財産分与・停止条件・仮登記

2025年12月24日

1.財産分与

(1)条文

参照条文

民法(明治二十九年法律第八十九号)

(財産分与)
第七百六十八条 
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

※除斥期間については令和6年民法改正(令和8年4月1日に施行)により「2年→5年」に延長。

参照条文

【参考】上記令和6年改正後

第七百六十八条
(・・・)
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする

(2)整理

財産分与の内容は「協議」により決定する。

協議が整わない(できない)場合には、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
ただし、2年を経過すると、この請求ができなくなる(除斥期間)。

2.実質的な夫婦共有財産という考え方

(1)条文

参照条文

民法(明治二十九年法律第八十九号)

(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

(2)整理

夫婦の財産について「夫婦別産制」を原則としている。

特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)〇婚姻前から有する財産
〇婚姻中自己の名で得た財産

これを前提として、財産分与は、離婚に際して「当事者双方がその協力によって得た財産の額」などを考慮(実質的には夫婦の共有であるものと整理)しつつ、「別産制」による不公平を清算しようとする目的をもつ(清算的要素としての財産分与)。

なお、「実質的には夫婦の共有であるものと整理」(すなわち実質手夫婦共有財産と考えること)したとしても、それをもってして、第三者との関係において「共有」の主張をできるわけではないとするのが通説。
(そのため現物分割ではなく、金銭による清算が原則となる。)

物権的な共有ではないとすると、「財産分与がなされることなく、除斥期間も経過した。」場合にあっては、どういった法律関係になるのか?

XとYは夫婦であった。
婚姻中、X名義でマンションを購入(住宅ローン付)し、これにX・Yと両名の子Zで居住していた。

その後、XとYは離婚した。主な財産は当該マンションのみであったが、オーバーローン状態であったため財産分与はなされなかった。

その後、当該マンションにはY・Zが生活していた。住宅ローンは、実質的にはYが支払いを行っており、今般、住宅ローンは完済となった。

2.住宅ローン付きの不動産を現物で財産分与したい

(1)前提

財産分与の方法に制限はないものの、その趣旨からして「金銭による清算」が原則とされている。
ただし、実務的には、必要性・相当性が認められる場合には、現物を分与することも可とされている(共有物分割の場合と逆??)。

ただし、住宅ローン付きの不動産を現物分与するときには、つぎのような問題がある。

  • 債務者(住宅ローンの支払いをする人)を変更することは可能か?
  • 所有者を変更することは可能か?

XとYは夫婦であった。
婚姻中、X名義でマンションを購入(住宅ローン付。債務者はX単独。)し、これにX・Yと両名の子Zで居住していた。

その後、XとYは離婚した。
当該マンションにはY・Zが引き続き居住していきたいので、Yはマンション現物の分与を求めている。
住宅ローンの返済についても、Yが代わりに行っていく意向である。

まず、債務者の変更(X→Y)について、金融機関の承認が得られるか?
さらに、財産分与による所有者の変更(X→Y)について、金融機関の承認が得られるか?
(なお、金融機関の承諾なく所有者を変更することは、多くの場合、期限の利益の喪失事由になっている。)

(2)停止条件付財産分与

上記に対する対応として、実務上、つぎのような方法が考えられている。

債務については、併存的債務引受等により、清算を行う。

所有権については、住宅ローン完済後に、所有権移転登記を行う。
なお、完済前に、現在の所有者によって転売等がされることを防ぐために、仮登記をおこなう。
(勝手に仮登記入れちゃうのは期限の利益喪失にはならないのだろうか??)

なお、つぎの先例に留意。これと離婚成立後における仮登記の可否については区別が必要。
(参考:日本法令不動産登記研究会 編『〔8訂版〕事項別/不動産登記のQ&A210選』(日本法令、2019年)343頁)

昭和57年1月16日民三第251号回答

【要旨】

離婚前において、財産分与の予約を登記原因とする所有権移転請求権仮登記はできるか?

→不可。離婚の予約については何らの効力も生じないとするのが通説であり、離婚を前提とする財産分与についても同様である。

3.仮登記による保全

(1)前提の確認

財産分与による所有権移転登記申請は、原則通り、共同申請となる。
(例外:判決等による登記)

登記原因証明情報としては、報告形式の登記原因証明情報でも良く、特段、離婚を証明するために戸籍謄本等の添付が求められているわけではない。
(調停調書により離婚日が判明しない場合には、別途、戸籍謄本の添付が必要。)

(2)仮登記

2号仮登記による(原因:年月日財産分与(条件 年月日金銭消費貸借による債務の完済))。
仮登記も、原則として共同申請である。

(2)本登記

住宅ローンが無事完済されれば(条件成就により)、これにより財産分与の効力が生じる。
それをもって、上記仮登記につき本登記の申請ができる。

本登記も、原則として共同申請である。

(3)全体のまとめ

住宅ローンの完済までは、離婚した時期にもよるのだろうが、通常相当長期にわたるはず。
仮登記による保全といっても、なんだか不安定な気もするが、やむを得ないか。

なお調停条鋼の文例として、下記が非常に参考となる。
【参考:星野雅紀 著 河野清孝/野上康雄/鈴木龍介/佐々木摩弥子 監修『調停等の条項例集-家事編-』(司法協会、2022年)46頁】

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