1項の「第三十二条第三項の規定による公示」は次のとおり。
第三十二条
3 農業委員会は、第三十条の規定による利用状況調査の結果、第一項各号のいずれかに該当する農地がある場合において、過失がなくてその農地の所有者等(・・・)を確知することができないときは、次に掲げる事項を公示するものとする。(・・・)。
一 その農地の所有者等を確知できない旨
二 その農地の所在、地番、地目及び面積並びにその農地が第一項各号のいずれに該当するかの別
三 その農地の所有者等は、公示の日から起算して六月以内に、農林水産省令で定めるところにより、その権原を証する書面を添えて、農業委員会に申し出るべき旨
四 その他農林水産省令で定める事項
準用される農地法第39条は次のとおり「【】」内は読み替え。
第三十九条 都道府県知事は、【第四十三条】の規定による申請に係る農地が、(・・・)当該農地の利用に関する諸事情を考慮して引き続き農業上の利用の増進が図られないことが確実であると見込まれる場合において、農地中間管理機構が当該農地について農地中間管理事業を実施することが当該農地の農業上の利用の増進を図るため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、【利用権】を設定すべき旨の裁定をするものとする。
(2)農地中間管理機構
公示により、強制的に農地中間管理機構に当該土地の利用権を取得させる(第43条4項)一方で、その補償は、補償金の供託(第43条5項)によるというものです。