1.くわしくはこちら(法務省HP)
令和6年3月1日から、改正戸籍法が施行されました。
改正の目玉は「広域交付制度」の開始です。
「広域交付制度」の開始により、これまで、原則として本籍地のある市区町村役場でのみ取得可能であった戸籍が、全国どこからでも取得できるようになります。
(取得できる戸籍の範囲や請求権者には制限があります。)
2.戸籍法
(1)条文
戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)
第百二十条の二
第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、次の各号に掲げる請求は、当該各号に定める者に対してもすることができる。
一 第十条第一項(第十二条の二において準用する場合を含む。次項及び次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求 指定市町村長(第百十八条第一項の規定による指定を受けている市町村長をいう。以下同じ。)のうちいずれかの者
二 第十条の二第二項(第十二条の二において準用する場合を含む。次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求(市町村の機関がするものに限る。) 当該市町村の長(指定市町村長に限る。)
② 前項の規定によりする第十条第一項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)については、同条第三項及び第十条の三第二項の規定は適用せず、同条第一項中「現に請求の任に当たつている者」とあり、及び「当該請求の任に当たつている者」とあるのは、「当該請求をする者」とする。
第百十八条
法務大臣の指定する市町村長は、法務省令で定めるところにより戸籍事務を電子情報処理組織(法務大臣の使用に係る電子計算機(磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。以下同じ。)及び入出力装置を含む。以下同じ。)と市町村長の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。以下同じ。)によつて取り扱うものとする。ただし、電子情報処理組織によつて取り扱うことが相当でない戸籍又は除かれた戸籍として法務省令で定めるものに係る戸籍事務については、この限りでない。
② 前項の規定による指定は、市町村長の申出に基づき、告示してしなければならない。
(2)整理
まずは請求の種類を整理する。
(1)第十条第一項の請求 | 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者を含む)又は、その配偶者、直系尊属、直系卑属が行う交付請求。いわゆる本人請求。 |
(2)第十条の二第二項の請求 | 国又は地方公共団体の機関が行う交付請求 |
(3)第十二条の二の請求 | 準用して適用される「除籍謄本等」の交付請求 |
そして戸籍法120条の2においては、「第十条第一項の請求」を、(本籍地のある市町村以外の)指定市町村長に対してもすることができるとしている。
「指定市町村長」といっても、おそらく全国の自治体が指定されているはず(未確認)なので、要するにどこの市町村長に対しても、本人請求が可能ということになる。
ほかにも請求の種類はあるが、代表的なものは以下のとおり。
なお、以下の請求は、上記の広域請求可能な請求には含まれていない。
(1)第十条の二第一項の請求 | 上記(1)(いわゆる本人請求)以外の者が行う交付請求。 請求にあたっては必要性等を明らかにしなければならない。 |
(2)第十条の二第三項の請求 | いわゆる職務上請求(弁護士、司法書士等が受任している事件・事務に関する業務遂行のため必要がある場合に行う交付請求。依頼者の氏名を明らかにするパターン。) |
非常に便利な制度であるが、戸籍法120条の2第2項に注意が必要である。
「前項の規定によりする第十条第一項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)については、同条第三項及び第十条の三第二項の規定は適用せず」とされている。
すなわち、本籍地以外でする本人請求にあっては、「郵送等による送付請求」(10条3項)や「代理人による請求」(10条の3第2項)は適用しないとされている。
郵送請求が不可なのはともかく、代理人による請求もダメとされているので、職務上請求が不可とされることも相まって、司法書士としては悲しいところである。
3.広域交付制度の使い方
(1)できること
本籍地以外の市区町村の窓口でも本人請求が可能となった。
請求可能な戸籍は、自らの戸籍のみならず、直系の戸籍まで取得することができる。
(2)できないこと
コンピューター化されていない戸籍は不可
一部事項証明書・個人事項証明書は請求不可
代理人による請求は不可
一般人においては本人請求以外の請求は不可


