後見等開始審判の管轄裁判所

2019年9月15日

1.条文

家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)
第百十七条
後見開始の審判事件(別表第一の一の項の事項についての審判事件をいう。次項及び次条第一号において同じ。)は、成年被後見人となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2.「住所地」とは

本人が実際に住んでいる所という意味であり、必ずしも、住民票上の住所とイコールではない。

したがい、住民票上の住所は下田市(管轄は静岡家庭裁判所下田支部)であっても、長期入院中の病院が沼津市にあれば、静岡家庭裁判所沼津支部に申立てをすることも可能ということになる。

一方で、現在は、富士市(管轄は静岡家庭裁判所富士支部)の自宅(住民票上の住所地でもある)で生活しているが、今後、沼津市の有料老人ホームに長期入所する場合に、静岡家庭裁判所沼津支部に申立てが可能か?

原則的には、不可となるだろうが、具体的状況によっては可となる可能性もあるので、資料を整えて管轄裁判所に相談してみる価値はある。

3.本人の引っ越しと管轄裁判所

(1)申立て時の管轄裁判所

第八条
裁判所の管轄は、家事審判若しくは家事調停の申立てがあった時又は裁判所が職権で家事事件の手続を開始した時を標準として定める。

 申立て時の管轄裁判所が、その後も管轄裁判所となる。
それでは、本人が遠方に転居した場合に、どのようにすればよいか?

(2)移送

第九条
2 家庭裁判所は、家事事件がその管轄に属する場合においても、次の各号に掲げる事由があるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を当該各号に定める家庭裁判所に移送することができる。
一 家事事件の手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき 第五条の規定により管轄権を有しないこととされた家庭裁判所
二 事件を処理するために特に必要があると認めるとき 前号の家庭裁判所以外の家庭裁判所

2項の移送については「職権で」ということなので、後見人等としては上申により職権発動を促すことに。